犯人は久世充?蒼天朱雀「じゃあ今日の放課後、その怪異を探しましょ」
牙王白虎「そうだな。ぜってー許さねえ」
カッターで怪我した右手に包帯を巻き、まだ痛むからか少し左手で抑える牙王白虎とそんな牙王白虎を心配する蒼天朱雀は2人で購買に寄ったあと教室に帰ろうとしていた
蒼天朱雀「意外と色々売っててびっくりしたわね…そのハンバーガー、昼食の時に一緒に食べようね」
牙王白虎「ほんとにいいのか?奢ってもらっちゃって…悪い気がして…」
蒼天朱雀「あんたは災難だったんだから。これくらいさせて」
蒼天朱雀はそう言って牙王白虎の背中を叩いた
牙王白虎「あ、ありがとう!」
そして昼休み
久世充と脚の速さを競うべくグラウンドへ来た牙王白虎とその付き添いで来た蒼天朱雀は久世充を待った
久世充「もう来てたのか…ってその怪我どうした?」
蒼天朱雀「これは色々あって…」
久世充「…お前、右利きか?」
いきなりの久世充の問いに牙王白虎は思わず戸惑った
牙王白虎「えっあっ…うん」
久世充「それにテンション低いな。…もしかして何かあったか?」
蒼天朱雀「まあそれも色々…」
久世充「…その色々ってやつ、良かったら聞かせてくれないか?」
久世充の言葉に2人は驚いた
蒼天朱雀「聞いてどうするの?」
久世充「ライバルが大怪我してるってのに理由も聞かず競えるかって話だ。言いづらいところはいいから聞かせてくれたら嬉しい」
2人は顔を見合せて事の始終を話した
久世充「なんだそれは…ふざけた話だ。そんな行為は何があっても許されないぞ」
そして久世充は憤りを感じていた
蒼天朱雀「まあそういう事情があるから白虎があんたより点数低くてもバカにしたりしないでよね」
久世充「当たり前だ。僕はそういうズルが大嫌いだからな。…今からの競走だけでケリをつけよう。」
そして牙王白虎と久世充の2人は位置について蒼天朱雀が掛け声をかける
蒼天朱雀「On your mark。set。」
2人は真剣な表情で勝負に臨もうとしていた
蒼天朱雀「Go!」
そして掛け声があがる
勝負は歴然だった
50m程のコースを牙王白虎は弾丸のごとく駆け抜けた
牙王白虎がゴールした時に久世充はコースの4分の1も行っていないくらいのところにいた
蒼天朱雀「……瞬間移動…?」
久世充「はや………」
思わず2人は唖然としてしまった
牙王白虎「な、言っただろ。俺は足の速さだけは誰にも負けないって!」
牙王白虎はゴール地点でにかっと笑った
蒼天朱雀「…じゃあこれで白虎の勝ちってことで……」
久世充「…ズルはしてなかったんだな」
久世充は牙王白虎の方を向いた
久世充「ごめん。疑って。お前の実力をズルだと抜かして」
牙王白虎「お前、受験時怪我してたよな?…結構深刻そうな」
牙王白虎は話を切り出した
久世充「骨折したさ」
牙王白虎「あれ、自分で転んだんじゃないだろ?」
久世充「…ああ」
牙王白虎「…俺が思うにだが…あれは誰かが仕組んだものだと思う。」
牙王白虎の発言に久世充と蒼天朱雀は驚いた
蒼天朱雀「それって…今度こそ本当に…」
牙王白虎「走る前から不思議に思ってたんだけど…靴がおかしかった。」
久世充「僕は念入りに手入れしたはずなんだが…」
牙王白虎「走る直前におかしくされてたんだよ」
久世充「…詳しく聞かせてくれ」
牙王白虎「お前の靴紐から透明の糸が引いてた。それは多分刃物のようになっていてお前の靴紐を切ったんだと思う」
牙王白虎の見た話を聞いて久世充は眉間に皺を寄せていた
牙王白虎「それにお前は一番端のところから走っていたから誰もそれに気づかなかったんだろうな。俺はそのことを終わったあとに係の人に言いに行ったけど…それが伝えられたのがお前がスポーツ基準で合格することを諦めた後だった…ってわけだ」
