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    CH1KUWA_bu

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    CH1KUWA_bu

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    江澄が生理痛に苦しむ話。
    曦澄前提ですが、兄上殆ど出てきません!!笑
    ずっと双傑が話しています!!男性妊娠、男性生理ネタが苦手な方はUターンで!!!
    全然書き終わらないのでどなたか尻をたたいてください!!!

    #魔道祖師
    GrandmasterOfDemonicCultivation
    #曦澄
    #男性生理ネタ
    malePhysiologyStory

    男性生理ネタ江澄痛い。
    腹の内側から見えない手で内臓をぐちゃぐちゃに握りつぶされているようだ。江澄は寝台の上で胎児のようにうずくまり、ずくりずくりと波のある痛みと悪寒に脂汗を浮かべて耐える事しか出来なかった。とめどない寒気に身体を暖めようにも寝台の上から動けない。
    ふぅ、ふぅ、と不規則な呼吸が食いしばった歯の隙間から漏れ、貧血でもはや灰色にすら見える血色のない顔の眉間の皺を更に深くした。
    (痛い、痛い痛い痛い!はやく、早く終わってくれ………………っ)




    ―きっかけは些細なものであった。

    時は遡ること半年前になる。

    江澄は、長い長い閉閑を終えた藍曦臣と紆余曲折を経て恋仲になりしばらく経つ。互いに時間が許せば姑蘇へ行ったり雲夢へ来たりして少ないながらも二人で過ごす時間を設けていた。藍曦臣は江澄を愛していたし江澄も今までの人生で持ったことの無いくすぐったいような感情が常に胸中で渦巻いていた。

    ただ、江澄には一つ気掛かりなことがあった。
    そう、それは雲夢江氏と姑蘇藍氏の跡取り問題である。義兄である魏無羨の同侶、つまり姑蘇藍氏直系の次男である藍忘機はご存知の通り男で、彼らの間にまず子供は望めない。となると残る藍氏直系の人間は藍啓仁と藍曦臣になる、しかし藍啓仁が同侶を娶る気配は全くない上、彼は髪に白いものが混じるようになったいい歳だ。かと言って藍曦臣は自分が恋人として占領してしまっているではないか、これでは姑蘇藍氏の跡取りどころか雲夢江氏の跡取りも生まれない。
    江澄とて、血筋で争うことの愚かさは金光善や金光瑤の一件で芯骨に染みて分かっている、江澄は血筋絶対主義を掲げたいのでは無い。父と母から脈絡と紡いできた雲夢江氏の血が自分の元で途絶えてしまうのがどうしようも無く虚しいのだ。まるで父母や祖先の存在が元から無かったかのようになってしまうのが……。
    とは言えど、江澄の方は藍曦臣のことをもう離してやるつもりは毛頭無いし、もし藍曦臣が心変わりなんてしようものなら散々弄ばれて未知の快感を植え付けられたこの身体の責任をしっかりとってもらうつもりだと江澄は心の中で皮肉を込めて笑った。
    しかし、会えばこちらの身が溶けるほど溺愛してくる藍曦臣が自分以外の人間とそういった仲になっている所は想像もできない上に、最中に囁かれる『私がこんなに愛しているのは貴方だけです。』というその言葉に嘘がないことを素直に信じられるほどには江澄も藍曦臣に溺れているのだと自覚していた。

    (はぁ、この世は上手くいかないものだな)

