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    gekiosu_ornn

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    gekiosu_ornn

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    戦闘シーン書けませんでした土下座。不完全燃焼で本当に土下座。

    ユウマグレ忍軍現る「いやぁ、助かったよ白羽丸!」
    「ううんこちらこそ。図書委員会からの申し出凄く助かったよ」

    ━━━━━町外れを歩く姿を確認、影は複数、幼い子供が殆どでしょう。少し背丈のある子供も居ます……如何致しますか?
    ━━━━━まだ様子を見ろ。
    ━━━━━御意。

    夕暮れ時、複数の子供達が荷物を抱え歩いていた。忍術学園の生徒達だ。長期休みがそろそろ終わる今日、図書委員会六年の弦一郎は保健委員会六年の白羽丸にある話を持ちかけた。それはお互いの委員会は予算が少ないが図書委員会は薬草等の医学書を購入する予定なので、保健委員会には期限無しで貸出出来るようにするから折半しないかというものだった。保健委員会としても医学に関する書物は下級生の育成の為にも欲しいと白羽丸がそれを了承し、今日こうして皆で買いに来ていたのだ。ついでに弦一郎が図書委員会の面々……特に五年の玄善がよく保健委員会にお世話になっているからと必要な包帯等の買い物も折半してくれた。保健委員会としては今日程幸運な日は無い。玄善はちょっと納得のいかない顔をしていた。

    「ごめんね、包帯とかも…」
    「なぁに気にするな!私達も使わしてもらってるからな!」
    「ふふ、でもいっぱい買っちゃったからあんまり折半した意味無かったかもね」
    「それも気にしない方がいいな!」
    「気持ちの問題ですよ、先輩方」

    弦一郎と白羽丸にそう声を掛けたのは書物を抱えている保健委員会四年の銀丸だ。彼はこれも修行ですね、と率先して重い書物を持ってくれている。皆で協力して物事を解決する……お金が少ないのを折半してやりくりする。これは良い事ですと微笑んでいた。

    「助け合いって事ですよぉ」

    そう言って声を掛けたのは同じく保健委員会五年の櫛田だ。彼は包帯等を持っている。まぁ、図書委員会は櫛田の幸運のお陰で運良く書物を安く購入出来たので良い事しかないのだが。包帯等の出費を足しても、図書委員会のみで書物を買いに行く金額より多少は少なく済んだだろう。弦一郎は前方を歩く者達に声を掛ける。

    「おぉい!あんまり離れるなよ!」
    「はっ、はぁい」
    「分かりましたー!」

    図書委員会一年の茶吉と二年の錦が返事をした。保健委員会六年の武義輔が茶吉の手を握っている。眠そうにしている保健委員会二年の飛龍の手を錦が握っていた。その四人に着いて歩いている図書委員会一年の竜之介が手を振って返し、三年の梅之助が弦一郎の方を振り向き小さく頷いていた。保健委員会五年の千景がおどおどしつつもそれに着いて歩いている。

    ━━━━━━ふと、図書委員会六年の靖が弦一郎の手を引いた。なんだ、と弦一郎達は立ち止まる。靖は森の奥をじっと見つめていた。面倒くさそうに後ろを歩いていた図書委員会六年の睡蓮も同様に森の奥を見つめ、懐に手を忍ばせていた。

    「……誰か居る」
    「複数居るな…」
    「学園の奴らか?」
    「いや、分からない。でも分からないって事は危ない人達だ」
    「急いで戻った方が良いかもね」
    「その様ですね」

    白羽丸と銀丸が頷く。茶吉達にも声を掛けようとすると、背後に人が現れた。振り向くと黒い忍び装束の男達が五人。慌てて茶吉達の方を見ればそちらにも三人。武義輔が懐から忍刀を取り出している。五人の内の一人が声を掛けてきた。

    「やぁ忍術学園の良い子達。おじさん達は何も怪しくないよぉ。ちょっと一緒に来て欲しいんだよね、良いかい?」
    「「め、めちゃくちゃ怪しい人来たー!!」」

    弦一郎と白羽丸がうわーーー!と声を上げ、靖と睡蓮が苦無を構える。全員が直ぐに動ける様に身構えると、睡蓮が銀丸に小声で話し掛ける。

    ━━━━━銀丸、おまん走れるか?
    ━━━━━はい。
    ━━━━━持ってるのを玄善に渡して即学園に向かって走り出せ。振り向くな。先生方にこの事を伝えろ、ええな?
    ━━━━━畏まりました。

    銀丸が書物を玄善に投げ付けるように渡し、駆け出した。突然の事に前方に居た敵忍は反応が遅れる。しかし銀丸は本気で走れば追い付くのに苦労するくらい速い。兎に角足を動かして銀丸は学園へと駆け抜けた。三人の敵忍が追い掛けようとしたがそれを武義輔が道を塞ぐように動いた。

