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    Mitsuru

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    Mitsuru

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    原稿の進捗

    #薫零
    Kaoru♥︎Rei

    怪盗薫×零(※零女装注意) 羽風薫の正体は裏社会で名の知られた怪盗だ。通称はコランダム。コランダムとは宝石の一種である。彼が華やかで輝かしい存在であることから、いつの頃かそう呼ばれるようになった。というのも、怪盗コランダムが狙うものは、表に出せない金やお宝だけである。盗まれた方は盗まれたことすら大っぴらにできぬような、悪事によって得たものを盗まれるということだ。よって、表沙汰にはならないし、警察が彼を追うこともない。
     羽風薫はけして尻尾を掴ませなかった。盗みの手口も実にスマートだ。どれほど強固に守られた場所であっても、どこからとも無く風のように現れ、お宝を奪っていく。そしてその華麗な身のこなしに呆気に取られているうちに風のように去っていく。悪党が束になってかかろうと、その身一つでひらり、ひらり、とかわして姿を眩ませてしまうのだ。それをやってのけるのも彼が事前にありとあらゆるシステムをハッキングにより止めてしまっているからであって、並外れた身体能力に加えて、相当頭も切れるに違いなかった。
     怪盗コランダムの昼間の姿は誰も知らない。普通のサラリーマンだとか、いやはや金持ちの大学生だとか、元はマフィアの構成員だったとか、様々な憶測が飛び交う。盗んだ金品は貧しい国に送金しているという噂もある。真相は誰も知らないのだ。裏の世界で輝く義賊の存在に、憧れる者も現れるようになった。
     そんな彼の雄一の欠点といえば、……女に甘いという点だ。これも裏社会でまことしやかに囁かれている噂である。


     サテン生地の黒いシャツを着崩して、今宵羽風薫は一軒のクラブに足を運んだ。この街には数え切れないほど似たようなクラブがたくさんある。中でもこの店はオーナーが女性ということもあり、女性客の割合が多い。加えて男性客は入店に条件がある。高額な会員費用を払っていること、そして言動は紳士的であり、容姿端麗であること。その基準はオーナーが入会時に審査する。もちろん羽風薫はその条件を満たしているからこそ入店を許されている訳で。
    「あ、薫! 薫がいる~!」
     甲高い声がフロアに響く。夜の住人達が集まるクラブだ。ここにいる人はお互いがお互いのことを誰も知らないし、深入りもしない。薫の姿を見るなり駆け寄ってくる彼女たちも夜の世界を生きる人間で、皆同じく一晩の娯楽と出会いを楽しみにここに来ているのだ。
    「みんな久しぶり~♪」
     軽薄な態度で言いながら薫がバーカウンターに腰掛けると、すぐに彼の両脇は女の子で埋まってしまった。肌の露出が多い派手な洋服に身を包んだ彼女たちは、薫の腕にぴったりと張り付いて、我先にと彼にアピールをする。
    「薫、久しぶりだね」
    「会えるなんてラッキー♡」
     羽風薫は怪盗である。そのことを彼女たちは知る由もない。華麗な怪盗の仮面の下は、甘いマスクをした好青年だ。襟足の長めな栗色の髪に、涼しげな榛色の瞳。精悍な眉の頭からすっと通った鼻筋も美しい。この容姿に、女性たちは虜になってしまうのだ。
    「みんな相変わらずかわいいね」
     そんな気障な台詞も喜ばれてしまうのは、彼がいつだって彼女たちに紳士的で、優しい性格をしているからだ。彼がこの容姿と甘い対応で、これまで何人の女子と関係を持ってきたか、薫自身も定かではない。
     薫は美しいものが好きだった。美しいものは手に入れて、存分に愛でて可愛がりたいのだ。それはお宝だけではない、女性だってその対象となり得る。綺麗な子はつい抱きしめて愛でたくなってしまう質なのだから仕方がない。
     薫は盗みの仕事を数か月に一度くらいの頻度で実行していた。小さな獲物は狙わない。主な相手はマフィアやギャング、大物の悪徳政治家といったところだ。一仕事を終えると、次のターゲットを考えながら気ままに暮らしている。中でもこうして女の子に囲まれている時間は最高の休息という訳だ。
     きゃあ、と弾む黄色い声に囲まれながら、しばし彼女たちとアルコールを楽しんでいると、ふと視線を感じる。薫は機微な空気の変化を感じ取って、カウンターの右側に顔を向けた。すると隣に座る茶髪の女の子といくつか席を空けた向こう側に、一人の女性が腰かけていた。ウェーブがかった黒いミディアムショートヘアーに、同じく黒いノースリーブのドレスを着ている。全身真っ黒だと思うより、その黒の輝きが白い肌を余計に際立たせていて、目を奪われてしまう。彼女は薫の視線を捉えると、そっと体を傾けて薫の方を向いた。胸元に輝くジュエリーが、店内のオレンジライトに反射してきらりと光る。彼女は印象的な赤い瞳でまっすぐ薫を見つめ、にこり、と控えめに微笑んだ。
    (うわ……)
     驚いたことに、振り向いたその容姿は声をかけるのも躊躇うほど美しい。
     こんなアピールをされて到底無視できるような女ではない。薫はあまりの衝撃に言葉も失い、両隣の女の子たちを振りほどくと、一人佇む黒い蝶の隣に座りなおした。「薫~」と失望した彼女たちの声は、薫の向かう先を見てすぐに大人しくなる。薫を射止めた彼女が、尻尾を巻いて逃げてしまいたくなるほどの美女だったからだ。
    「君……とっても綺麗だね」
     薫が持っていたグラスを傾けながら言うと、彼女はまた赤いルージュをひいた唇をにこりと微笑ませて、同じように薫に向かってカクテルのグラスを傾けた。
     先も述べたが羽風薫は美しいものに目がない。綺麗なものを見かけるとつい手が伸びてしまいそうになる。それはお宝も、人も。だから勿論、目の前に現れた宝石のように美しい彼女も、例外ではない。
    「ねぇ、二人きりで飲み直さない?」
     美しい顔を覗き込みながら早速口説くと、彼女は柔らかい微笑を浮かべたまま、こくりと頷いた。随分と大人しい女性だ。しかしそこも悪くない。
    「俺は薫。君は?」
    『レイ』
     彼女はそう名乗った。……手話で名乗ってみせたのだ。
     薫がすぐに手話を理解できたのは、彼がこれまで『仕事』でそれを使う場面があった故に会得した知識を持っていたからである。よって彼女とコミュニケーションを取ることになんら支障はなかった。こういう出会いも良いなぁと、好色男は思ったりする。
    「レイちゃんかぁ、君のこと気に入っちゃったかも」
     薫の言葉に彼女は長いまつ毛をパチリと瞬かせて、大きなルビー色の瞳でじっとこちらを見つめた。なんとも美しい、吸い込まれそうな瞳をしている。瞳だけはない、顔のパーツ全てが恐ろしい程に整っているのだ。
    『ついてきて』
     薫が手話でそう伝えると、彼女はぱっと嬉しそうに表情を弾ませ、手を引いて立ち上がる薫の手を握り返した。立ち上がると彼女は随分と長身だった。背筋も整ってすらりとしており、ファッションモデルのような出で立ちをしている。薫はますます彼女を気に入って、さっそく自分の根城へと連れて帰った。