    そんなことを考えながら今日の分の仕事を進める。ここ最近は夜狩りで連日外に出ていたので貯めてしまっていたのだ。江澄はさらさらと紙に筆を走らせ溜まっていた仕事の束を右から左へと手際よく済ませていった。
    どれほど経ったか、ようやく一段落付きふぅ、とため息をついた時だった。外から聞きなれた騒がしい声が聞こえてきた
    「おーーーーい!!!!江澄ーーーーー!!!!俺が来たぞーーーーー!!!!」
    「っ、魏無羨!!!少しは静かに来れんのか!!!!」
    ガララッ、と自室の扉を勢いよく開けると目の前には酒に酔い頬を蒸気させた義兄が立っていた。
    「ちょーっと蓮花塢の方まで用事があってさ!師姐たちに挨拶しようかと思って寄っちゃった!!あ、天子笑はお土産だぞ!!はい!」
    そう言って腕の中に押し付けられた幾つかの酒の甕は遠い記憶のそれとなにも変わらない。
    「姉上達は静かに眠ってるんだ!騒がしくするな!」
    「はいはーい」
    義兄はそのまま頭の後ろで腕を組むとふらふらと祠堂の方へ歩いていった。
    「ったく、アイツは何も変わらないな」
    悪態はつきながらも満更でもない江澄は預けられた酒に合いそうなつまみを適当に見繕うと蓮池が見える外の石机で義兄を待った。
    義兄との関係が回復しだしたのはここ一年の事だったと記憶している。
    どう足掻こうと過去は変わらない。それゆえ以前のようには振る舞えないが、互いに今あるこの世界を受け入れて進もうとしているのだと江澄は感じていた。

    今日はよく晴れている、蓮花湖の蓮の葉は初夏の暖かな風で揺れ水面は穏やかに小波を打っていた。
    そんなことを考えてしばらく経つと祠堂で挨拶を済ませた魏無羨がパタパタと走ってきた。
    「江澄〜〜〜!!お待たせ!お!つまみを用意してくれたのか!雲夢は干物も美味いよなぁ!でもやっぱりこの蓮の実は最高だ!」
    魏無羨はどすんと音を立てて江澄の向かいの席に着くと皿に盛ってあった蓮の実を数粒口の中に放って幸せそうに噛み締めた。先程土産と言ったくせにその手には座ると同時に天子笑が握られていて江澄は失笑する。

    「ん〜懐かしい味がする!あ、そう言えば江澄は最近どうなんだ?」
    「どう、とはなにが」
    「ハハハ!どうって沢蕪君とのことに決まってるだろ!」
    沢蕪君、という言葉に江澄は一瞬身体を固くしてぴくりと眉毛を上げる。
    「…………お前に沢蕪君との関係を話した覚えは無いが」
    「ハハハっ、時々沢蕪君が雲夢に行くと言って雲深不知処を数日間留守にしてることぐらい知ってるよ!雲夢は江氏の管轄なのになんでわざわざ遠く離れた姑蘇藍氏の人間が数日も留守にしていく必要がある?想い人でもいない限りありえないだろ?ってわけだ!……ふふ、江澄お前、沢蕪君と恋仲なんだろ!で、どこまでヤってんの?あ、どんくらいヤってる?のが正しいか」
    そんな少ない情報量でよく自信満々にその答えに辿り着いたなと少々感心しつつも相変わらずの遠慮の無さに江澄は、はぁっとため息を着いてから話し始める。
    「お前はよくもまあペラペラと……厚顔無恥は相変わらずだな。ああそうだよ、俺とあの人は恋仲だ。それもあの人が俺に惚れ込んできた口だ。」
    「沢蕪君が!?お前なにしたんだよ?あの人は確かに優しいけど誰にでも平等に優しいって感じじゃないか……!あぁでも、沢蕪君も姑蘇藍氏だしな……」
    妙に説得力のある最後の言葉に苛立ちと気恥ずかしさを感じた江澄はパシッと自分の腿を叩いて話を終わらせようとした。
    「もういいだろう、そういう事だ」
    「いーや!まだまだ聞き足りないね!」
    「はぁ?もう話すことは無いと言っているだろ」
    「なんかあるだろ?恋の悩みの一つや二つや三つや四つ!羨兄ちゃんが聞いてやるから言ってみろよ!」
    「誰がお前に!」
    「はいはい!ったく、変わってないのはどっちだよ……まぁ、とりあえず飲めって!天子笑は最高だぞ!」
    そう言って満面の笑みで江澄の盃に並々と酒を注ぐと自分は甕のまま浴びるように酒を煽った。
    (こいつ……さっきもベロベロに酔ってから蓮花塢に来たって言うのに……酒豪っぷりもここまで行けばいっそ気持ちがいいな)江澄は注がれた酒を一気に飲み干す。懐かしい喉越しの後に芳醇な香りが鼻腔を擽り、かぁーっと胃袋が熱くなるのを感じながらその深い味わいを楽しんだ。
    美味い、いくらでも飲めそうだ。さすが酒好きの義兄が好むだけある。
    空になった盃を魏無羨の方に差し出すと義兄は何も言わずに二甕目を開けて江澄に注ぐ、それが何度か繰り返されて江澄の呂律が怪しくなってきた頃だった。



