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    しおの(名前付けておきました)

    酒を飲んで怪文書を書くおたく
    たまにらくがきする
    ガチガチの遅筆


    https://crepu.net/user/shiosalz
    ここにいます

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    今書いてる特殊設定リンリバのちょっと長めの話のワンシーン。リンクはリーバルにゲーム内の愚の骨頂のムービーで惚れたという設定で、その惚れたシーン。心情描写って難しいですね。いや、全て難しい。
    下書きのようなものなので、誤字脱字誤用等確認してないです。

     公用で姫様とともにリトの村にやってきた。俺は初めてリトの村を訪れた。ここはへブラ山脈から吹き下ろしてくる風が絶えず流れていて、ハイラル平原よりも気温が低い。ククジャ谷を越えてさらに北へ行った僻地といえばそうなのだが、とても自然豊かな土地だ。ここに住むリト族は鳥のような見た目をした種族で、俺は城下町でたまにリト族をみかけた。行商人やハイラルで一番栄えている美しい城下町を観光に来たリトの人々だった。
     リトの村は湖の真ん中に浮かぶ高い石柱をぐるりと螺旋状に囲む形で作られている。住居の作りは俺が住むハイリア人の街とは違い、まるで鳥籠のようだと村に来て思った。リト族はハイリア人と鳥の特性を持ち合わせているが、彼らの腕は大きな翼でハイリア人とは違って自在に飛ぶことが出来る。子供の頃、母がハイラルに住む種族の話をしてくれたときに、俺は自由に空を飛べるリト族がうらやましいと思った。もし飛べたら、何者にも邪魔されずに好きなところに行けそうだ――そう思った。地図上では直線にある目的地も建物があったら迂回しなければならない、山を越えるか回り道をしなければならないがリト族のように翼で飛べたらすぐに目当ての場所に行ける。うらやましいと思った。
     姫様はリト族の族長の家を訪ねた。国王陛下から預かった言葉や族長と話したいことがあるそうで、二人きりにしてほしいと言われて俺は族長の家から出た。俺は姫様を守るための騎士となってまだ日が浅い、姫様が誰かと話をするときも側を離れないようにするものだと思っていた。けれど姫様の命であれば離れた場所で待機すれば良い。俺は族長の家の入口前に立っていた。
     すると真上からバサっという音が聞こえた。鳥が羽ばたく時に似た音。これはリト族が翼を動かすときの音だ、野鳥よりも大きな翼を持っているからその分大きな音を立てるのだった。
     俺は視線を上にする。そこにはリトの英傑、神獣ヴァ・メドーの繰り手であるリーバルが飛んでいて俺の目の前に降りてきた。リーバルはリトの誇りと称えられている戦士で、年齢は俺とそんなに変わらないと思う。弓の名手であり、自ら風を起こす力を持っていると噂で聞いた。初めてリーバルを見たとき、叙任式に参加していたリト族の戦士の誰よりも小柄だった、けれども猛者である雰囲気はあった。眼光は鋭く、体も小柄ながら筋肉質で引き締まっていて、リト族の誰よりも強いのは間違いないだろう。ただリーバルは俺のことを相当嫌っている。先日、俺が姫様付きの騎士として陛下から命を受け任ぜられた時、ダルケルが太古の騎士の叙任式を真似てみようと儀式を行った。姫様が古い詩を詠われていたとき、同席していたリーバルは俺に対して辛辣な言葉を背後で愚痴っていた。嫌いならそれで構わない。
    「姫が来たというから戻ってきたが、族長と話をしているのか」
     リーバルは族長宅をちらっと見て、そして俺の顔を目を細めて見下ろしてきた。
    「ああ、君もいたのか」
     いたのか、と言われたけれど降りてくるときに俺の姿は見えていただろうに。こういうとき、「姫様に付き添うのが俺の役目だ」と言うべきだろうが、リーバルは俺が姫付きの騎士になったことは知っている。いちいち言うことでもないか、と俺はいつものように黙っていた。リーバルは何か言いたそうに嘴を開いたがすぐに閉じて黙って俺の前から去って階段を降りていった。
    「リンク……」
