ありのまま『ありのまま』
自宅のように使用しているアジトのソファに座って、二人はテレビを見ていた。今日は麻里が友達のところへお泊りの為、長く一緒にいられるとリラックスしていた。何気なくつけたテレビ番組はバラエティー番組で、KKの笑いのツボにヒットしたようだ。大きく口を開け、笑っている。一緒に笑っていた暁人の視線が、ふと、KKの口元へと移動した。
「……」
「はっはっはっ」
「……」
「はっはっはーーあ”?」
ぐいっ、大きく口が開いた瞬間を見計らって、暁人の指が二本侵入する。KKの歯がよく見えるように口角を引っ張ってくる。
「はきと?」
「KKって、八重歯だよね」
何の脈拍もなしにされた行動に、呆けた声が出てしまう。無理やり引っ張られているものの、手加減しているのか、痛くはない。二本の指の隙間から八重歯が覗く。その鋭い歯に噛まれたら痛そうだと、暁人は感じた。
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