    「魏無羨〜、おまえ、後継のことどう思ってるんだよ」
    「ん?どうって?」
    「そんなの、姑蘇藍氏に跡取りが無いことについてに決まってるだろお!」
    「あ〜〜、それなら恐らく思追が継ぐことになると思うぞ。もちろんあいつが望めば、の話だが」
    「はぁ?藍思追?確かに夜狩りの腕は達者だが、あいつは藍氏直系じゃないだろ?例え本人やお前の……あの同侶が許しても、お前んとこの藍ジジイがそれを許すのか?」
    江澄は未だ藍思追が元々温氏の残党であることを知らない。
    「あー、どうだろうな、それは考えてなかった。でも大丈夫だろ、藍先生ってば阿願がこーんなにちっちゃい頃から面倒みてて案外甘いからさ!なーんてったって俺と藍湛の子供だし!」
    そう言って魏無羨は親指と人差し指で小さな隙間を作って江澄に見せた。
    「っ、馬鹿言ってろ!」
    それを聞くと魏無羨はけたけた笑った。
    江澄は盃を置き、ふぅ、と酔いを覚ますようにため息をついてから話す。

    「……まぁ、時代は代わる。それも悪くは無いんだろう。変なことを聞いてすまなかったな。忘れてくれ」
    魏無羨はそうして話題を終わらせようとした江澄の表情に普段とは違う悩みや迷いの色を感じとり(やれやれ……丸くなったと思ったのにコイツの素直に話せない所は変わらないな)と思うと、わざと茶化すような裏声で江澄に話しかけた。
    「江晩吟さんってば、なんで急にそんなことを聞いたのかしらぁ?あっ、もしかして、沢蕪君に私の子を産んでくださいとでも言われて抱き潰されたのか!?」
    言い終わった直後、向かい側でバチバチっと雷が弾けるような音がして魏無羨はしたり顔をする。
    「魏、無、羨!!!ふざけるのも大概にしろ!!!あの人は男相手にそんな恥知らずなことは言わん!!大体、男が身篭るなど出来やしない!お前は馬鹿なのか!? いいか、雲夢江氏に跡取りが無いのは深刻な問題なんだぞ!!!」
    そこまで聞いて魏無羨は悪戯が成功した子供のようにニヤリと笑う。
    「はははっ、やーっと本題に入ったな?江澄」
    そう言われてハッとした江澄はみるみる怒りに顔を赤くして、魏無羨の名を蓮池の水面が揺れるほどの声量で叫んだ。
    「お前っ!!!!俺をはめたな!?」
    あまりの剣幕に近くにいた水鳥が吃驚して一斉に飛び立つ。
    「まーまー、良かったじゃないか、言いたかったことが言えて。すっきりしたか?」
    「っ、お前はいつも……っ!」
    「……で、お前はどうしたいわけ」
    今にも殴りかかりそうな江澄を制止する様に、すぅっと真面目な顔になって魏無羨が訊ねる。
    手を揉み紫電を擦る江澄は酷く口ごもったあと話し始めた。