     リーバルの姿が見えなくなると、姫様が族長の家から出てきた。俺は跪いて姫様に頭を下げる。
    「もう少し時間がかかりそうなので村の中を見てきてください」
     俺は頭をあげる。俺を見下ろしている姫様の表情は、平原にある式典場で、俺に騎士を任じるための太古の詩を詠み終わったときと同じ顔をしていた。俺は立ち上がり姫様に一礼をして、その場から立ち去った。先ほどのリーバルと同じように村を巡る階段を下っていった。
     姫様のあの表情は俺に対して劣等感を感じているからだ――あの式典場でゲルドの英傑で姫様と昔からの付き合いがあるウルボザが言っていた。何故俺に劣等感を感じるのか分からないでいる。封印の力に目覚めないから? 俺が退魔の剣の騎士だから? でも俺は姫様が厄災と戦うためにシーカー族の遺物の調査を積極的に行ったり、神獣の繰り手への依頼も姫様自らが足を運び頼んでいたり、俺には到底出来ないことを姫様は行っている。それに泉での修行も欠かさず行っている。姫様は俺なんかよりも行動力に溢れて、今出来ることを考えて実行されている素晴らしいお方だ。それを言えたら姫様の劣等感を払拭できるかもしれない、けれど俺がそう言ったところで姫様との軋轢を生みそうで言えない。
     階段を下っていた俺はすこし下がった場所に木の通路から張り出した広場を見つけた。そこの床にはリト族の紋章が描かれており、湖の方向の手すりには隙間があって、リト族はきっとここからへブラ山脈の方向に翼を広げて飛び立つのだろうと思った。俺は広場に出て北に広がる広大なへブラ山脈を見つめる。たしかいくつもの山々が連なっている雪山、ハイリア人が生半可な装備で入ると死ぬと聞いている。リト族は体を羽毛で覆われているから入山しても大したことないんだろうな。そして飛んでいるから険しい山を登る必要もない。
     俺は一方一方、手すりの方に歩いて寄っていく。広場には大きな陰が出来ていた。雲が出てきたのかと天を仰ぐと、太陽を遮っていたのは空を飛ぶヴァ・メドーだった。鳥のような見た目をした神獣で、先ほど俺に声をかけたリーバルが繰り手となって動かしている神獣。あの神獣は上空から無数の光の刃を放つ攻撃をするとシーカー族の研究者が言っていた。あんなに大きなシーカー族の遺物を空高く飛ばせている。やはりリーバルには強い力があるんだ、俺は息をのむ。
     その時だった。下から大きな音、強い風が吹き荒れる時の音が響いた。そして強い上昇気流が真下から吹き上がってくる。何事が起きたのかと俺は身構える。空を裂き舞い上がる風をじっと見つめる。するとその風に乗って何かが勢いよく舞い上がってきた。何だと俺は目をこらす。それは藍色の翼を持ったリト――先ほど俺に話しかけてきたリーバルだった。リーバルは強い風の中心に乗って体を回転しながら、起こした突風の頂点で大きく翼を広げた。藍色で指先や所々の模様が白いリーバルの翼、太陽の光を遮った大きな翼だった。リーバルはそのまま俺の近くにある手すりの上に腕を下ろしながら静かに着地した。
     なんて美しい飛び方をするのだろう。リーバルは風を起こせる、先ほどの巻き上がる上昇気流はリーバルが作り出したものだろう。それに乗って跳び上がり細い手すりに正確に降りる。すべての所作が洗練されていて無駄な動きがなかった。素早くて目で追うのが精一杯の上昇からの着地寸前のゆっくりとした羽ばたき、この緩急を付けた動き。リト族はこんなに美しい飛行をするのだろうか……いや、これはきっとリーバルだけが出来ることだろう。
    「どうだい、今の?」
     手すりの上に立ったまま、リーバルはみぞおちの辺りで腕を組んで俺を見て言ったが俺はリーバルに見蕩れていた。リーバルはこんなにも美しい。胸がドキドキと鼓動を打つ。今まで生きてきた中でこのような胸の高鳴りを感じたことがない。リーバルは先ほどの上昇気流を発生させて空高く舞い上がる事を自慢してた。俺はそんなリーバルの姿をじっと見ていた。生き生きとした表情で俺を見て自慢する姿、今までとは違う、初めて見るリーバルの様子を見つめていた。
    「厄災ガノンに対して戦いを進められる事、間違いなしだよ」
