おわった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!【4話 現代】
■雪星の家
「さあ、世界の終わりを始めよう」
踏みにじっていた肉片を蹴り転がして、青年はあなたたちへ向き直った。
その顔に浮かぶ微笑は、日常にあるものと変わらない色をしていた。
血と肉で彩られた空間で、かくも異質なものはなかっただろう。
その指が明確な殺意を持って振り上げられた、そのときだ。
「──逃げろ!」
あらぬところから、雪星の声がした。
床に散らばっていた肉片が、血が、あなたたちを囲む円陣となって蠢く。
意図して描かれたそれが“門の創造”と呼ばれる呪文に伴う魔法陣だと、あなたたちは知らない。
あなたたちは、この場所から転送される。
「ははっ、まだ動けるとは驚いた。化け物が、まだ親気取りか」
転送間際に届いた青年の笑い声に、あなたたちは同意も反論もできなかった。
はたして、あなたたちは気付けば警視庁の虚災対にいる。
当直だったHO2とHO3が、急に現れたあなたたちを驚いた目で見ているだろう。
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【KP情報】
この辺りはイベントシーンとしてサクッと流していいかもしれない。
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■夜の虚災対
異なことに、朝ではなく夜、あなたたちは虚災対で集合した。
虚空から現れるような登場の仕方もさることながら、HO1とH04は顔色が明らかにおかしい。
彼らに何かあったことを、HO2とHO3は否が応でも悟るだろう。
>≪目星≫ 【雪星の手帳】
HO1のポケットに、見覚えのない手帳がある。
>【雪星の手帳】開示後に提示
開いてみれば、HO1とHO4には雪星の筆跡で綴られたものだとすぐに分かる文字が並んでいる。
「できれば、この手記を誰にも読まれないことを祈っている。
私はあるとき、化け物になった。
なんてことはない、死にかけて、生き返ったと思ったら改造されて化け物にされていた。
紅機関の首輪付きになったのは、そのときだ。
同意書なんてものは当然ない。道具に人権なんてあるわけもなかった。
……こんな文章は、上への翻意と取られかねないな。
死んでも監視役には見つからないようにしないと。
あるとき、同居人が増えて、あとからもう一人増えた。
上からの命令で、子どもを育てることになったのだ。ひとりはHO1、ひとりはHO4。どちらも私とは何の関わりもない、ただの人の子だ。化け物と同居だなんて不幸なことだ、と彼らには同情した。
HO1は事故で家族を亡くしたうえ、本人も特殊な目を持ってしまった。
人間が怪物に見える目だ。
人間が怪物に見える。逆もしかりだ。怪物が人間に見える。
HO1はこの世でただ一人、人間と怪物を明確に見分けられる能力を持っているのだ。
紅機関がHO1に目を付けたのは、このせいだった。
HO4は、ある神の子であるらしかった。
そのせいだろう、少々ひとより可愛らしく、周りを狂わせる目を持っている。
それを周囲の人間は恐れていたらしく、HO4は親戚関係をたらい回しにされていた。
紅機関にどこで目を付けられたのはかは私には分からないが、不幸なことだと言わざるを得ない。
二人は多少、ひとと違う目を持っている。
だが、それだけだ。それだけなのだ。
他は、普通の人の子と何ら変わらない。
飯を食わせてやらねば死ぬし、腹に穴が開いたら死ぬ。
私なんかより、ずっと人間と呼べる生き物だった。
同居といっても最低限の生活環境を整える以外の命令はなかったから、大した仕事ではなかった。
想定外だったのは、彼らとの生活を楽しく感じるようになっていく自分だった。
二人の成長を喜ばしく思うことを自覚したとき、絶望した。
化け物と生活していたなんて、二人は知りたくもないはずだ。
ましてや、親面なんて以ての外だろう。
私が化け物だと、いつまで隠し通せるだろうか。
……こんなものを書く羽目になっているのは、冬京の首輪付きが連続で殺されているからだ。
犯人は見当がついている。まず間違いなく、九曜だろう。首輪付きを殺すような動機と、首輪付きを殺せるほどの実力を持ち、かつこの冬京にいるのは彼ぐらいだ。
私もいつ殺されるか分からない。
上にも九曜の暴挙を進言してみたが、おそらく無意味だろう。
冬京は、いわば約束されざる地だ。
誰もが救われず、求められず、見捨てられた場所なのだ。
私も冬京に宛がわれてしばらく経つが、愛着なんてものは未だに微塵もない。
冬京の原因となったかの星は移動し続けているが、絶滅の対象を見失うことはない。