     とある高級マンションの一室。ここは薫が抱えるいくつかのアジトの一つである。といっても、このアジトは薫が女を連れ込むためだけにわざわざ借りている部屋だ。もちろん、盗んだお宝はここには置いていないし、身元を特定されるものも何もない。仮に誰かに侵入されたとしたって何ら困らない部屋だ。
     薫はそこにレイを連れ込んだ。彼女はここに来る道すがらも、薫に寄り添いながら淑やかな笑顔でじっと薫を見つめていた。こんな美女に有り余るほどの好意を示されて、薫の気分は最高である。
    (ほんとに綺麗な子だな……)
     なかなかこんな女の子には出会えないだろう。まるで極上のお宝を目の前にしたかのような高揚感を抱えながら、薫は靴を脱ぐのも待たずに彼女を壁に押し付けた。唇を塞ぐと、彼女は大人しくそれを受け入れた。間近で見てもなんときめ細かな白肌か。角度を変えて何度も唇をこすり合わせながら、うなじから黒髪に手を差し込んでいく。さらさらと細い髪質は薫の指の間を流れながら、彼女の輪郭を露わにした。
    (赤いピアス……)
     薄っすらと瞼を開くと、大人しそうに見える彼女の耳朶に、挑発的な赤いルビーのピアスが刺さっているのが目に入った。
    「……いいにおいするね」
     そう言いながら耳朶に触れると、彼女はきゅっと目を閉じてぞくぞくと肌を粟立たせた。これはいい。敏感な反応をする子は抱いていて楽しい。
    (かわいい~……最高かも)
     薫は逸る気持ちを抑えて、ゆっくりと体を離し、彼女を見つめる。
    「シャワー浴びる?」
     その問いかけに、彼女は静かに頷いた。


     そうして薫は、美しいレイという女性と夢のような時間を過ごせるはずだった。リビングに設置した大きなコの字型のソファで寛ぎながら、彼女がシャワーを終えるのを今か今かと待っていた。バスルームから出てきた彼女を、もうこの場で抱いてしまおう。綺麗なものを手に入れる瞬間はどうしてこうも胸が躍るのか。


    (続く)


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    Replies from the creator

    Mitsuru

    PROGRESS前後繋がりなし
    原稿の進捗②「零くん? いるんでしょ?」
     薫は数日ぶりに件のマンションにやって来た。今日は女の子を連れてはいない。素直に零に会うためにやって来た。「会いに来るから」と約束をした。今日がようやくその再会の日に相応しいのだ。
     部屋の明かりがついていたから零が中にいるのだろうと踏んでいたのだが、リビングルームに彼の姿は見当たらない。薫が様子を伺うように辺りを見渡していると、背後からひたりと静かに人の足音がした。
    「わっ、……びっくりした」
     気配に振り向いた薫は咄嗟に息を呑む。そこには零が立っていた。濡れた素肌にバスローブを纏わせ、やおら立ち尽くしている。
    「なんだ……シャワー浴びてたの?」
     バスローブから覗く零の長い脚や白い胸元は、当然ながら彼の素肌そのものを晒していたが、薫は見てはいけないものを前にしているような気持ちになった。初めて零と会った日もこうしてシャワーを終えた零と対峙したことを思い出す。あの時は動揺のあまりに気付いていなかったが、衣服の下に隠されている彼の素肌はなんと清らかな色気に溢れていることか。まるで誰にも踏み荒らされた事のない、積もりたての真雪のようだ。
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