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    69asuna18

    ドカメン:宗雨
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    69asuna18

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    Happy Birthday 雨竜


    宗雲×雨竜

    オレンジを添えて「エージェントさんと、レオンさんに、お願いが有るのですが」


    仮面カフェへ訪れた雨竜は、VIPルームへ二人を招き入れて、深刻そうに紡いだ。お願いとは何だろうと二人で顔を見合わせると、お願いというか知恵を貸してほしいと言うかと言葉を濁して。

    「一度でいいので、営業中のウィズダムへ…客として、行ってみたいんです」

    小さな声で紡ぎ、難しいとは思うのですがと続けた。紹介がないものは一人では入れない。それに顔が知れている者が行けば営業中であってもいつもの砕けた雰囲気になりそうだと、エージェントもレオンも頭を悩ませた。

    「でも、どうして?」

    突然言い出した願い。エージェントは理由が気になった。協力するのであれば理由が知りたい。それに、理由によっては、何か方法が思いつくかもしれない。

    「……仕事中の、宗雲さんの様子を見てみたいんです…どんな風に女性と接しているのか…気になって…」

    赤らんだ頬と、物憂げな表情。クリスマスプレゼントや、バレンタインのやり取りから、雨竜が宗雲に対して向ける気持ちに気がついていたエージェントは、確かに気になるよねと深く頷いた。

    「…変装なさったらどうでしょう?」

    口を開いたのはレオンだった。

    「変装?」

    「高塔雨竜様だとバレなければ良いのですから、ご主人様のご友人と言うことで一緒に行けば…。調査に必要なものでしたらご用意があります」

    「そういえば、この間カジノに行った時もそんな事言ってたね」

    なんの事だろうと首を傾げる雨竜を他所に、エージェントとレオンは二人で盛り上がっていく。

    「そうとなれば早速!」

    なにも今すぐ行きたいといったわけではないが、二人の熱意に圧倒されて、雨竜は言われるがまま入ったこともない部屋へと足を踏み入れた。







    「変装っていうか、これは女装じゃないですか!」

    大凡聞いたことのない大きな声。雨竜は顔を真っ赤にして異を唱える。用意された洋服に言われるがまま腕を通したところまではよかった。けれど、着てみればそれはふんわりとした青いワンピース。丈は長いが、脚が覆われていなくて落ち着かない。ウィズダムに行きたいと確かに言った。でもわざわざ、女の子の格好はしなくていいのではないかと訴えたが、女の子としてお店に行ったほうが紛れやすいと思うんだよね。とエージェントもレオンも至極真剣に話す。終いにはウイッグとヒールのある靴も用意されて、綺麗にメイクまで施される。

    「これならバレませんよ」

    などと言われたら、黙って従う他なかった。鏡に映った自分の顔はメイクでまるで女の子の様。くるくると巻かれた長い髪のウイッグを着ければ、もはや別人だ。仮面をつけてコツコツとヒールの音をさせて。カフェまで試しに歩いてみた。ひらひらとスカートが揺れるとやっぱり落ち着かない気はするが、慣れれば大丈夫そうだ。仮面をつけているのもあってか、周りの人も男だとは気がついていない様子だった。

    「座る時は床に付かないように、少し持ち上げるんだよ」

    エージェントに言われ、言われたようにスカートを持ち上げて座る。

    「本当だ。皆さん気を使われてるんですね」

    ワンピースにも慣れ、雑談も出来るようになった頃。「こんにちわ」と聞き慣れた低い声に雨竜の肩は大きく揺れた。目があわない様にそっぽを向いて俯く。それとほぼ同時に声の主が中へ入ってきて。次いで「こんにちわ〜!」と陽気な声が聞こえる。手をヒラヒラと揺らして入ってきたのは浄と颯だ。なぜ、今このタイミングで、と。考えてた居たのが表情に出ていたのか、颯はエージェントに近づいてきた。

    「宗雲が雨竜に用事があるんだって。来てるって聞いたんだけど」

    そう話しているうちに、彼らから少し遅れて宗雲も中へと入ってきた。エージェントは、隣で息を潜める雨竜に視線を送る。ウィッグも被り仮面をつけている下手な事をしない限り、バレやしないと思うが。この人達の観察眼を舐めてはいけない。離れたほうが良いかと、席を立とうとするが。神妙な空気を察してか颯がこちらをじっと見つめて居た。

    「あれ〜?見かけない子だね。エージェントのお友達?」

    「え、あ…ぁ、はい…そうなんです」

    「へぇ、……可愛い子だね」

    浄と颯が近づいてくる。顔を覗こうと首を傾げる浄の視線から逃れるように、雨竜はより一層深く俯いた。

    「シャイなのかな?」

    ははは、と笑う顔は楽しそうというよりも、何処かいたずらでも仕掛けるような。揶揄うような、そんな感じで。もしや、まさかバレてしまっているのかと雨竜の胸はバクバクと跳ねる。話題と視線を逸らさねばと、エージェントは間に割って入った。

    「あ、の…ウィズダムに興味があるみたいで、今度行きたいって話してて……、ね!」

    エージェントに話をふられ、雨竜は口を継ぐんだまま大きく頷いた。そして、視線を塞ぐ前髪を少し払って、宗雲の行方を探る。
    彼はレオンとなにやら話していて。此方の視線に気がついたのかゆっくりと近付いてきた。