目的地に、自身の小端末とでもいうべきビーコンを前もって用意しておくからだ。
ビーコンから生み出される生体反応を辿り、かの星はやがて滅びと共に冬京を訪れる。
それでもまだ、この地にはあの子たちが生きている。
いずれすべてが終わるとしても、その終わりが少しでも穏やかなものであっていいはずだと望むことぐらいは、私にも許されていいだろう」
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【KP情報】
雪星の監視役はイツカ、イツカの監視役は雪星。相互監視だった。
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■九曜による襲撃
あなたたちは階上の騒ぎを感じ取る。
大勢がばたばたと走り回る音、かすかな悲鳴、何かが強くぶつかる音、……階段を下る足音。
警視庁地下21.5階にある虚災対目掛けて、何かが降りてきている。
あなたたちがそう確信したとき、天井が大きく崩れた。
瓦礫と共に、人影が降ってくる。
「迎えに来たよ、HO3」
雪星を殺した青年。
あるいは、あなたたちの家族であり、友人である男。
彼が九曜であると、あなたたちは確信を得る。
「世界が終わるときを共に見よう。特等席を用意してあるんだ。さあ、おいで」
九曜は血塗れの手を、HO3に差し出した。
>九曜の手を取る
あなたの選択を、九曜は嬉しそうに受け止めた。
「あの化け物と同じことぐらい、私にもできるからね」
誰かに自慢するように嘯いたあと、九曜とHO3の姿は虚災対から消えていた。
>九曜の手を取らない
あなたの選択に、九曜は信じられないといった面持ちになる。
「……どうして?」
「きみのためなんだ。私が世界を終わらせるのは、きみのためなんだよ。HO3」
「……ああ、そういえば昔から頑固なところがあったっけ」
「仕方ない。少し乱暴に行こう。大丈夫、怖くないよ。グロースが来るまで、きみは死なないんだ」
九曜との戦闘になる。
■虚災対 九曜との戦闘
【九曜】
HP 26 / DEX 10 / 装甲(魔術) 500 / ダメージボーナス 3d6
攻撃方法 1d3
①押しつぶし 100% ダメージ6d6
②触肢 60% 3d6
③ヨグ=ソトースのこぶし(呪文) 特殊処理
特徴
ターゲットはHO3で固定。HO3が戦闘不能になったあと、HO2に変更となる。
1RにHPを2回復する。
>HO3が戦闘不能になる
倒れそうになったHO3の身体を、九曜が横抱きで持ち上げた。
彼は踵を返そうとして、ふと思い出したようにHO2を一瞥する。
「そういえば、きみのせいだったな。殺しておこう」
>HO2が戦闘不能になりそうになる
九曜の魔手がHO2に届きかけた、そのとき。
壊れた天井から降りてきた影がHO2の前へ身を翻し、九曜の攻撃から庇った。
二月イツカ。
一目で致命傷と分かるそれを、しかし彼は唇を噛んで堪えた。
「俺の家族に触るな!」
怒声と共に、イツカから伸びた触肢が床を叩く。
そこはHO1とHO4が放り出された位置。
人知れず創設者によって設置されていた“門”の座標だ。
術者の意思によって、転送が開始される。
九曜という名の危機が虚災対から消える。彼に抱えられていたHO3と共に。
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【KP情報】
いわゆる負けイベント。
HO1の能力は有効ではあるが、すべて装甲によって弾かれる。
HO4の≪目星≫は九曜には魔術で対策されているため、無効となる。
HO3が捕まり、HO2が殺されそうになったとき、イツカが乱入して中断される。
③ヨグ=ソトースのこぶしでは、九曜の8d6の値と、対象のCON+STRを抵抗表で競わせる。九曜が勝ったとき、対象は気絶し、戦闘から脱落する。
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■イツカの死
九曜とHO3がいなくなった虚災対で、冷たくなっていくイツカを、あなたたちはどうすることもできない。
彼の身体は通常の人間と異なっていた。死に近づくにつれ、どろりとした肉片へと溶けていくのだ。
それは、HO1とHO4には見覚えのある物体だっただろう。
「……HO2……そこにいますか……」
「もう……目が、よく見えなくて……」
「……家族だなんて言って、ごめんなさい。きみは悪くないんです。ぜんぶ、俺のせいだから……」
それを最後に、イツカの全身はただの肉片へと形を変えた。
もはや会話など望めないだろう。
>≪目星≫ 【イツカの手帳】
肉片と血の海の中に、手帳が落ちている。おそらくイツカのものだろう。
>【イツカの手帳】開示後に提示
「紅機関に首輪をつけられてから、偉大なる種族としての誇りは露と消えた。
