うっかりで吸血鬼化させてしまった30年後ロナドラ(仮題) それは本当にいつも通りの日だった。
それまではいつも通りの日だった。
「痛ッ! お前なぁ、強く噛みす――」
「ロナルド君っ……っ! あ、あっ……」
週に数回、ドラルクは俺のことを吸血している。もちろん合意の上でだ。この習慣は俺たちが付き合い始める少し前から始まって、今も週に一度か二度は必ず機会を設けていた。
恒常的に俺のことを噛むようになる前は人間を噛んだことがほとんど無かったようで、噛むのが下手としか言いようがなかったドラルクも今では上手に吸血できるようになった。そんなドラルクが痛く噛むようなことはとても久しぶりだったので俺はびっくりして思わず声をあげた。
何があったのかとドラルクのことを見ると、彼はブルブルと震えていて尋常ではない様子だった。黒目がひょこひょこと動き、めったにかかない汗が滲んでいる。強めに噛んでしまったことに対する反応だとは思えなかった。それよりももっと大変なことをしでかしてしまったような、可哀想な様子に俺はさすがに深く心配して声をかけた。
2701