    「自分らも残ります、荷物お願いいたします!」
    「荷物お願いします。一年生と二年生と一緒に逃げてください!」
    「すまん!先行くぞ」
    「う、うんっ」

    櫛田と玄善の荷物を受け取り、弦一郎と白羽丸が駆け出した。櫛田と玄善、そして靖と睡蓮が苦無で敵忍達と戦う音が聞こえる。それを背に二人は茶吉達の元に向かい走るぞ!と声を掛けた。茶吉達が走れる様に武義輔と千景が三人の相手をしながら援護する。そのまま駆け抜ける。包帯がぽろぽろと落ちてしまうがそんな事気にして居られなかった。

    弦一郎は片手に荷物を持ち、もう片方の手で茶吉の手を握り走る。すると、茶吉がきゅっと一際強く握り返してきた。白羽丸が足を止める。弦一郎も足を止めた。荒い息を整えようにも、背後に二人、前方に三人…挟まれた。流石に下級生を守りながら戦えるような相手でも無さそうだった。

    「忍術学園の良い子達さぁ、そんな怖がらなくていいよ〜。ちょーっと、来てもらいたいだけだからさ」
    「……」
    「抵抗しないって事は来てもらえるって事でいい?」
    「この子達はダメだ、私だけにしろ」
    「それは無理な話だなぁ。人質は多い方がいい」

    途端、弦一郎達の体から力が抜けた。くそ、薬の類か…次第に瞳が重くなる。何とか目を開け、全員が居ることを確認すると、弦一郎も気を失った。


    ━━━━━━━━━━━━━━━



    すとっ、と人の影が木の上から降り立った。月霞は地面に転がっている包帯を拾い静かに辺りを見渡す。

    「……」

    既に忍術学園の生徒も敵忍も居ない。隣に着地した、同じく事務員の雷があっちゃ〜、と声を漏らした。

    「もう居ないッスね〜。一体どこの誰なんスかねぇ」
    「分かりません。しかし、狙われていたのが忍術学園の生徒…なのであれば、学園に喧嘩を売っていると見ていいでしょう。はぁ…お兄の手を煩わせる愚弟が…」
    「荷物持って一旦戻りッスか?」
    「私は周辺を探してから戻ります」
    「じゃ、オレも探すッス」
    「では向こう側を…私はこちらから見て回ります」
    「ウス!」



    ━━━━━━━━━━━━━━━


    ……ザッザッザッ、スパンッ!

    「月我先生、もっと静かに入室しなさい」
    「チッ…」
    「舌打ちしない」

    学園長室に忍術学園剣術師範の月我が入室する。彼は苛立ちを隠さずに戸を開き、どかりと空いている場所に座った。すぐそばに居た蛇ノ目がそれを優しく咎める。しかしまぁ、彼が苛立つのも無理は無い。学園長がコホン、と咳払いをした。各々が姿勢を正す。

    「先生方も知っている通り、何者かが学園の生徒達を誘拐した。誘拐されたのは図書委員会六年堀土錬弦一郎、三年如月梅之助、二年岩武雄錦、一年保良茶吉、一年月白竜之介。保健委員会六年月宮白羽丸、二年鳳凰丸飛龍」

    他、事務員が見つけた数人の生徒が睡眠薬か何かで眠らされて倒れているのを発見した。外傷は特に無し。誘拐した何者かの手掛かりも特に無かったと言う。当然目撃者等の情報も無い。学園長は五年生六年生で救出に向かわせようと考えていたが、相手が分からないのと誘拐された生徒がどうなっているか分からない以上、先生のみで救出に行く方が良いと判断した。その為に、今こうして先生を集めたのだ。

    「相手の戦力が分からない以上、こちらもある程度の戦力で救出に向かわなければならない。姫野先生、月我先生の剣術師範の二人と、治療が必要な場合を考え保健委員会顧問の薬屋先生を中心にあと三人程選出して出立してください。現在、事務員が現地で待機しています」
    「畏まりました」
    「………」
    「はーい」

    それでは解散、と各々が部屋を出ていく。姫野と月我と薬屋が他の先生に声を掛けた。主に姫野が選出した三人だ。

    「蛇ノ目先生、い組の生徒が居るのでご一緒して頂けませんか?」
    「勿論、同行させてください」
    「あと…鶚先生、時尾先生も、良いでしょうか?」
    「あぁ!」
    「構いませんが…何故私が?」
    「時尾先生はしっかりしていらっしゃるので、薬屋先生を制御出来るかと」
    「え、俺が駄目判定??」
    「……いぃからさっさと行くぞ」

