①導入
★:KP情報
◎:読み上げ描写
△:描写とは別に渡すべきPL情報(探索場所、必要な技能の提示など)
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>000.HO1とHO2の導入
★聖のハスター召喚および契約に、HO1は巻き込まれた。
のちに世間では「原因不明の大火災」として扱われることになる。
HO2は背景のように一周目からやってきたわけだが、HO1を助け出したところで世界のつじつま合わせが発動し、「どうして自分はここに来たのか、なぜHO1を助けたのか」を忘れてしまう。
◎HO2は小さな手で、重い瓦礫を必死にどける。
ガラン、ガラン、ゴトン。
瓦礫は一つだけじゃなくて、いくつも持ち上げては、何度も何度も脇へ捨てた。
ガラン、ゴトン。ガラン、ゴトン。
繰り返すうちに指先は切れて、皮も爪も剝がれていった。
流れ出す血が、まだ十にも満たない子どもらしい丸い輪郭を残す四肢を赤黒く滲ませていく。
泣きそうになるぐらい、痛みはある。
いますぐ投げ出してしまいたいような、苦しみもある。
それでもHO2は瓦礫を掘る手を止めない。
骨もむき出しになろうかというほど傷だらけになった頃に、それを見つけた。
町だった破片の海の底に、ぐったりと横たわるHO1を見つけたのだ。
大火災に伴う破壊の渦に揉まれたHO1はいまにも事切れそうで、しかしまだ生きていた。
それが八年前のこと。
HO1とHO2の交流は、現在も続いている。
>001.導入 現在編
★描写のまえに、HO1とHO2が現在どういった日常を送っているか、どんな関係でいるかを軽く聞いてみるといいかもしれない。PCは全員17歳固定なので、学校や友人関係など、シナリオに関わらない範囲の話とかどうだろう。
導入として、HO1のもとにHO3から呼び出しがかかる。
HO1とHO2には、共に呼び出しに応じてもらう。
◎穏やかな晴天の下、春の到来を告げるように吹き抜ける風は、まだ人々に肌寒さを感じさせる。
3月25日。HO1に差出人不明の手紙が届いた。
名乗りもなければ、送り主の住所もない。よく届いたものだと感心したくなるほど簡素なパッケージの中身も、その外装に相応しいものだった。
「お兄さんをお返しします」
八年前。大火災で入院している期間に、実兄を亡くしたHO1にとっては、眉をひそめたくなる一文だったかもしれない。
その下には待ち合わせ場所と思わしい住所が羅列されていた。
ひとりでは判断がつきかねたか、ただ話を聞いてほしかったか。何にせよ、HO1はこの話題をHO2に持ち掛けることになる。
△≪知識≫
ここ数年、世界中でさまざまな災害が数多く発生している。HO1とHO2が遭遇した、八年前の大火災もその一つだ。今日のニュースでは、近海の潮流が変化したのか、大量の魚が浜辺に打ち上げられたと報道されていた。
★グロース接近の予兆として。情報まとめ①に該当する
>002.HO3との待ち合わせ
★HO3が指定した待ち合わせ場所は、五階建ての廃ビル。
HO3は首輪付きとなった真守を連れて、翠のもとを脱走。アルトとホタルに追いかけられるうちに、事故(真守に突き落とされる)のショックで記憶喪失になってしまう。そうしてPCの立場となる。
HO1とHO2はそこでHO3と真守、そしてアルトとホタルに出会う。
◎手紙に記されていたのは、五階建ての廃ビルだった。
鉄骨がむき出しになっていたり、床がところどころ抜けていたりと、ひとの手を離れて久しいと思わしい。そのせいか、五階から一階まで疑似的な吹き抜け構造になってしまっていた。
きっと屋根も飛んでしまったかなにかで、もうないのだろう。HO1とHO2がいるのは一階にもかかわらず、頭上からは日光が差し込んでいた。
△≪目星≫
階段の側に設置されたフロア案内はほとんどかすれてしまって読めないが、かろうじて二階部分には「バベッジ・インコーポレイテッド」、三階部分には「クライン生命保険相互会社」と記されているように思う。
△≪聞き耳≫
階上から「噓だろ!」と男の驚いた声が聞こえた。
★真守にHO3を突き落とされたアルトの驚きの声。
治るとはいえ、HO3が傷ついたなんて翠に知られたら後が怖いので。