    「今、江氏には後継が居ない…………」
    その顔は僅かに俯いている。
    「……跡取りが欲しい。…………いや、必要なんだ………………」
    酒の力なのか江澄は心做しかいつもより素直な言葉で話せていた。魏無羨は手に持っていた天子笑の甕を石机に置いて静かに頷く。
    「ハッ、最近では毎日のように雲夢の商人達が噂している『宗主は男色だから子は望めない』『雲夢江氏もここで終わりか』ってな」
    吐き捨てるようにそう言った江澄は『男色と言えば姑蘇藍氏の二公子もそうなんだろ?これじゃ跡取りが生まれず世家の力も弱まるな』という余計なお世話でしかない噂は話さなかった。

    「今、たしかに俺と藍曦臣は恋仲だ…………だが、早々に関係を解消し互いに家のために妻を娶り子を成すということも出来る……むしろそちらの方が一般的なんだろう……だが、」
    そこで言葉を区切ると江澄はまた黙ってしまう。魏無羨はそれを急かす。
    「だが、なに?悩みの理由はそれだけか?今の話だけだと、お前は男色だと噂されるのが嫌だし跡取りが居ないのは困るから後継が必要って意味になるけど。それともお前は見ず知らずの人間が話す噂なんかに流されて好きでもない仙子と同侶になるのか?それは仙子のほうが可哀想だよ」
    「っ違う!!俺は……、俺は……っ!…………」
    「俺は、なんだ」

    「っ、もう、あの人のことを離してやれない…………っ!」
    酒のせいではない顔の紅潮を湛えて江澄は握りこぶしをブルブルと震わせている。恥と確かな意思を含んだ顔は眉間に皺がより普段よりずっと複雑な表情をして見えた。対して魏無羨は少し目を見開き、初めて目の当たりにする義弟の独占欲に驚いていた。酒の力も勿論あろうが、江澄という男が己の矜恃を顧みずこのような発言をするなどよっぽどだ。どうやら自分が思っていたよりも義弟の悩みは深刻らしい……。
    「俺は……跡取りが欲しい……それも自分の子を、だ。俺は雲夢江氏の血を俺の代で途絶えさせたくない……父上や母上、御先祖様達が長い間紡いできたこの血を、断ち切りたくない………………」
    そこで言葉を止めて机上の天子笑の甕を一つ取ると浴びるようにその酒を煽った。空になった甕を石机にドン!と置くと江澄は何かを吹っ切ったように幾分か張った声で話す。
    「っぷは、だがな!俺はもう藍曦臣を手放すつもりも手放されるつもりもない!!あの人が俺以外と恋仲を持つなんて考えられない!!あの人はもう俺のものだからだ!俺に子が生まれるならあの人との子でないと駄目だ!!」
    魏無羨はなるほどな、と思った。(コイツがずっともだもだ悩んでるのは、両親や先祖を思うと自分の血を引く跡取りが欲しいが、同侶として共に在りたいのは沢蕪君だけ……。んで、自分は男だから子供は産めず、沢蕪君も勿論産めるはずもなく己の願いはどちらかを捨てなければ叶わないってことだな。よし!)

    「江澄、朗報だ」
    「……なんだ」
    「男同士でも子は産める」
    「……………………お前、おすすめの医者を紹介するぞ」
    可哀想なものでも見るような目でこちらを見てくる江澄の視線に魏無羨は慌てて否定の言葉を連ねる。
    「やめろやめろ嘘じゃない!!本当だ!!!」
    「はぁ…………???何言ってるんだお前、そんなことが出来たら今頃お前んとこにはチビ藍氏が溢れるほどにいるだろうよ!」
    江澄は魏無羨がついに本当の大うつけになったのかと疑わしげに眉を寄せた。宗主として長年様々な珍しい怪奇や地方の文献を読んでいるが男が子を孕むなどそんなこと見たことも聞いたことも無い。自分は恥や矜恃を忍んで悩みを明かしたというのに、冗談で返されて馬鹿にされているのかと憤りすら感じる。

    「はぁ…………鬼道の時もそうだけどさ、江澄お前って奴はなんで理論理屈を一方面からしか見られないんだよ」
    「っ、お前が先に馬鹿にしてきたんだろうが!」
    「馬鹿になんかしてない、まぁ話を聞けよ。お前の悩みを解決するとっておきの方法が一つあるんだ。」