    月我がそう言い、すたすたと廊下を歩いて行く。各々が荷物を用意し、学園から飛び出した。目指すは生徒達が誘拐された場所、そこに事務員が二人待機している。

    姫野達が現場に到着した。そこには事務員の月霞と雷が立っている。月霞は月我を見て一目散に走り出し抱き着いた。

    「お兄!」
    「月霞、今は構ってやれねぇ」
    「はい。状況を説明致します」

    月霞が月我から離れ先生方に説明を始めた。まず、周辺を調べたが目撃情報等は無し。手掛かりになる物を調べていた所、あるものが見つかったと言う。

    「血痕…?」
    「はい。少量ずつ葉や木等に着いていました」
    「誰かが怪我をしているって事ですね…」
    「いや、怪我をしているというより…わざと怪我をした…様に感じますね」

    蛇ノ目と時尾が考える。多分、六年生のどちらかが自ら傷を負いわざと血を垂らして道を示しているのだろう。そうなると、その六年生の体調が心配だ。月霞も同じ考えなのかこくりと頷くと、森の奥を指さした。

    「ここからずっと北に進んだ方向まで血痕は続いています。途中で途切れてしまっていますが、その先を調べてもらった所…」
    「廃城がありました!人影も見えたので恐らくそこに連れ去られたのかなと思うッス!」
    「ありがとうございます」

    姫野がそう言い、各々が走り出した。月霞が月我に触れる。月我は月霞を一度乱雑に撫でると、そのまま走って行ってしまった。



    ━━━━━━━━━━━━━━━



    ゆっくりと目を開く。薄暗い、少し肌寒い場所。弦一郎は身体を起こした。地面は整備されていないボコボコの土の塊だらけ、入ってる光は殆ど無く松明の光が淡く辺りを照らす。見渡せば、一年生達がすぐ傍で寝息を立てていた。目立った外傷は無い。安心した様に息を吐けば、おはようと声を掛けられた。顔を向けると薄暗い中でも分かる程顔色の悪い白羽丸の姿があった。

    「白羽丸!どうしたんだ!?」
    「しー…皆起きちゃう。まだ薬のせいで寝てるみたいだけど、皆は大丈夫そう」
    「白羽丸」
    「えっと…えへへ、こうする事しか浮かばなくて…」

    白羽丸は右手を隠す様にずらした。それを掴み、光の当たる所へ引っ張る。白羽丸の掌は肉が抉れ血が垂れていた。自ら噛みちぎったのだろう、傷口はまだ乾ききっていない。白羽丸を見れば、血痕を残したから、もしかしたら見つけてもらえるかも。と小さく答えた。

    「あ、でも大丈夫。ここそんなに遠くないよ。だって出血量がそんなに多くないから…!」
    「保健委員が自ら怪我をしてどうする。貸せ、取り敢えず私の持っている水で消毒しよう」
    「でも…」
    「私だって応急処置くらいできる」

    弦一郎が懐から水を取り出し、それをびしゃびしゃと白羽丸の傷口に掛ける。痛そうに白羽丸が顔を歪めるがお構い無しに手当をした。手拭いを割いて包帯代わりにし、白羽丸の手を手当する。どうやら白羽丸は薬の耐性があったからか早くに目が覚め、兎に角痕跡を残さなければと行動したらしい。

    「その行動力に感服するよ」
    「これしか浮かばなくて…」
    「墨汁でも良かったんじゃないか?」
    「確かに」
    「まぁ、お陰で助かる可能性が出たから、白羽丸には頭が上がらんな。よし、取り敢えずこんなものだろう。暫くは手が使えないから気をつけろよ」
    「うん、ありがとう」

    しかし、と弦一郎が立ち上がった。随分古い場所のようだ。地下牢…だろうか、牢は頑張れば弦一郎でも壊せるかもしれない。それくらい脆くなっている。多分、あの人達の本拠地では無い。

    「おやぁ、起きたかい?おはようお寝坊さん」
    「……」
    「うん?君はもっと元気いっぱいな子だと思っていたんだけどなぁ…?」

    弦一郎が声の主の方へ近付く。薄暗い光が映したのは、顔の右側が酷く爛れ唇は引きつっている男だった。弦一郎の瞳が揺らぐ。年の離れた兄も同じく顔に火傷を負っていたが、目の前の彼の方が随分と…酷い。それを察したのか、男は牢に左手を突っ込み弦一郎の首を絞めた。

    「そういう、哀れみの目が、一番嫌いなんだよねぇ…!」
    「っ…私のっ、兄も…っ、火傷を、負っている…!」
    「だからなんだい?可哀想と?私がいつ、君に、哀れんでくれと、同情してくれと、頼んだのかなぁ?」
    「ぐっ、ぅ…!」
    「弦一郎っ!」
    「おいおい、あんまり虐めるなよぉ?」