蒼天朱雀「そんなことが…」
久世充「そうだったのか…糸が張ってたことにも気づかなかった僕の方がよっぽど馬鹿だな…」
そう言って久世充は悔しい顔をしていた
牙王白虎「…まあお前はどんな道であれ俺に勝つためにこの学園に入ってきた。…だからいつでも受け立つぜ。…俺への挑戦は」
牙王白虎の言葉に久世充はにっと笑って
久世充「当然だ。必ずお前に勝ってやる。」
と言ってその場を後にした
放課後
牙王白虎「色んなことがあった1日だったなー…なんか疲れた」
蒼天朱雀「そうね…とりあえず白虎に酷いことをした怪異を探しましょうか」
2人はそう言って教室を出た
と同時に隣のクラスからすごい罵声が聞こえた
蒼天朱雀「なになに?!」
牙王白虎「A組の方からだ!!」
2人はA組を覗き込んで見た
すると見知った顔を中心にクラスのほとんどの人が罵声をあびせているではないか
A組生徒「自分が勝ちたいからって卑怯だぞ!」
A組生徒「いくら恨んでるからってそれとこれでは話別だろーが!」
牙王白虎「なああれ…」
蒼天朱雀「ええ…充くん…」
その見知った顔とは久世充のことだった
A組生徒「そんな精神でよく生徒会に入ろうなんざ思えたな!」
A組生徒「今すぐにB組の牙王に謝って責任とってこい!」
突然の名指しに驚いた牙王白虎は咄嗟に隠れてしまった
蒼天朱雀「…もしかして…」
牙王白虎「充は俺に何もしてない!!!」
一度は隠れてしまったもののもう一度顔を出し、クラス全員に聞こえるように牙王白虎は言った
A組生徒「お前にカッター投げたのこいつなんだぞ!」
A組生徒「怒ってもいいんだぞ!!」
A組生徒は牙王白虎にそう言って久世充に責任を取らせようとしていた
牙王白虎「どこにそんな証拠が!!」
A組生徒「じゃあそのカッターの名前なんて書いてたか覚えてるか?」
牙王白虎「…」
牙王白虎はそのカッターをティッシュに何重にもくるんでカバンの中に入れていたためそれを取りだし、確認した
牙王白虎「久世充…」
A組生徒「ほらな!」
A組生徒「もし故意だとしてもカッターを持ち歩いているなんておかしい!やはりわざとだ!!」
A組生徒は次々と久世充を責め立てる
蒼天朱雀「ちょっと待って!本当に充くんは何もしてない!!」
牙王白虎「そうだ!だって投げた瞬間充は俺の視界のどこにもいなかった!」
2人は必死に久世充を守ろうとした
牙王白虎「充はそんな卑怯なことしない!!だって充は卑怯なことが大嫌いだからだ!!!」
そんな二人を見て久世充は目から涙が溢れていた
蒼天朱雀「被害者が違うって言ってるのにまだ第三者が言うつもり?!」
A組生徒「…確かに…」
蒼天朱雀の言葉に思わずA組生徒は戸惑った
これ以上言ってはいけないと思ったのかしていきなり静かになりだした
牙王白虎「分かったら充に謝れ!」
被害者の牙王白虎がそう言った瞬間に先程まで罵声を浴びせていた生徒たちは久世充の周りに集まって
A組生徒「ごめん…俺らが色々もの言える立場じゃないのに」
A組生徒「俺もごめん」
蒼天朱雀「カッターが充くんのものだったとしても誰かが充くんに罪をなすりつけようとして投げたのよね」
牙王白虎「あぁ。それを今から探しに行こうぜ」
2人がA組から離れようとした瞬間
久世充「あ!あの!」
2人を久世充が呼び止めた
久世充「あ…ありがとう…本当に色々…」
牙王白虎「いいってことよ。…じゃ、これ返しとくわ」
牙王白虎はそう言ってカッターを久世充に返した
牙王白虎「お前に罪なすりつけようとしたやつ、絶対見つけてやるからな。」