     大きな翼を優雅に広げて、目を閉じて顔を前に出て言うリーバル、そのうっとりとした表情を俺は見逃さなかった。リーバルはこんな顔をするんだ……まだ出会ってそんなに経っていないから知らない事がだらけだ。もっといろいろなリーバルの顔が見たい。もっとリーバルの声を聞きたい。
    「そして……」
     リーバルは手すりからぴょんと降りて俺の方へと歩いて近づいてくる。リーバルに対して痛くなるくらい胸が高鳴っているのに、近寄られたら聞かれてしまうかもしれない。でもリーバルはどんどん俺に近づいてくる。俺は横を通り過ぎるリーバルを目で追っていた。美しいリーバルを目に焼き付けたかった。側を歩くリーバルからリトの村に多く生えている針葉樹に似た匂いがする。
    「この僕リーバルこそ、厄災討伐の要に相応しい戦士って事さ」
     そう言って俺の隣で左の翼を胸に当て顔を寄せてくるリーバル、こんなに近づかれるとさらにドキドキと胸が鼓動を打つ。こんなにも近くにいたらリーバルに聞こえてしまう。
    「……なのに僕に与えられた役目は君の援護だ」 
     隣にいたのに俺の後ろに回って、今度は右後ろからリーバルは俺に不機嫌そうに言う。白い左手の人差し指を立てて俺の顔に近づけてくる。
    「その古臭い退魔の剣とやらの主ってだけで!」
     初めて聞いたリーバルの低い声、相当怒っているようだ。なのに俺はリーバルの白い指で指されたことに生まれて初めての、今まで感じたことがないときめきを覚えた。リーバルが俺の背にある剣を指差したとき、とっさに俺もちらりと剣に視線を向けた。
    「はんっ」
     鼻で笑って横を向いて、不機嫌そうに「愚の骨頂だよね」と握っていた左の手を広げてとリーバルは言う。俺の立場が気に食わなくて怒り、恨みををぶつけているのだろう。式典場でも背後で俺を良く言っていなかった。俺は相当リーバルに嫌われていると思う。なのに俺は今、リーバルを見て胸の高鳴りを覚えている。リーバルが辛辣な言葉を言っても、リーバルの声が聞けて嬉しくなっている。リーバルが俺を睨んでも、初めて見るリーバルの表情に見蕩れている。
     こんなのは初めてだ。リーバルの一挙手一投足を見逃さないと視線を送り、胸を高鳴らせている。これはきっと恋なのだろう。俺はリーバルに惚れたんだ。俺のことを嫌っているリーバルに恋した。
    「それなら勝負と行こうじゃないか?」
     急にリーバルが俺の顔に顔を近づけていた。胸がドキッとする。近くで見るリーバルの顔、黄色の目立つ眉、大きな嘴、萌える若葉のような澄んだ瞳、その周りを縁取る赤のライン、頬の赤み、その全てが美しかった。全てが計算し尽くされたようにリーバルのツンとした毛並みの顔に整って置かれているように思えた。
     俺から顔をすぐ離して、背をむせたリーバルは嘴の下に右手を置き、左手を細い腰に添えた。リーバルは「場所は……」と小さな声で言いなが天を仰ぐ。俺はもっとリーバルの美しい顔を見ていたかった。
    「そうだな、あそこなんてどうだい?!」
     右の翼をバッと大きく上に向けて、リーバルは上空を飛行するヴァ・メドーを指した。天高く飛んでいるメドーは日の光を反射して眩しく輝いて見えた。
    「あっはは、ごめんごめん」
     リーバルは振り返り俺を正面から見つめて嘲り笑う。馬鹿にされているって分かる、けれど俺にそう言うリーバルの表情がまるで子供のように可愛らしく見えた。こんなにたくさんの表情をリーバルは見せてくれている。リーバルが俺に言っている事、罵っている事なんか気にならない。もっとリーバルと一緒にいたい、散々馬鹿にしていいから表情豊かなリーバルをもっと見せてほしい。
    「君は一人じゃあの神獣に行く事さえ出来ないんだっけね?」
     リーバルはくるりとターンして体を俺に背を向ける。リーバルの尾羽は長かった。細い腰の下からまっすぐ伸びる藍色の尾羽は先っぽだけ白かった。
     背を向けたまま翼をバッと勢いよく肩まで上げて、リーバルは両翼を大きく羽ばたかせる。それと同時に強い風が勢いよく巻きあがる。俺の髪を大きく揺らす風に乗ってリーバルは飛び立ってしまった。
    ――待ってくれ、リーバル! 俺はもっと君を見ていたい。好きなだけ俺を罵っていいからもっと君の声を聞きたい、表情豊かな君を見せてほしい。俺の側にいてくれよ、リーバル!