    男の背後から声が聞こえた。その声を聞き男は手を離す。げほっ、と弦一郎が噎せている間、もう一人の声の主が姿を現した。組頭、と男が零す。

    「あんまり虐めっと面白くなくなっちまうじゃん?」
    「はぁ…組頭も悪い人ですよねぇ。こんなか弱い子供を人質にすると言うんですから…首なんて、片手でへし折ってしまいそうでしたよ」
    「別に子供にゃ期待してねぇよ。俺が楽しみなのはこの後」

    組頭、と呼ばれた男は弦一郎達を見てにやりと笑った。

    「やぁやぁ忍術学園の良い子達。俺はユウマグレ忍軍組頭、鴻鳥壱刃だ。こいつは部下の柳田」
    「……」
    「あ、ここ結構ボロいんだよ。だからさ、脱走したければしてもいいぜ。…ま、脱走した場合の命の保証はしねぇけどさ」

    いや待てよ?その方が面白いな?なんて壱刃は呟く。何が目的なのか分からない。弦一郎が睨むと、けらりと壱刃は笑った。柳田は既に興味を無くしたのか背を向けている。出たきゃ出な、と鍵が放り込まれた。牢の鍵だ。

    「良いねぇ、必死に助けようとしたのに、そいつらは既に死んでた。可哀想に…めっちゃ面白いじゃん!それで行こう!」
    「組頭は趣味が悪いねぇ」
    「まぁ、安心しなよ。最高の舞台で殺してやるからさ。小さい子を嬲り殺す趣味は無いんでな。勿論脱走しないってのも手だぜ?俺は気にしない。結果は同じだろうしさ」

    じゃあな〜、と壱刃は柳田を連れて出ていった。弦一郎が鍵を握り締める。白羽丸が声を掛けた。駄目だよ、と。相手の思う壷だよ、どんな罠があるか分からない。ここで大人しくしている方が、下級生の為にもなる。しかし弦一郎は首を緩く振った。

    「このままここに居ても助かる可能性は低いし、もし靖達が捕まってたらどうする?あいつらを助けないと」
    「捕まってるか分からないよ。捕まってたらここに入れられてる筈だよ」
    「白羽丸…私達がここに居るのはあの時一緒に逃げていたから…そして、私達が下級生に見えたからだ。だから彼奴らは何もして来なかった。靖達には攻撃をしていたから、多分…私達の事、勘違いしてる」

    だから脱走しても何とかなる可能性がある。そう言うも、満足に動けるのは弦一郎だけだ。白羽丸は手を怪我しているから下級生を守る事で精一杯だろう。弦一郎が、体格の小さい弦一郎が、大人を相手にしなければならない。それでも弦一郎は大丈夫だ!と笑った。

    「私は案外やる男なんだぞ!」
    「…ふふ、知ってる」

    弦一郎が牢の鍵を開けた。白羽丸が下級生の肩に手を置く。本当にこれでいいのだろうか。でも、これが最善な気もする。

    「よし、皆起きたか?行くぞ!」




    ━━━━━━━━━━━━━━━



    「良いですか月我先生、ちゃんと復唱してください」
    「はい」
    「一人で突っ込まない」
    「一人で突っ込まない」
    「他の先生と息を合わせる」
    「他の先生と息を合わせる」
    「大声を出さない」
    「大声を出さない」
    「一年生の実習か何かか?」

    時尾と月我のやり取りに鶚が声を漏らす。まぁ仕方の無い事だった。月我は剣術師範ではあるが忍術に関しては生徒と同レベルと言っても過言では無い程知識が浅い。忍術を殆ど妹に学ばせてきていたからだろう。兎に角今回の潜入はいかに騒ぎを起こさず誘拐された生徒を見つけ出せるかが重要だった。

    「一先ず、月我先生は一人で行かないように……月我先生?」
    「あーっと、もう行っちまいましたねぇ」
    「何故止めないんですか薬屋先生!」
    「えぇ!?俺ですか!?」
    「そうですよ!同室なんだからちゃんと教育してください薬屋先生!」
    「月我先生はまだ未熟なんですよ!」
    「お、俺悪くないもんー!」

    鶚が駆け出した月我を追う。それに続くように時尾、姫野、蛇ノ目、薬屋が駆け出した。月我は走りながら刀を抜く。刃こぼれだらけのボロボロの刀だ。月我は廃城の塀に掴まりひょいっと軽々しく乗り越える。姫野がそれに続き刀を抜いて塀を乗り越えた。着地した先には待ち伏せしていたかのように黒い忍び装束の男達が複数人。姫野が刀を構えた。月我が駆け出す。流れる様にボロボロの刀を振り回した。男達がそれを避け忍刀で斬り掛かるが月我はそれを刀で受け止め男の腹に蹴りを入れる。すかさず他の男達が忍刀を振るった。今度はそれを姫野が受け止める。弾き返しすぐ様相手の腹を斬りつけた。姫野の背後から斬り掛かろうとした男を月我が蹴り飛ばす。

