シルアシュ人魚姫パロやで夏から秋にかけて海岸沿いの別荘に避暑にくる貴族の息子シルヴァンは残りわずかな独身を謳歌していた。
好奇心旺盛で陸と人間に興味のある人魚のアッシュは難破船や浜からいろんなものを拾ってきて飾っている、お気に入りは馬に乗った立派な騎士の絵画と、チェスのナイトの駒だ。
人魚の友達のアンは人間に見つからないかアッシュをいつも心配している 同じく人魚のメーチェは物知りでアッシュに絵画の「馬」や「騎士」のことを教えてくれた
ある日アッシュが海面の岩場に遊びに行くと、そこには砂浜を駆ける本物の馬と騎士がいた。
それからたびたびアッシュは海面に出るようになり、崖の上の屋敷に見える人影がその騎士だと気付き憧れで胸が高鳴る。
ある日からシルヴァンはその海に人魚が居ることに気づく。 興味を持ったシルヴァンは砂浜を散歩しながら、岩場に隠れているアッシュに声をかけた。
アッシュは慌てて逃げようとしたが「捕まえたりしない」と優しい彼の声を初めて聞いて、つい近寄ってしまう。
てっきり女の姿だと思っていたシルヴァンはアッシュをみて驚いたが、非の打ち所がない愛らしさにすぐに心を惹かれる。
それから2人はこっそりと岩場でたくさんお喋りをした。アッシュは聞く話すべてに目を輝かせた。
ある日シルヴァンは岩場の側の浅瀬まで馬を進めると「乗ってみるか?」とアッシュの脇を抱き上げて、横に抱いたまま馬に乗せてやった。アッシュは興奮して、きっと馬に乗った人魚は世界で僕だけだと喜んだ。
数週間が経ち、ある日シルヴァンは領地に戻るという話をした。次に来た時にはもう会えないだろうという話もした。自分はそろそろ結婚をしなくてはならないからだと言う。妻となる女性に見つかりでもしたら、不老の薬になると言われている人魚はすぐに捕まってしまうだろうから。
アッシュは結婚がわからなかった、シルヴァンはつがいになることだと説明した。
この世界の人魚は、何年かに一度、真珠の貝から産まれる。卵を産むための魚と違い、つがいになることは恋をして愛を誓うためだけのことだった。
アッシュはもう会えないことが悲しくて海底でしょんぼりと落ち込んでいた。アンはその人間の言う通り捕まって酷い目にあうかもしれない、アッシュのためだよと慰めた。
アッシュはこっそりとメーチェに相談をした。深い海溝に住むマヌエラという魔女が、人間になる魔法を知っているという噂のことだ。
メーチェは噂はきっと本当だけれども、魔法には代償が付きもので、とても恐ろしいことだとアッシュを宥めた。それに、あなたが人間になれても、彼が結婚をすることは変わらないのでしょう?とも。
人間は雄と雌でないとつがいになれない、アッシュはそれを知って酷く落ち込み、初めて自分は恋をしているんだと気付いた。涙は小さな真珠に変わった。
お⭐︎わ⭐︎り