名前も捨てたいま、もはや俺の自由は、この手帳一つの中にしかない。
……これも、監視役だろう雪星には見つからないようにしなければ。
上への翻意と取られかねない。
忘れもしない2月5日。俺は選択を間違った。
イス人のひとりとして、世界の崩壊を防ぐための時空遡上だった。
……最初から不可思議な点はあった。まだ幼いHO2を俺に同行させたことだ。当時のHO2に世界を維持する仕事など、できようはずもなかったのに。簡単な任務だと油断した、俺の慢心がすべての元凶だ。
実高市の国立天文台で開かれていた天体観望会。
この日この場所このとき、その一角で、ひとりの子どもにグロースが観測される。
それをきっかけに世界が終わる。だから俺が派遣された。
……気付くのが遅かった。
幼いHO2を同行させたのは“グロースを観測させる子ども”としてだと。
俺の仕事は、その“グロースを観測したHO2を殺すこと”だと。
イス人のほとんどは社会主義的だ。
家族であろうと、重きを置くことはまずない。
だから俺の裏切りは想定されていなかった。
HO2は未発達な精神を反映させた、子どもとしての血肉を得ていた。
天体観望会自体が親子向けのイベントとして開かれていたおかげで、HO2と同じ年頃の子どもを探すことは苦労しなかった。
俺は、その子どもとHO2をすり替えた。
子どもの家族とHO2の記憶に細工し、最初から本当の家族だったように偽装した。
すり替えた子どもは、近くの工場で殺した。今頃はもう骨になっているだろう。
……すり替えている最中にグロースの観測が遂げられてしまい、誰がビーコンか分からなくなってしまったのは誤算だった。
上はビーコンはHO2のままだと思っているはずだったが、世界崩壊の兆しが残り続けていることで、俺の任務が失敗したことは悟られたようだった。
俺は時空遡上を禁じられ、首輪付きになることを余儀なくされた。
俺はもうHO2の家族には戻れない。それでいい。あの子が生きているのなら。
罪を背負った日を忘れないよう、首輪付きとしての名前とした。
フタツキイツカ。俺に相応しい、ただの数字だ」
■六曜の到着
頭上から、カツン、と足音がした。
壊れた天井から「無事か?」と一人の男があなたたちを見下ろす。
その顔が九曜と同じだったことに警戒する者もいるかもしれない。
しかし、先程の彼とは異なる服装だったこと、比べてみるとまるで違う雰囲気だったことで、同じ顔ながら別人だと分かるだろう。六曜は白衣をはためかせて飛び降りると、身軽な動きで着地する。
「大勢の死傷者が出たと通報されて駆けつけてみれば……上もここも、ひどい有様だな。HO1、何があった? HO3がいないことも含めて説明しろ」
「……そうか。九曜が……。……いよいよ手段を選ばなくなってきたな」
「雪星も二月も死んだか。……もう冬京で生き残っている首輪付きは僕だけになった。面倒なことだ」
「おまえたちにも、聞きたいことの一つや二つあるだろう。僕が答えられる範囲でいいなら受け付けてやる」
六曜はあなたたちに治療を施しながら、質問に応じてくれる。
>九曜の装甲について
「……魔術によるものだろう。尋常な手段では、どうやっても奴に攻撃は届くまい」
>首輪付きについて
「紅機関の構成員だ。首輪がついているから、そのまま首輪付きと呼ばれている。おおむねショゴスと呼ばれる怪物と同じだと思っていい。この首輪はマプローと呼ばれる素材でできていて、首輪付きの命と自由を握っている」
「少し前から、冬京中の首輪付きが消息を絶つ事件が相次いでいた。雪星がその後始末に追われていた。いま思えば、あれも九曜の仕業だったんだろうな」
>紅機関について
「世界の秩序維持もしくは崩壊阻止機構。……正直、やることなすことのスケールが大きすぎて実態が掴めない。冬京のような街を無数に持っているとも聞く」
>六曜と九曜との関係について
「見て分からないか? 双子だ」
「僕と違って、九曜はずいぶん前に紅機関を離れているが。……まあ、一度怪物となった者は二度と人間には戻れない。同じ穴の狢だよ」
>九曜の目的
「僕の知る九曜のままなら、奴は“自分が世界を滅ぼす”ことに執着しているはずだ」
「曲がりなりにも警察に襲撃なんてしでかしたんだ。もう止まる気はないんだろう」
>九曜が銀明組にいたことについて
「暴力団にもドラッグにも興味のある奴じゃない。資金調達の一環に過ぎなかったはずだ。何をするにも、先立つものはあるべきだからな。世界を滅ぼすにも金はいるさ」
>冬京について
「僕にはアクセス権限がない話だ。答えられない」
>15年前のことについて
「15年前、絶滅の星が観測された。これがすべての始まりだ。あの星により、この世界は滅びを決定づけられた。一部のイス人は観測を阻止するため動いていたようだが、失敗したらしいな」
