駄菓子屋へGO商店街の片隅に佇むとある店に、ルーク少年は毎日のように通っていた。
甘党たる彼が通うところだ、当然お菓子を売っている店である。
が、その店の風変わりなところは、店主の存在。
ある者はケチなおっさんだと言い、ある者は優しい少年だという。
「で、ここがその店」
「……ここ?」
そんなわけでルークとラスカルのミニ友達コンビが、その店に来ていた。
ぼろ……否、趣がある。実に趣がある外観だった。
看板には、外国語……日本語だろう。おそらくは店名が書かれている。
「あれ何て読むの」
「んー。あれはなぁ」
「ササガワ駄菓子店、や」
店先で突っ立っていたせいか、人が横槍を入れる形で答えてくれた。
見れば、あどけない少年が居た。
両眼の色が違う、ストライプ柄のコートを着た子。
口にはタバコに似た何かを咥えて、ふたりを見据えている。
「よっ、旦那!」
「おう。オマエも飽きひんな、またキャラメルか?」
「それもあるけど、今日はこの子紹介に来た」
この子、と差し出されたラスカルは、会話の流れで理解する。
店主なのだ。このあどけない少年が。
「き、きみ、ぼくとそこまで歳変わらないんじゃない?ちょっとお兄さんなだけで。だいじょうぶ?法にふれてない?」
「なんや失礼やな。ルーク、オマエの友達めっちゃいい度胸しとるやんけ」
「ラスカル。この人はな、ハイジさんていうんだ」
「おしえておじいさん?」
「誰がアルプスの少女や。駄菓子屋の旦那、ササガワハイジさんやっちゅうに。あと今年で六十やで」
衝撃の事実にラスカルが叫べば、ハイジはにやっとした。
紹介もほどほどに、店に上がる友達コンビ。
「びっくりしたね!お兄さんどころか、おじちゃんだったんだね!」
「だなぁ。あ、コレ美味しいぞ。食べたい?」
「食べたい!」
こんな調子で、駄菓子を選んでいくふたり。
五円チョコ、サイコロキャラメル、ココアシガレット、その他もろもろで買い物かごを山盛りにしていく。
ハイジは、居住スペースだろう和室から、あぐらをかいてふたりを眺めていた。
「オマエら、お似合いやな」
「へ?」
唐突にそんなことを言いだすハイジ。
「嫁はんに貰ったれよ。そのちっこいの」
「よめっ……!?」
「そいつ孕ませまくって、幸せなればええやん?」
「旦那ァァァァ?!」
すかさずルークがラスカルの耳を塞ぐ。
そんなことせずとも、幼いラスカルには意味などひとつも分からないのに。
ハイジがさも楽しそうに、けらけらと笑う。
「冗談冗談」
「冗談がえぐくない!?」
「八方美人やから」
「関係ないじゃん!」