◎ひゅ。
ぐしゃり。
風を切る音。そして、なにかが潰れた音がした。
落ちてきたのだ。
上の階から、人間が。
弾けた肉と血の色と匂いが、HO1とHO2の脳を強く揺さぶるだろう。
△≪SANC≫ 1/1d4
◎HO1とHO2が死体を目にしてまもなく、一つの影が死体の側に降り立った。
それは重力を感じさせない動きで着地すると、目隠しに覆われた双眸でHO1の方を向いた。
相手の目元は窺えない。にもかかわらず、HO1は「目が合った」と確信した。
それ以上に、強い驚きに満たされるだろう。
その男は、八年前に死んだHO1の兄──真守の姿そのままだったからだ。
「ちょっとちょっと、きみたち誰?」
そんな軽口を叩きながら、小柄な少女を抱えた別の男が飛び降りてきた。
「逃げ出したお姫様と犬の回収……って簡単な仕事のはずだったんだけど。
このうえ目撃者まで増えるなんて、聞いてないよ」
男は少女を下ろすと、HO1とHO2を見やる。
★アルトの「お姫様」比喩はHO3の性別にかかわらず。
彼は軽薄であろうと努めている人種なので。
>003.アルト、ホタルとの戦闘
★PCたちをアルトやホタルと軽くやり取りをさせてもいい。その後、戦闘とする。
なお本シナリオ中、真守と会話はできない。できるのはEND-5になったときだけ。
◎「あーはいはい。いろいろ言いたいことはありそうだけど、こっちは仕事でさ。
目撃された以上、黙らせるしかない。その不運に同情するよ」
△二面アルト、三刀屋ホタルとの戦闘開始
★この戦闘における固定条件
・HO1が狙われたとき、真守は必ず庇いに入る。
・ホタルが狙われたときのアルトも同様である。
・ホタルは戦闘盤に立つが、攻撃には参加せず、ハンドラーとしてアルトを支援するのみに留まる。強制執行令でHO1の攻撃に必中を付与してもいいかも。
・この戦闘において、まだ一般人のHO1はアルトの攻撃に回避を振れない。(HO2は可能)
→真守との契約イベントが発生後、戦闘終了となる。
>004.HO1と真守の契約
★アルトとの戦闘において、HO1がアルトに狙われたときに発生。
HO1と真守の間に、首輪付きとハンドラーの契約が結ばれる。
◎男の凶刃が、HO1に届く寸前。
甲高い音がした。
男の攻撃は、間に割って入った真守によって弾かれたのだ。
「おいおい……飼い主もいない犬が勝手に散歩するなよ」
舌打ちする男に対し、真守は依然口を開かない。
ただ、おもむろに目隠しを持ち上げた。
薄暗く輝く双眸が、HO1とたしかに目を合わせたのだ。
「ちょ、待───!」
驚きと焦りに濡れた男の声は、HO1の耳に届かなかった。
だって、心臓を食われていたから。
──そう錯覚するほどの衝撃が、HO1の身体を支配した。
△HO1のみ≪SANC≫1d3/1d20
衝撃を味わったのは、真守と目を合わせたほんの一瞬だった。
けれど、永遠にも匹敵する一瞬だった。
ハッと現実に立ち返ったとき、少女の呟きが耳に届くだろう。
「……オールレッド。契約、完了」
>005.導入終了
★翠からの通信が入る。戦闘中断。HO3を含め、PCたちは連行される。
◎「まいったな……ホタル、どうしよう?
あの子、ハンドラーになっちゃったよ」
「……イエロー。アルトとホタルじゃ判断できない」
ピリリリリリリ。
男と少女のこそこそした相談を断ち切るような、通信音。
すぐに通信機器を取り出したのは、ホタルと呼ばれていた少女だった。
二言三言交わしたあと、彼女は目を丸くしてHO1とHO2を見やる。
「……ブルー。ボスが、あなたたちを連れてこい、って」
もしHO1が渋るようなら◎「バイオレット。その首輪付きのこと、気にならないの?」
もしHO2が渋るようなら◎「グリーン。別に構わない。改めて殺しに行くけれど」
◎HO1とHO2が承諾すれば、アルトと呼ばれていた男は倒れていたHO3の身体を丁寧に持ち上げた。
真守に抵抗する様子はない。HO1の意思に従うようだ。
「じゃ、行こうか。少し歩くけど、大丈夫だよね?」
△≪目星≫
HO3の身体の傷が、消えているように見えた。
★グロースの澪標(ビーコン)としての能力で、死ぬほどの傷すら治る。