    「うちの店にご興味が?エージェントのご紹介でしたら、すぐにでもご案内しますよ。もうすぐ開店時間ですし、良ければこれからご一緒しますか?」

    聞きなれない甘い声。発する言葉は何処かよそよそしく。雨竜の顔を覗き込む優しい顔は、視線が絡むと見た事もない顔でニコリと微笑む。今は自分もお客様なのだとすぐに理解した。知りたかった想い人の、いつもと違う一面を知れたのに、それがなんだかとても寂しくて、雨竜の仮面の奥の瞳が揺れた。
    はぁ――。大きなわざとらしいため息が聞こえて、雨竜はびくっと肩を揺らす。見上げると、いつもの少し険しい顔に戻っていて。

    「VIPルームは開いているか?」

    宗雲はエージェントに尋ねる。

    「え!あ、はい!開いてます」

    エージェントが頷くと宗雲は雨竜の腕を掴んで、VIPルームに向かって歩き出した。掴まれた腕が痛む。それくらい力が強い。宗雲は雨竜を中へ押し込むと、少しだけ顔を出して、浄と颯に「先に戻っていろ」と言い放って、そのドアを閉めた。





    閉めたドアと、壁の間。雨竜の目の前には険しい顔の宗雲が立ちはだかる。宗雲の指は雨竜の顔にかかる髪を払って、耳にかけて。そしてゆっくりと仮面を外した。そのまま頬を撫で視線を誘導するように、顎を持ち上げる。真っ白な肌を彩る、鮮やかなオレンジ色。はじめて会う人間だったら女性と間違えても仕方ないくらい、可愛らしくなっていて。誰かの手に触れられなくて良かった、と宗雲は雨竜を見つめた。
    黙ったまま、どれくらいたっただろうか。沈黙に耐えられなくなった雨竜が「あの…」と声をかけて、宗雲は漸く口を開いた。

    「どうしてこんな格好をしている?」

    「さっき、エージェントさんが…言った通りです……僕が、ウィズダムに行ってみたいって言ったから…変装したらどうかって話に…なりまして…」

    騙して、偽って行くなんて良い事ではないのは分かっている。まっすぐ見つめる視線から逃げるように、若草色の瞳が泳いだ。

    「…そんなに、店に居る俺が良いですか?お嬢さん」

    甘ったるい声に驚いて、視線を戻す。けれどその顔は依然険しいままで。雨竜はそうじゃないと慌てて首を振る。

    「いつもの宗雲さんが好きです!」

    VIPルームの、向こう側にまで聞こえてしまうのではないかと思うくらいの大きな声が出た。険しい顔だった宗雲も驚き瞬きを繰り返して、くすくすと笑みを漏らす。そこで雨竜は恥ずかしい事を言ったのだと気がついて。顎に添えられていた手から逃げるようにそっぽを向いた。長い髪の隙間から見える小さな耳まで真っ赤に染まっている。

    「雨竜」

    名前を呼ぶ声は、甘くて優しい。でもお店の時の声とは違う。自分だけを呼ぶ優しい声。
    視線だけ送ると今度は逃げられない様に、頬を包み込むように掬われた。
    ちゅっと、唇が触れて音がする。呆気に取られている間に、唇がまた触れた。

    「あまり、そういう可愛い事を言うな。…あと、その姿。もう誰にも見せないでくれ。誰かに盗られたら敵わない」

    唇が離れたすぐそばで、囁かれる言葉は力強くて。なのに、意味の半分も理解出来ない。

    「え?」

    自然と漏れた声に、宗雲は小さく笑った。

    「レオンさんにケーキを預けている。誕生日おめでとう…少しでも会えてよかった」

    耳元で囁いて、髪を撫でて。

    「俺も、いつもの方が好きだ」

    そう言うと宗雲は扉の外へと出ていった。ドキドキと雨竜の胸は跳ねて、言う事を聞かない。壁にズルズルと持たれてその場に座り込む。雨竜がウィズダムに行きたかったのは、宗雲会いたかったからだった。でも、誕生日だから会いたいなんていうのは少し子供っぽくて、言えなくて。18になったから。お店に会いに行っても良いかと思っていたけれど。まさか、宗雲の方から会いに来てくれるなんて思わなくて。胸がいっぱいで、嬉しいと彼の言葉を反芻すると少し落ち着いた胸がまた少し跳ねた。



    「おかえり」

    革靴の音と扉の開く音で、宗雲が戻ってきたと判断した浄は、入り口まで迎えに向かう。というのも、あの後どうしたのか気になったからだ。…が、戻ってきた宗雲は、いつもと変わらぬ支配人の顔。根掘り葉掘り聞いても怒られるだけだろう。つまらないなぁと思っていたが、彼の唇がいつもと少し違う事に気がついた。

    「……プレゼントを貰ったのは宗雲のほうだったか」

    「…なんの事だ?」

    「いや、別に。ね。」

    手をひらひらと振って離れていく浄に、宗雲は怪訝そうな視線を送る。まぁ、いつもの事かとため息をついた時、エントランスに飾られた飾れた鏡が目についた。何かいつもと違う気がする。じっと見つめ、浄に言われた意味を理解する。唇についたオレンジ色のリップを拭いながら、宗雲はしばらく浄に揶揄われそうだと頭を抱えた。



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