    そこからの話は実に信じ難いものであった。

    魏無羨は懐から丸薬が入った白い薬包紙を取り出すと江澄に見せた。
    「江澄、ここにある薬を飲んでいつも通り事を致せば男でも孕める。」
    「……でたらめでない証拠はあるのか」
    「勿論ある。」
    いいか、と前置きをして魏無羨は語る。

    「お前も知っての通り俺には金丹が無い、だが莫玄羽の修為だと1人で結丹するのは至難の業だ。だから結丹するために定期的に藍湛と双修をして霊力を循環せなくちゃならない、まぁ毎日してるんだけど。そこで俺は霊力……つまり人に流れている〈気〉を研究し始めたんだ。すると不思議なことが分かった、なんと男にも微かだが下腹部の辺りに女人と同じ〈気〉が流れていたんだ!」

    魏無羨は何か物凄い秘密を明かすように人差し指をピンと立てて自信満々に話していたが、言葉の意図が何一つ理解出来ない上、義兄の夜伽の頻度まで知ってしまい苛立っている江澄を見るとやれやれと言う顔で続ける。

    「つまりだな、この世の男は元々みんな女人になり得る身体をしていたって訳なんだよ。なぜ途中から変わるのかは分からないが、下腹部の……ほらこのへん、本来なら子を身篭るはずだった器官が退化しているだけなんだ。それを俺が調合したこの薬で刺激してやると……退化していた器官が発達して男でも子供を授かれる身体になるって訳!」

    そう言って魏無羨は白い薬包紙に包まれた丸薬を江澄の鼻先に突き出して得意げに胸を張る。
    最後まで聞いて江澄は驚きと期待で言葉を失っていた。
    (昔からコイツは探究心が強く常識に囚われないから誰よりも物覚えが早くて、良くも悪くも己の思考の元動いている人間だとは思っていたが、まさかこんな事まで実行するか……!?)

    「ちょ、ちょっとまて、薬が完成しているならなぜお前は試さない?」
    「あ〜、それは藍湛と話し合ってまだ子供よりも結丹を優先しようって事になってさ〜」
    「…………」
    「……もしかして、まだ疑ってるのか?アハハ!俺がお前に嘘ついたことなんかあったかよ!大丈夫本物だよ」
    江澄は「お前が俺に嘘をついたこと?俺の金丹の件なんかその筆頭じゃないか!」と叫びたい気持ちをなんとか飲み込み薬包紙から取り出したその丸薬をまじまじと見た。
    丸薬は指の先程の大きさで黒々とした艶を湛えておりお世辞にも味が良さそうには思えない。(こんなもので本当に身体の構造が変わるのか……?正直言って、これはどう見ても雲深不知処の兎のウン…………いやこれ以上はよそう……)
    これだけ話しても尚、訝しげに丸薬と魏無羨を交互に眺める江澄の鼻の先に魏無羨は丸薬が乗った薬包紙をもう一度突き出して訊ねる。

    「どうだ江澄、これを使えばお前の悩みは解決されるはずだ。使うのか?使わないのか?」
    江澄は下唇を噛み、ゴクリと喉をならした。
    (実はこの丸薬は毒薬で魏無羨が俺の寝首をかくなんてことはまず無いだろうし、ここまで話しておいて今さら怖気付いて身を引くなんてのは男が廃るというものだろう。効果が無ければその時はその時だ)

    「ハッ、いいさ、飲んでやる」
    「はぁ?飲ませてくださいお義兄様、だろ!」
    「残念だったな、俺と沢蕪君が同侶になればお前は実質義弟だ!」
    そう言って江澄は丸薬を受け取ると魏無羨に言われた通り早速1粒飲み込んだ。
    ゴクン。
    「………………………………」
    そっと下腹部に手を当ててみるが何の変化もない。

