渚のあの子燦々と照りつけてくる日差しを手を翳して遮る。日番谷は氷の使い手だけあって暑さが苦手だ。出来ることなら潮の香りのする砂浜を立ち去って空気の冷えた室内へ移りたいと思う。思うけれどそれだけだ。一人だったならそもそもこんなところには来なかっただろう。けれど、一人ではないから日陰でもないこの場所で準備を終えるのを待っている。額から流れる汗を翳した手で拭っていると、呼びかける声が聞こえた。
「日番谷くん!」
声の方へ頭を向けると、お待たせーと帽子を手で押さえながら雛森が駆け寄ってくる。
海にきたのだからその姿は水着だった。白とオレンジという配色で、腕や腹や脚の健康的な肌が惜しげもなく晒されている。普段は肌を晒すことない着物を着ているから、見慣れぬ姿に時が止まった。
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