君との恋路の歩き方②ディープキス編あの日からふたりきりになるとハグをして、触れるだけのキスをするようになった。ゆっくりでいいからと言ったからには、そのことは守るようにしているが、黒羽にとってはこれだけでも十分夢見心地だ。振られても友達として傍にいたかったから、頑張って気持ちを封じるつもりだった。工藤が掴んだ手を振り解かなくて良かったと思う。あのとき工藤が考えをまとめるのを待った自分を褒めたい。だから今も、焦らず少しずつ好きが形をなしてくれればそれで良いんだと思える。
否、…思っていた。
ちゅ、ちゅと音を立ててキスをしていると、ふと工藤が目を開いて少し戸惑った顔をして、もう一度目を閉じて唇を寄せてきた。なんだろ、と、黒羽が思った瞬間、ぺろり、と唇を舐められた。思わず目を見開いて自分の唇を指で抑える。
「ん?んん??くどーさん???」「…恋人のキスは舌を使うんだって…調べたら出てきた…」「何調べてんの?!」「…嫌だったか?」
やらかしただろうか、と困惑気味の工藤、混乱中の黒羽。「いや、じゃない、めっちゃくちゃ嬉しいけど…だ、大丈夫?工藤、無理してない?」「ん?無理なんてしてね一よ。やり方がいまいちわかんなくてさ、とりあえず舐めちゃったけど」
発狂しそうである。
とりあえず?舐めちゃった???マジでなんだ今日は、天変地異、いや、連続殺人の前触れか。
ふと思う。初キスも、工藤からされたのだ。
ディープキスのお誘いも工藤からになってしまった。
(いやいやだって、こんなに早くことが進むと思わねえじゃん…!)どうしよう、間違えたかなと工藤は困惑している、頑張ってくれたんだ。愛しくて仕方がなくなる。ぎゅうと抱きしめて、ありがとな、と黒羽は工藤の頬にキスをする。
「少しだけ、口を開けて。オレが舌入れるから、まず舐められて…?慣れてきたら俺の動き真似してくれたら嬉しい」「おう……オメー経験あんの…?」なんっっっでそこでちょっとしょぼんとするんだ?!黒羽は可愛すぎる恋人に頭を抱える。
「ないよ、工藤としたくて知識だけあんの。やってみねぇとオレもわかんねーから」「…そっか」
今度は嬉しそうである。てれっとしてる。可愛い。ゆっくり好きを自覚してってくれ、なんて言ってもクエスチョンマークをつけまくった返事だったのにこの変化はなんだろう。でも今はとりあえず、可愛い恋人がほんの少し口を開けて待っているので、深いキスを楽しむことにした。