高諸④春の風が制服の裾を揺らし、桜の花びらが廊下に舞い込む放課後。
誰もが憧れの眼差しで見つめるその人物――高坂。
整った顔立ち、きりりとした瞳、凛とした立ち居振る舞い。すべてがまるで芸術作品のようだった。
近寄りがたい。話しかけるなんて無理。
生徒たちは口をそろえてそう言う。
そんな中、ふわふわのポニーテールを揺らして現れた一人の少女。
「高坂さん!」
明るい声とともに、高坂の隣にぴたりと立つその姿に、廊下の空気が一瞬止まった。
「…尊。今日も可愛いわね。そんなに笑って、どうしたの?」
「えへへ、高坂さんが隣にいるだけで、嬉しくなっちゃうんですもん」
高坂は、ほんの少し口角を上げて応じた。
その瞬間、周囲の視線が一気にざわめいた。
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