    そこからは月我と姫野の独壇場だった。斬り掛かろうとする男達をちぎっては投げちぎっては投げ、辺りが血の海になるのにそう時間がかからなかった。塀から四人が顔を覗かせる。薬屋はひぇぇ、と小さく悲鳴を上げた。それもそうだろう。月我はゲラゲラと笑いながら何人も切り刻んでいき、姫野は姫野で容赦無く切り刻んでいく。次第にお互いの目が開き動きが早くなっていく。気がつけば辺りには二人以外誰も立っていなかった。はっ、と姫野が正気を取り戻す。

    「しまった、やりすぎてしまった…」
    「?もう終わりかよ」

    姫野は血のついた刀をひゅんっと振るい血を落とすと鞘にしまった。月我はボロボロの刀を見てそのまましまう。まだ使えそうだ。月我が塀の方を見た。蛇ノ目と時尾が溜息をつく。

    「月我先生、あんまり無茶しては駄目ですよ」
    「一人で突っ込まないって言いましたよね?猿でも分かる事ですよ?何故数秒前の言いつけが出来ないんですか?」
    「…姫野先生も来ただろぉが」
    「おっと、喧嘩かな?買うぞ?」
    「もー!皆して言い合いしないで!ほら!さっさと行きますよ!」
    「次は俺の番だからな!」
    「順番とかないので!」

    薬屋が謎に疲れる羽目になった。
    さて、問題は何処を探すかだ。城内を見るのが一番なのはそうなのだが、こんなにも外で待ち伏せされていた事に違和感を覚える。先に城の周りを見て他に待ち伏せしている奴らを倒して行った方が良いかもしれない。ー面倒くせぇ、と月我が駆け出した。ちょっと!と姫野が追い掛ける。どんどん目の前に黒い忍び装束の男達が現れるが、月我は勢いを止めず切り刻んでいく。月我の取りこぼしを姫野が仕留めつつ、勝手に行かない!と叱っていた。月我と言う男は本当に協調性が皆無である。壁を蹴り、黒い忍び装束の男の背後に周り頭を鷲掴みにする。そのまま首を斬り、月我は笑っていた。

    「月我先生、あまり暴れないでください。相手に自分はここに居ると伝えているようなものです」
    「ははっ!良いね!楽しくなって来た!?」
    「聞いてないな…一発殴るか」
    「死なない程度にお願いしますね」
    「ちょっとちょっと!無駄に怪我人増やさないで!」



    ゴンッッッッ!と鈍い音が響いた。





    ━━━━━━━━━━━━━━━





    「弦一郎先輩、お一人で大丈夫ですか…?」
    「なぁに心配するな!ちょっと周りを見てくるだけだ!その間、白羽丸を頼むな」
    「は、はい…」
    「ありがとうな」

    錦の頭を撫で、弦一郎が駆け出した。地下牢を抜け出し辺りに誰かいないか探るも、人影らしきものは見つからなかった。安全を確認し、下級生達を呼ぶ。茶吉と竜之介は手を繋ぎ、未だ眠そうにしている飛龍の手を錦が引っ張っている。その後ろを白羽丸がついて行き、最後尾に梅之助だった。本来はこの順番で無い方がいいのだが、先に弦一郎が安全を確認してから動く為こうなった。怪我をしている白羽丸に最後尾を任せるのも申し訳ないので、下級生の中では最上級生の梅之助に頑張ってもらうしかない。と言っても、何かあれば白羽丸が即動くだろうから本当の最後尾は白羽丸のようなものなのだが。弦一郎は進む度に先に調べに行き下級生達を呼ぶ。しかし、驚く程に誰も居ないのだ。まるで自由に動いて良いですよと言っているかのように。

    「誰も居ないですね…」
    「あぁ。普通はこうならない筈だが…」
    「外が少し騒がしいね。もしかしてそっちに行ってるのかも?」
    「それはそれで好都合だ。早く抜け出そう。靖達も居ないようだしな」

    弦一郎が茶吉の手を握る。皆で静かに、でも素早く移動し外を目指した。壁に耳を当て、手で叩く。音の変わる場所があり、そこを押せば隠し通路があった。弦一郎が先に進み様子を見るが、やはりここにも人は居なかった。隠し通路を進んで行くと微かに風の通る感覚を捉える。何処か外と繋がっているのが分かった。壁を叩けば、ガゴンッ、と外へと繋がる扉が開いた。

