学習能力 イリヤ・クリヤキンの機嫌がすこぶる悪い。
眉間に寄った皺の深さをちらりと見て、ソロはイリヤに気づかれないように、小さくため息をついた。
眉間の皺は、いつものことだったが、あの深さはいつもの比じゃない。
あれは……あれは、かなり怒っている。
なるべく、その逆鱗に触れないように、ソロは目を伏せた。
前に、あのレベルの皺の深さをみたのは、確かトルコに行ったときだった。
イリヤが侵入時に当て身を食らわせて昏倒させておいたはずの男が、撤収ぎわにいきなり立ち上がってソロの右頬を切り裂こうとしてきたのだ。
カウボーイ!と鋭く叫んだイリヤのおかげで、ソロの自慢するなめらかな頬の皮膚は無事だったが、とっさに顔をかばったせいで、前腕に少し深めの傷を負った。
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