    「おい、…………特になにも変わらないぞ」
    「はぁ……身体が今までと違う形になるんだ、そんなにすぐ効果がでるわけないだろ?その薬は継続が必要なんだ、いいか?今から薬の注意点と作用を説明するからよく聞いておけよ!この薬はな……………………」




    ―という訳で、江澄はそれから話された内容の通りに薬を服用し続け、魏無羨の説明の通り副作用で月に一度訪れる激痛の血祭りと付き合っていくことになったのだ……

    そして冒頭に戻る。



    江澄は変わらず寝台の上で横になっていた。月の物が来ると1週間は有に動けない、現在は2日目でこれまで数ヶ月の経験則から行くと最も出血量が多く下腹部痛が重い日だ。
    (今日を……超えれば……少しは楽になる……)

    額と掌にとめどなく湧き出す脂汗を敷き布を握りしめて紛らわせる。まさか、まさかここまで辛いとは思っていなかった。
    (師姐は毎月こんな激痛の中台所に立っていたのか……?クソクソっ、もう少し気にかけるんだった……!)
    何故か涙が出てきて年甲斐もなくぐすぐすと袖を濡らしてしまう。
    (なんで動けないんだ……!夜狩で腹に重症を負った時でさえ邪崇三体くらいなんてこと無く倒せたのに……!!)

    誰か、だれか……訳もなく心細くて、どうしたらいいのか分からない。こんな時、藍曦臣がそばに居てくれたら…………。そんな考えが頭を過り江澄は力なく首を振る。
    (あの人には頼らないと決めたじゃないか)
    江澄は子を身篭れる身体にするために丸薬を飲んでいることを藍曦臣に伝えていなかった。その理由の一つは期待をさせてもし上手くいかなかった時に堪らない気持ちになってしまうのが嫌だったからだが、もうひとつは「貴方との子が欲しい」と伝えてもし拒絶されてしまったら……と考えると恐ろしくて何も言えなくなってしまうからだった。

    「ははっ…………俺は馬鹿か、」
    誰もいない部屋に唸るような掠れた声が響いた。

    その時外から戸を叩く音が聞こえ、「誰だ」と尋ねる。
    「私です阿澄、具合が悪いのですか?開けてくださいませんか?」
    その声は他でもない聞きなれた藍曦臣のものだった。
    (っ……なぜだ向こう1週間は留守にしているから来ないでくれと伝えたはずだが…………)
    しかしここで入ってくるなと言えば益々怪しまれるだけだと思った江澄は体調が優れないのを悟られないように重い身体を何とか腕で支えて起こしながら乱れた襟を直してなんとか寝台に座った。流石に今からでは髪は結えないため風呂にも入れずぼさぼさになった髪を無造作に後ろへ流して入口に向かって努めていつも通りを装って声をかける。

    「……なんともない、入っていいぞ」

    扉がきぃ、と音をたててゆっくりと開いた。
    そこには酷く心配そうな焦っているような悲しんでいるような苦しんでいるような悔しがっているような、見たことの無い表情をした藍曦臣が立っていた。

    「っ…………、阿澄……!!」

    次の瞬間江澄は藍曦臣の腕の中にすっぽりと抱きすくめられていた。 つづく
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    CH1KUWA_bu

    CAN’T MAKE江澄が生理痛に苦しむ話。
    曦澄前提ですが、兄上殆ど出てきません!!笑
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    全然書き終わらないのでどなたか尻をたたいてください!!!
    男性生理ネタ江澄痛い。
    腹の内側から見えない手で内臓をぐちゃぐちゃに握りつぶされているようだ。江澄は寝台の上で胎児のようにうずくまり、ずくりずくりと波のある痛みと悪寒に脂汗を浮かべて耐える事しか出来なかった。とめどない寒気に身体を暖めようにも寝台の上から動けない。
    ふぅ、ふぅ、と不規則な呼吸が食いしばった歯の隙間から漏れ、貧血でもはや灰色にすら見える血色のない顔の眉間の皺を更に深くした。
    (痛い、痛い痛い痛い!はやく、早く終わってくれ………………っ)




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