転生ネタ悠脹※記憶あり虎杖と記憶なし脹相(加茂姓)
喫煙者にとって、公に許された喫煙スペースは一種の憩いの場だ。
青年──加茂脹相は、通う大学の最寄駅の喫煙スペースで二本目のタバコをふかしていた。
時間は十六時。アルバイト先のバーに向かうにも中途半端な時刻で、そうした隙間の時間に無意味に肺を苛めてぼんやりするのが気が付けば習慣になっていた。
きっかけは、幼少期の火遊びだった。その頃の彼は、火に怯えながらもその熱に手を近付けると、なにか充足感のようなものを感じていた。その頃、というのは正確には語弊で、実は今もそうだからこそこうして煙を燻らせている。
件の火遊びは、仏壇の蝋燭を倒して、それが顔に当たってそれなりの大きな火傷をしてからはやめた。火傷痕は、年を経た今でも彼の鼻頭に横一文字、刻まれている。貼り付いた蝋が熱くて恐ろしくて、痛かったことを脹相は今も褪せず覚えていた。それでもなお、熱は恐怖と共に謎の充足感を彼に与え続けていた。
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