    「よし、一旦待っておけよ」
    「は、はい」

    弦一郎が一度外に出た。目の前は比較的広い庭のような場所で、奥にある岩に男が座っていた。それはユウマグレ忍軍の組頭、壱刃だった。弦一郎を見つけると、壱刃はにっこりと笑って手を振った。やばい、と思っても遅い。弦一郎が出ようとする下級生を背に隠したまま通路に押しやる。壱刃の横に立っていた顔を半分布で隠している男が駆け出した。弦一郎は扉を塞ぐ様に立ち、そして

    「逃げろっ!」

    ━━━━━ザシュッ…

    「っ弦一郎!」

    白羽丸が目を見開く。弦一郎の胸から腹にかけて血が噴き出した。弦一郎がそのまま下級生達の方へ倒れる。それを白羽丸が受け止める。男は扉に手を掛け、こちらに片手を伸ばしてきた。ひっ、と誰かが息を飲む。このままじゃ、このままじゃ…!白羽丸が弦一郎を守るように抱き締め目を瞑ると、ドゴォン!と言う音。

    「っっっっっしゃオラァ!!!!!!」

    豪快な声が響く。それと共に暖かい何かに包まれた。目を開けると、目の前の蛇と目が合う。蛇…そして、自分を抱き締めている人物と目が合った。目から涙が零れる。

    「じゃのめせんせ…!」
    「もう大丈夫だよ、よく頑張ったね」
    「じゃのめせんせいー!」
    「うわぁぁあん!!」

    下級生達が蛇ノ目に抱き着いた。すると白羽丸の肩を引っ張る人物が。白羽丸がそちらを見れば薬屋が弦一郎と白羽丸の隣に来ていた。

    「弦一郎くんの手当するよ!」
    「は、はいっ!」

    扉の方を見れば鶚が拳を作って仁王立ちしている。先程の男を殴り飛ばしたのだろう。白羽丸はボロボロと零れる涙を雑に拭うと、薬屋と一緒に弦一郎の応急処置を始めた。

    「おー、めっちゃ面白い展開じゃん」

    ユウマグレ忍軍の組頭、壱刃がそう良い手を叩いた。完全に、面白がっている。そんな壱刃に閃光の速さで月我が迫る。キィンッ、月我の振るった刀を別の男が自身の刀で受け止めた。顔に傷のある男だ。よく見れば、いやよく見なくても、壱刃にそっくりである。壱刃は特に驚いた様子もなく笑っていた。

    「弐伊助〜!やっぱお前は出来る子だなぁ!」
    「兄貴…邪魔…月我…俺…殺……」
    「よしよし存分に楽しめよ。それに比べてどうした参樹!簡単に殴り飛ばされちゃダメだろ〜?」
    「悪い兄貴っ!」
    「俺の弟はそんな弱くねぇよなぁ?」

    壱刃が殴られた男を見やる。参樹と呼ばれた男は立ち上がると、自分を殴った男を睨みつけた。視線の先には鶚が居る。鶚は苦無を取り出して駆け出した。参樹は忍刀を持ち直し振り下ろすも鶚の苦無で弾かれてしまった。そのまま鶚の蹴りが入る。参樹は後方に飛び退き体制を整えまた駆け出した。鶚の懐に滑り込み、身体を回転させる。鶚の背後を取り忍刀を突き刺そうとするも、鶚が腕を後ろに振りかぶった事により不発に終わった。再度距離を取り駆け出す。この男、体格が大きい癖に俊敏な動きをするから厄介だ、と参樹が舌打ちした。鶚が拳を振り下ろす。それを避け飛び上がり上から忍刀を鶚の肩に突き刺した。鶚が唸る。参樹は忍刀を抜き鶚から距離を取ろうとした。しかし鶚が参樹が退ける前に忍び装束を掴みぶん投げた。地面に叩きつけられ参樹の息が詰まる。目の前には血塗れの拳。顔を横にずらし直撃を逃れるが地面が割れた。人間業じゃねぇだろ、と内心思いつつ下半身を持ち上げ鶚の首に足を回した。

    「オラァ!!」
    「っ…!」

    勢いを付けて足を下ろし鶚を放り投げる。体制を崩した鶚が今度は地面に叩きつけられた。参樹は即座に立ち上がり忍刀を持ち直し鶚に突きつけた。


    月我は目の前の男、弐伊助と対峙していた。弐伊助は刀を構え駆け出した。月我はボロボロの刀で迎え撃つ。弐伊助の振り下ろした刀を避け回し蹴りを入れるが、弐伊助はそれを後ろに飛び退け避ける。すかさず月我は距離を詰め、ボロボロの刀を下から上に振り上げた。弐伊助が仰け反る。月我はその勢いのまま刀を手放し、右手から左手に持ち替え今度は逆に振り下ろした。今度は避けきれず弐伊助は自身の刀で受け止めるしかなかった。弐伊助の動きが一瞬止まった隙に月我が回し蹴りで弐伊助を蹴り飛ばした。弐伊助は身体を回転し着地する。駆け出し、刀を振るった。月我がそれを避けると刀を持っていない手で拳を作りぶん殴った。弐伊助の顔面に直撃する。よろける弐伊助に月我が刀を振り下ろした。


