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    69asuna18

    ドカメン:宗雨
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    69asuna18

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    新刊『ことのは』

    口付けにまつわる、短いお話詰め合わせ。
    その中から一つ。

    ことのは「なぜ、口を吸いたくなるのでしょうね」
    ソウゲンが、そんな感情を覚えたのはスズランと恋仲になってからだった。
    絵巻や書物にそう言う表現があるのは知識として知っているが、そもそも唇を重ねたり、吸ったりしようとした理由はなんだろうか。
    スズラン殿を見ていると唇を寄せたくなるのは確か。そもそも触れたくなるという方が大きいのかもしれない。触れる、の延長線にあるのかも知れない。
    「むずかしい顔だね」
    布団の中からごそりと動いて、顔を覗かせたスズランはソウガンの肩が冷えぬようにと布団を掛け直した。
    「スズラン殿と居ると初めての感情ばかりで。気になる事が増えるのです。…刺激的で、とても良い」
    フフフと笑うと、真似をするようにスズランも笑う。
    「口付けの理由…ねぇ」
    先の独り言が聞こえていたのか。ふむふむと顎に指を添えて悩む素振りをして見せる。本当に考えているのかは怪しい所だが、話にのってくれるのは非常に愛らしい。
    「食べちゃいたいくらい好き…とか?」
    「そんな狂気めいた愛情表現が流行るとは思いませんが」
    「うーん、でも指を送ったりとか、あるでしょう?」
    「まぁ、そういう類の方もいますがね」
    スズランは顎に添えていた手で唇をなぞった。何を考えているのか、その瞳は遠くを見つめて、パチパチと瞬きを繰り返した。行燈の光で、真白い顔に写っていた長い睫の影がゆらりと揺らいで頬を撫でる。
    「やっぱり、気持ちいいからかなぁ…」
    唇を舐めて、指先で押したり、撫でたり。さっきまでしていた行為を反芻しているようだった。
    「うむ、確かに…。唇や下には繊細な神経が沢山通っていますので…皮膚も薄く感じやすい。そこを刺激すれば、気持ち良くなるのも分かりますが…」
    「が…?」
    「そもそも、唇を重ねようと思うに至ったきっかけが…」
    うむ…と考え込むとスズランはごろりと身体を動かして、真下からソウゲンを見上げる。
    「ねぇ、……ソウゲンちゃん」
    「どうしたのです?」
    「…僕の、…口、吸ったら分かるかも」
    月も真上に上がった真夜中に。二人が口を閉ざせば辺りはシンと静まって、虫の鳴き声すら聞こえない。
    行燈の小さな光が、スズランの赤くなった頬を捉えたのに。ソウゲンがスズランに身体を寄せて、影が大きくなりその表情はすぐに見えなくなる。
    ふっくらとした唇に。ソウゲンのカサついた唇が重なる。頬が赤かったのもあってか、それは少し熱く感じる。角度を掛けて、唇の合間から舌を差し込むと、迎える様にそれが絡んできた。湿った音と、吐息と。布団と浴衣の擦れる音。まるで世界で二人きりになったみたいで。胸がトクトクと駆けた時のように跳ねた。
    ちゅっと優しく吸って、離れると蕩けた瞳と視線が交じり合った。
    「どう…?分かった?」
    「…そう、したかったから。かもしれませんね」
    「そっかぁ…」
    スズランは恥ずかしそうに。布団に潜ってその中で何度も嬉しそうに小さく笑った。
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    mkm_ao

    MENU🍳「おまえとふたりで朝食を」A5/30ページ 2022/3/27発行
    掌編連作ごはん本。
    9話後、南城が桜屋敷邸に泊まり込みで薫の日常生活を手伝っている設定。
    両片想い→告白&両想いに至るまで。

    自家通販 https://mkmatome.booth.pm/items/3705681
    おまえとふたりで朝食を憂愁のカルボナーラ「来週には脚のギプスが外れることになった」
    「おお、よかったじゃねぇか」
     ランチ営業が終わるタイミングでシア・ラ・ルーチェに立ち寄った薫が診察の結果を告げると、虎次郎は破顔した。
    「リハビリは必要だがな」
     もう、おまえの手を借りずとも生活に支障はない——そう伝えれば、今度は眉間にシワを刻む。
    「うれしくないのか?」
     薫の指摘に虎次郎は「あ〜……」と相槌ともつかない声を漏らして厨房へと入り、「パスタでいいかぁ?」と間延びした口調で訊いてきた。
    「任せる」
     愛抱夢にボードで殴打されて負傷したあと、薫は一時的に実家に戻るか、手伝いを雇って自宅での生活を続けるかの選択を迫られた。そこへ「俺が手伝うよ」と虎次郎が名乗りを上げたのだ。確かに虎次郎ならば、薫を抱き上げて介助できる腕力があるし、気心も知れている。何より、美味い飯にありつけることが約束されているではないか。薫に否やはなかった。
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    norarikurari031

    DONEデザワ黄色本の初期設定チャラ南城×短髪屋敷にやられて書きました。あんまり本編との差が出なかった気がするんですが、楽しんでいただければ幸いです。
    内容的には「本命(短髪屋敷)の気を引きたくて女の話ばっかするけどいざ短髪屋敷がそういう気配を出すと臆病になっちゃう南城×そんな南城の本命が自分なの知ってるけど色々と癪だから踏み出さずに南城の理性崩壊をじりじり待ってる短髪屋敷」です。
    始まりの夜(デザワ黄色本ジョーチェリ)「流石に平手打ちはねーよなぁ。そもそも付き合ってるわけでもねーのにさ」
    「色っぽくて脚綺麗で、よかったんだけどなぁ。一回きりでお別れになっちまった」
    「出勤前に顔に紅葉模様、マジでかっこつかねーよな。スタッフも呆れてたし、本当に災難だったわ」
     生返事をしながら、今夜はタイミングが悪かったなとため息が出る。複数の依頼の納期に文芸誌に連載中のコラムの締切が同じ週内に被った先週は忙しく、食事も出来合いの総菜や弁当で済ませていたせいで、いい加減舌が物足りなくて。
     ほぼ二十日ぶりに閉店後の店を訪れた俺を、幼馴染は嬉しそうに笑って迎え入れた。上等な白とアンティパスト数品を並べたカウンターに、エプロンを外し、コックコートのボタンを上から三つ外して勝手に並んで座ると、聞いてもいないのに最近バーで出会ってお持ち帰りした「尻は軽いくせに、独占欲がとプライドが強い」女への苦言を並べる。男女問わず交友関係だけはやたら広い男だ。他に聞かせる相手などいくらでもいるだろうに。
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