     リーバルは空高く舞い上がり、下界の広場に立っている俺に向かって高笑いをした。感情を剥き出して、心の底から俺を馬鹿にして笑っているはずなのに、俺はそのリーバルの姿を忘れまいとじっと見ていた。
     空高く浮かぶメドーに消えていったリーバル、最後は日の光に溶けていくようで眩しくて俺は顔を腕で覆ってしまった。
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    しおの(名前付けておきました)

    MAIKINGリンリバ短い話の書き出し。書きかけで逃げないよう、ケツ叩き目的のうpです。
    酒飲んで書いて見直ししてないです。
    ツンしているリーバル(当社比)をわからせていちゃつく(予定の)話。
    ブレワイ軸で百年前に厄災封印が出来た後、リンクとリーバルがセフレからちゃんと付き合った後の設定(捏造すみません)
    【追記】04/26、くるっぷに上げました。pixivにも上げる予定です
     事前に手紙を書いてリトの村に到着する日をリーバルに伝えていた、そのような日に限っていつもより遅い時間にリンクはリトの村に到着した。リンクはいつも連絡無しに村へ足を運ぶ。今回はリーバルに手紙を書いたことがなかったから一度書いてみようと思って、近況と村に行く日を書いて出した。いつもなら昼過ぎには村に着くが、今日は日が沈みかけている夕方になってしまった。
     こういうときに遅れるだなんて、リーバルは怒っているだろう――リンクは村の中央にそびえる高い石柱を見つめて深いため息をついた。
     リトの村の前にある馬宿に馬を預けて、リンクは急いで村へと続く吊り橋を渡っていった。途中で村の周辺を巡回しているリトの戦士と途中にある池の側ですれ違った。
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    しおの(名前付けておきました)

    MAIKING今書いてる特殊設定リンリバのちょっと長めの話のワンシーン。リンクはリーバルにゲーム内の愚の骨頂のムービーで惚れたという設定で、その惚れたシーン。心情描写って難しいですね。いや、全て難しい。
    下書きのようなものなので、誤字脱字誤用等確認してないです。
     公用で姫様とともにリトの村にやってきた。俺は初めてリトの村を訪れた。ここはへブラ山脈から吹き下ろしてくる風が絶えず流れていて、ハイラル平原よりも気温が低い。ククジャ谷を越えてさらに北へ行った僻地といえばそうなのだが、とても自然豊かな土地だ。ここに住むリト族は鳥のような見た目をした種族で、俺は城下町でたまにリト族をみかけた。行商人やハイラルで一番栄えている美しい城下町を観光に来たリトの人々だった。
     リトの村は湖の真ん中に浮かぶ高い石柱をぐるりと螺旋状に囲む形で作られている。住居の作りは俺が住むハイリア人の街とは違い、まるで鳥籠のようだと村に来て思った。リト族はハイリア人と鳥の特性を持ち合わせているが、彼らの腕は大きな翼でハイリア人とは違って自在に飛ぶことが出来る。子供の頃、母がハイラルに住む種族の話をしてくれたときに、俺は自由に空を飛べるリト族がうらやましいと思った。もし飛べたら、何者にも邪魔されずに好きなところに行けそうだ――そう思った。地図上では直線にある目的地も建物があったら迂回しなければならない、山を越えるか回り道をしなければならないがリト族のように翼で飛べたらすぐに目当ての場所に行ける。うらやましいと思った。
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