    下級生を抱き締める蛇ノ目、そして弦一郎の応急処置をしている薬屋達の前にまた影が現れる。それは柳田だった。柳田は自由に使える左手で短刀を持っている。扉の中に乗り込もうとし……目の前に飛んできた物体を避ける為立ち止まった。物体は地面に穴を開ける程の威力で落ち、そして繋がっている縄が引かれ物体は持ち主の元に戻って行った。柳田がそちらを見遣る。時尾は先程の武器、流星錘を構える。縄鏢の様な武器だが、先についている錘に当たればひとたまりも無い。

    「へぇ…貴方も戦うんですねぇ」
    「私も本当は戦いたくないんですけどね……まぁ、今日は先程鶚先生に肩揉んでもらったので、幾分か楽に動けそうです」
    「……随分余裕なんですねぇ…」

    柳田が駆け出した。普段からは想像もつかない程軽やかに時尾が避けて流星錘を振り回した。当たらないように柳田が避けてまた飛び掛る。しかし流星で上手いこと距離を取られてしまい苦戦していた。厄介だねぇ、と柳田が零す。


    各々の戦っている所を見て、壱刃はほぉ…と声を漏らした。思った以上に忍術学園の教師軍はやるようだ。そろそろ俺も参加しようかな、と立ち上がる。そして先程から自分に向け刀を構えている人物を見た。姫野は刀を向けたまま静かに壱刃を見つめる。今変に動けば命取りになると分かっていたからだった。

    「ごめんねぇ俺ん所の弟がさ、月我をどうしても殺りたいって言うんだ。つうわけで、綺麗なお姉さんは俺とやろっか?」
    「私は男だが?」
    「えっそうなの?うーん、まぁ綺麗だからいっかな!」
    「は?」
    「その方が面白いし!」

    壱刃はけらりと笑うと刀を抜いた。ほら来いよ、と姫野を見つめる。

    「来ないの?来ないなら俺から行っちゃうよ……っと!」
    「くっ…!」

    壱刃は姿勢を低くし駆け出した。下から刀を振り上げるが、姫野がそれを自身の刀で受け止める。壱刃は姿勢を低くしたまま足払いをし、姫野が体制を崩した。もういっちょ、と壱刃は刀を振り上げるが姫野は地面に手を付き蹴り上げた。壱刃が避ける為に仰け反る。姫野は着地し刀を振るうが、壱刃は軽々とそれを避けた。姫野が刀を振るう。壱刃がそれを受け流し、避け、跳ね返す。姫野の猛攻を、まるで様子見をしているかの様に壱刃は避け続けた。しかし姫野は猛攻を止めない。姫野が刀を振り上げた。キィンッ、と壱刃の持っていた刀が宙を舞う。あれ、と壱刃が声を漏らした。姫野が即座に刀を横一線に薙ぐ。壱刃は避けきれず、腹が微かに斬られた。血が垂れる。は?と壱刃が腹を触った。痛い、何故?何故痛い?

    「はぁぁぁあ!?マジかよ!俺久々に切られたんだけど!くはは!めっちゃ面白ぇ!!」
    「斬られて笑うなんて、狂っているな…」
    「っ兄貴!」
    「っ!」

    姫野の前に手裏剣が飛んでくる。飛び退けそれを避けると、姫野と壱刃の間に参樹が立っていた。忍刀を構えている。

    「兄貴、兄貴大丈夫か!?」
    「ははは……はぁーー……?参樹……?」
    「良かったあに…」

    ドゴォッ!参樹が蹴り飛ばされた。壱刃がゆらりと揺れながら参樹を見詰める。姫野はそれをただ見つめる事しか出来なかった。

    「なぁ、なぁ参樹。お前何俺の前に立ってんの?お前の相手ってこいつだっけ?お前が殺るべき相手ってこっちに居たっけ?何様?俺がいつお前にここに来いって言った?」
    「がはっ、はっ……あ、兄貴…?あ、っ…その、ごめんなさい……」

    参樹が震えながら起き上がる。すぅぅぅぅ……と壱刃が息を吸った。そして深く深く吐く。壱刃は参樹の元に来ると、ポンッと頭を撫でた。

    「…………そうだよなぁ!お前は弟としてお兄ちゃんを助けようとしてくれたんだよなぁ!ありがとなぁ参樹!よしよし!蹴って悪かったな!」
    「い、いや……良いんだ、兄貴……無事で良かった」
    「あははっ!腹斬られたけどね!」

