「自然体のお前が一番好きだよ」コンコン。深夜にシスの部屋の扉が鳴った。その気配が愛しい人のそれと知ったシスは「開いてるぞ」と答える。「こんばんは。遅くにごめんね」遠慮がちに言いつつ、ジータは室内に入ってくる。……え?シスの目に映る彼女は、いつもの動きやすい戦闘服ではなく、かっちりした濃紺のスーツに身を包んでいた。「何があった…?」
「団長らしく見えるにはこっちの方がいいかなって。けど自分だけの判断じゃ不安だし、シスの意見を訊きたいの」
なるほどそうか。タイトな形は、ジータのスタイルの良さをストレートに見せてくる。ふわりとした戦闘服では気付きにくかった細いウエスト、形の良い胸。目のやり場に困ってしまう。
──それよりも。
若い男性も多いこの騎空団無いをジータがこの格好で闊歩するとなると…シスは24時間隠れながら彼女に危険が及ばないか見守り役になるのは必須だ。そのくらい…色っぽい。
最悪なのは本人にその自覚がない事だ。「俺はいつもの服装が良いと思う」目を丸くするジータ。「自然体のお前が一番好きだ。それに…」
瞬きの間に詰め寄り、ゼロ距離で華奢な首に手刀を当てる。
「その服だと急襲に間に合わない。いつも俺が駆けつけられるとは限らん」
そうなのかと、解放されたジータは小さく頷いた。
「ありがとう。凄く参考になった。明日からは普段の服に戻すね」
そのまま踵を返し、部屋を出ようとする肩を掴む。
「待て。こんな遅くに一人で寝室へ帰るのか?」
「そうだけど?」
「俺の話をちゃんと聴いていたのか?」
その途中の危険を考えると頭痛がしてきた。修羅場をくぐってきたジータなのに異性に関しての知識は少ない。
「……今夜はここに泊めてやる。明日早朝に戻れ」
「シスありがとう!」
堅苦しいスーツを脱ぎ、羽織ったシスのパジャマはぶかぶか。だが本人はそんなの気にせずベットに滑り込む。
……深夜に恋人とはいえ、異性の部屋に来るのがどういう意味を持つのか。これからゆっくりジータに教えないといけないな。
ため息一つつくと、秒で寝たジータを起こさないよう、ソロリと横に身体を入れ込む。
(おやすみ。俺の可愛い恋人)
二人の恋愛経験値はまだ最初の一歩。