麻里が絵梨佳に御神水を持って帰ってきて欲しいとお願いしてるのを見ながらKKは暁人を抱えるとあまりにも軽く驚きそれを見た麻里は「よくある事だから人間でも抱えれるようにって兄が配慮してるんです」と声を掛けてきたのに納得して一歩足を踏み出そうとした瞬間尻ポケットから何かが落ちた。
「何か落ちましたよ?」
「あぁ、悪い、大事なものなんだ。拾って持ってきてくれ」
そう言うと麻里はその落ちたものを拾おうとしゃがみ込み手を伸ばす。だがその物が何かを認識した途端ピタリと動きを止めた。
「これは…」
「ん?…大切な家族さ」
落としたものとは家族が写った写真を入れたパスケースだ。落ちた拍子に開き写真が入った方が上を向いてしまったが、それを見た麻里は「家族…」と呟きそれをジッと見た後そっと拾う。
「さぁ、行きましょう。拝殿まで行けば神主さんが待ってると思う」
そう言うと麻里はさっさと歩き去ってしまった。それを慌ててKKは追いかけ先程の麻里の態度が気になってたが今はそれどころじゃないと思い直し拝殿に向かう。
拝殿に着くと既に麻里は神主に話をつけていたらしく「ここからは部外者立ち入り禁止ですので暁人様は私が預かります。今日はもう遅いので泊まっていってください。巫女がご案内致します。」と暁人を奪い本殿の方へ向かっていった。
その後絵梨佳も合流し麻里に御神水が入った水筒を渡してから巫女に案内される。
着いた場所は客人をもてなす為の場所なのか空き部屋が数部屋あった。絵梨佳と同室になるわけにもいかないため絵梨佳に挨拶を告げKKは別室に入る。
そして奥に進むと大きな窓がありそのまた奥は小さなバルコニーがあった。こりゃぁ良いと思い外に出ると煙草を出し吸い始める。ぼーっと景色を見ていたらまた声が聞こえてきた。
ー僕…神様に捧げられるんだって…もう、遊べなくなっちゃうね…ー
それを聞いた瞬間何か思い出そうとしたが白い靄がかかったかのように思い出せず舌打ちを零す。
「クソッ…なんなんだ…」
苛立たし気に煙草を携帯灰皿に捨てた。
気分を変えようと部屋に戻り靴を履き外に出て拝殿に向かうと何やら話し声が聞こえ木の陰に身を隠した。
そしてジッと聞き耳を立てるとどうやらその声の主は狐兄妹のようでなにか分かるかもしれないとそのまま息を潜める。
「お兄ちゃん…本当にもう大丈夫…?」
「あぁ、心配かけてごめん…僕が気を失った後の事教えてくれる?」
狐兄妹は見つめ合うと両手を絡め目を閉じて顔を近づけさせる。KKは驚くも口付けをするとかではなく2人は額同士を触れ合わせると静寂が生まれる。
数分経った頃2人は顔を離し目を開いた。
「そう…KKに…」
「うん…どうするの…?」
「それは……」
まさか自分の事を話してるのだとは思ってなかったのか心臓が大きく跳ねた。暁人の返事を聞く前にスマホが震えKKは慌ててその場から離れた。
スマホを見ると絵梨佳からで「夕飯が部屋に届くみたいだから帰ってね」とだけ書いてありなんだこんな事かよ息を吐き再び2人の方を見たがもう2人はその場に居なかった。
その後は謎の声を聞くことも無く朝を迎え、KKと絵梨佳は鳥居の外にいた。
「今回は本当にありがとうございました。」
「ううん、これが私達の仕事だもん、何かあったらまた連絡してください」
神主がKKと絵梨佳を見た後深々と頭を下げ礼を言うのを絵梨佳は手を軽く振り名刺を渡していた。
「あの2人は?」
「暁人様はとてもお疲れの様でして麻里様が付き添っております。これ以上のことは関係者以外お話しできません。」
狐兄妹の姿が見えなかった為KKが声を掛けるも神主の一線引くような物言いにKKは言い返しそうになる。絵梨佳が「凛子に報告しなきゃ」と言われてしまえばそれに従うしか無く渋々神主に背を向け絵梨佳は「一回穢れて私達が祓った神社は見回り対象なのでまた来ますね」と笑顔で伝えKKとアジトへ帰っていった。
その2人の後ろ姿を暁人と麻里は御神木の太い枝の上から見つめていたとは知らずに…。