    狂ってる。この男相当狂ってる。姫野が刀を握り締めた。狂ってる奴が一番厄介なのだ。

    「うんうん……まぁこんなものかな」

    ぱっ、と壱刃が手を叩く。終了〜!とのんびりとした声で告げた。すると、先程まで戦っていたユウマグレ忍軍の者達が壱刃の元に集まる。壱刃は廃城の塀に飛び乗ると、くるりと姫野達の方を向いた。

    「楽しかったぜぇ忍術学園の先生方っ!また機会があれば是非遊んで頂きたい」
    「何を……言っているんだ……?」
    「いやぁ、うちの主がさぁ、最近ようやく重い腰を上げた訳でさ。甘ったれてるうちの部下達に喝入れる為に今回こうして忍術学園の皆様方に協力頂いたって事よ」
    「協力……?こちらは生徒が危ない目にあったのだが?」
    「だってそれくらいしないと本気出してくれないじゃん?それに、今回俺の部下も結構やられてるし?俺も腹斬られたし?お互い様じゃん?」

    まぁ、この程度で殺られる部下なら最初から要らないんだけどね。壱刃は笑った。それはそれは楽しそうに。くるくると塀の上で回っている。腹から血を流しているというのに、彼は心の底から楽しそうにしていた。弐伊助や参樹、柳田はそれを見て塀から外に降りて行った。壱刃が止まる。

    「ま、これからよろしくねんっ、忍術学園の皆々様方」

    それじゃ!と壱刃は倒れる様に塀から外に降り立った。姫野が塀に飛び乗り下を見るが、既にそこには壱刃達の姿は無かった。





    ━━━━━━━━━━━━━━━


    「へぇ〜、先輩方も先生方も凄い大変だったんだなぁ」
    「そりゃ暫く自習になるよねぇ」
    「ぐぅ…」
    「怖いよなぁ。ユウマグレ忍軍…かぁ…」
    「また現れたりするのかね?」

    忍術学園の五年生達は数日前に起こった出来事の話をしていた。お使いから学園に戻る途中だからか少し気が緩んでいる。嘉右衛門や真の会話を聞きながら、歩きながら寝るという器用な根住を大和が押して歩いて、その隣を玄善が歩いている。そしてその後ろを宗一郎と卯佐擬が歩いていた。ふと、卯佐擬が宗一郎の裾を引っ張る。何?と宗一郎が振り向けば、卯佐擬が後方を指さしていた。見ると、笠を被った男性の少し後ろに小袋が落ちていた。宗一郎が駆け寄り、それを拾う。

    「すみません」

    宗一郎が声を掛けると、笠を被った男性が振り向いた。

    「これ、落としましたよ」
    「…あぁ、どうも」
    「いいえ」

    宗一郎は微笑むと、先を歩いていた面子に追いつく為歩き出した。各々が忍術学園の門をくぐって行く。

    「なぁ、宗一郎も怖いと思わねぇ?」
    「うん?」
    「ユウマグレ忍軍」
    「あぁ……うん、怖いなって思うよ」

    男性が忍術学園を見詰めていた事を、宗一郎達は知らない。




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    Replies from the creator

    gekiosu_ornn

    MOURNING戦闘シーン書けませんでした土下座。不完全燃焼で本当に土下座。
    ユウマグレ忍軍現る「いやぁ、助かったよ白羽丸!」
    「ううんこちらこそ。図書委員会からの申し出凄く助かったよ」

    ━━━━━町外れを歩く姿を確認、影は複数、幼い子供が殆どでしょう。少し背丈のある子供も居ます……如何致しますか?
    ━━━━━まだ様子を見ろ。
    ━━━━━御意。

    夕暮れ時、複数の子供達が荷物を抱え歩いていた。忍術学園の生徒達だ。長期休みがそろそろ終わる今日、図書委員会六年の弦一郎は保健委員会六年の白羽丸にある話を持ちかけた。それはお互いの委員会は予算が少ないが図書委員会は薬草等の医学書を購入する予定なので、保健委員会には期限無しで貸出出来るようにするから折半しないかというものだった。保健委員会としても医学に関する書物は下級生の育成の為にも欲しいと白羽丸がそれを了承し、今日こうして皆で買いに来ていたのだ。ついでに弦一郎が図書委員会の面々……特に五年の玄善がよく保健委員会にお世話になっているからと必要な包帯等の買い物も折半してくれた。保健委員会としては今日程幸運な日は無い。玄善はちょっと納得のいかない顔をしていた。
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