シガレットチョコ「それ、美味いの?」
リビングでくつろいでいたところ、正面にて酒を煽っていたベルトに話しかけられた。
「それって?」
「煙草……に見えるやつ」
煙草に見えるやつ。
どうやら、キースがいつも喫している『煙が出るシガレットチョコ』について言っている模様。
「これはチョコだよ。煙草の形してて煙草みたいに煙出るけど」
煙が出るシガレットチョコ。
製造元は株式会社ブランクインという、クローバーや遠山静らが所属する企業である。
世間では禁煙キャンペーンが進んでいるにも関わらず、ブランクインは逆走して見た目も味も、煙の質感までもが本物に近いお菓子を作った。
しかし、あくまで格好付けたがりな子供のためのお菓子なので、味はホワイトチョコからミントチョコまで様々。
キャッチコピーは『大人の階段ぶっ壊せ』である。
「溶けねーのけ」
「溶けるのもあるし、溶けねぇのもある」
シガレットチョコにも種類がある。
チョコ同然に溶ける『生チョコレート系』と、溶けずにいつまでも楽しめる『ガトーショコラ系』。
キースが愛用しているものは、ガトーショコラ系である。
「煙は何で出てんの」
「企業秘密だとよ」
「ちょっと吸わせておくんなまし」
嫌だ、という前にベルトはキースの口にくわえられたシガレットチョコを奪い取った。
そしてそのまま己の口に咥える。
「関節キスじゃねぇか!」
「ガキみてーなこと言ってんなよ。実際ガキだけど」
ベルトが深くチョコを吸い込み、しばらく静止する。
して、味の程は?
「あっっっま」
べっ、と勢い良く床に吐き捨てた。
「ダメだわ、甘い。普通にチョコじゃんこれ」
「……よくも、僕のシガレットチョコを床に吐き捨てたな」
「わり。買って返すから、うちの恋人が」
「テメエが買えヒモ野郎が!!!」