【ゼン蛍】それは嫉妬か、それとも カーヴェが家に戻ると、既に陽が落ち始めている時間だというのに明かりが灯されていなかった。この家の主は今日一日家にいると聞いていたのだが出かけてしまったのだろうか。
まぁどちらでも鍵を持っている自分には関係がない。居ないなら居ないで静かに模型作りに精が出るものだ。と、勝手知ったるなんとやらで鍵を開けようとして、鍵がかかっていないことに気付く。不用心だなと思いつつ中に入ると、玄関からすぐの右手のソファに家主――アルハイゼンの姿を見つけた。外から見た通り明かりもつけず、しかし黙々と手にした本を読み進めているようだ。
確かにまだ読めない暗さではないが、集中しているからと言ってもこれはいただけない。スイッチに手を伸ばしながら小言を言ってやる。
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