ベテルギウスはまだ東の空にのぼっていない。 ―SIDE:OCZY―
これは俺とバデーニさんの関係が、不可逆的変化を起こすまでの話。
一、八月上旬――二枚の写真
八月上旬。夏休みに入ってすぐ、俺たち研究室メンバーは、引越し作業に明け暮れていた。
「ん……? なんだあれは?」
机の下の奥に、光るものが見えた。俺はしゃがみこんで、右手を伸ばす。指先に厚紙のようなものがふれた。中指と薬指で押さえて、埃まみれのまま、それをひっぱりだした。
写真だ。しかも二枚ある。一枚は夜空が写っていて、もう一枚には、バデーニ先生の顔がアップで写っている。この写真に、見覚えがあるような、ないような――。
「どうしたオクジー君」
記憶を探っていたら、すぐ後ろから名前を呼ばれて、はっとした。
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