「絶滅の星を観測し、世界の滅びを決定づけてしまったのが、当時子どもだったHO3だ。僕と九曜はHO3を救うために動いたが、……結果は見ての通りだ。何一つうまくはいかなかった」
「そのうち、九曜は狂ってしまった。奴は“HO3のせいで世界が滅びる”のが嫌だったから、それよりはやく滅ぼしてしまえば、HO3のせいにはならないと考えるようになっていったんだ」
「……僕は、そうなれなかった。九曜の考えでは、家族の幸せには繋がらないと思った。だから待つことにした。いつか現れるかもしれない、救世主足り得る星を。……それぐらいしかできなかった」
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【KP情報】
適当なところで九曜による電波ジャックイベントを発生させる。
六曜は「冬京について」のみ嘘を口にする。
探索者たちが真実を死って、九曜のように狂ってもらっては困るのだ。
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■九曜による電波ジャック
ふいに、近くのテレビが、携帯端末が、パソコンが、ありとあらゆる電子機器が起動する。
流れ出した映像と音声はすべて同一だ。
『こんばんは、冬京の皆さま。怒りの日の開催をお知らせいたします』
『世界の終わりは盛大であるべきだと思い、冬京の至る所に銃を配らせていただきました。犬も歩けば棒に当たる、ひとも探せば銃を見つけられるというわけです』
『撃たれるまえに撃ちましょう。殺されるまえに殺しましょう』
『そして、みんなで終わりましょう』
九曜による歌うような声の放送が繰り返される。
>≪目星≫
映像の背景に見覚えがある。冬京タワーのメインデッキだ。
>≪聞き耳≫
放送から嫌なものを感じる。“ヴールの印”を使えば何か見えるかもしれない。
>“ヴールの印”を使う
電子機器から、いつか見たことのあるドーの落とし子の触手が生えだして、視聴者であるあなたたちに絡みつこうとしているのが見える。
そのとき、六曜の視線が部屋中を巡った。
直後、あなたたちの連絡端末を含めたすべての電子機器が暗転して沈黙する。
六曜が「節操なしめ」と舌打ちした。
「……電子機器に触れるな。とくにインターネットに接続されているものには気をつけろ」
「グレート・オールド・ワンが形而上学的存在でもある性質を利用して、電脳上で培養したらしい。油断すると、意識を持っていかれるぞ」
「こんなものが解き放たれたら、外はもう──」
六曜の言葉を遮るように、あちこちから銃声、そして悲鳴が聞こえ始めた。
■場面転換 冬京タワー HO3側
一方そのころ、HO3は冬京タワーのメインデッキで目を覚ます。
柱の一つに括り付けられるように、縄で後ろ手を縛られている。
ろくに身動きが取れないだろう。
その目前には、眼下の街を見下ろす九曜が立っていた。
彼はあなたの意識が戻ったことに気付いたのか、笑顔で振り返る。
「おはよう、HO3。いいタイミングで起きたね」
「見てごらん。ちょうど人間が終わり始めたところだ」
九曜の指し示す先には、深夜の薄暗い冬京の街並みが広がっている。
しかし、様子がおかしい。
あちこちで爆発や火事、建物の倒壊が相次いでいる。
かすかながら、ひとの悲鳴さえ聞こえてきた。
「なんでこんなことをするのかなんて、決まってる。きみのためだ、HO3。きみのために、私が世界を滅ぼすんだ」
「……世界の終わりを彩るために、少し趣向を凝らしたんだ」
「戦う手段として多くの銃を用意した。戦う意思としてドーの落とし子を用意した。警察組織も、もはや秩序維持として機能しない。あとは誰かが引き金を引くだけで、悲劇は無数に連鎖していく」
「……本当は、病の感染者を使って人質も取るつもりだったんだけどね。ほら、人間って自分のためより、誰かのための方が頑張れるだろう? でも、あれはきみたちが解決してしまったからね……」
「ふふ。黙示録の四騎士になぞられるのは我ながら名案だと思ったんだ。思いついたのは、HO2の関係者が偶然脱走したドーの落とし子によって死んだときだった。支配の騎士はドーの落とし子。飢饉の騎士はクールパンガ。疫病の騎士はバオート・ズックァ=モグ。だから四騎士の順番がめちゃくちゃになったり、福音書から程遠い絵面になったりしてしまったんだけど、多くのグレート・オールド・ワンに出会えてなかなかおもしろかっただろう?」
「ねえ、グレート・オールド・ワンのことはどこまで知ってる?」
「そう。人間に崇拝されており、人間社会に干渉し、人間に害悪をもたらしている、この地に棲まうもの──それは、まさしく『人間』のことだと思わないか?」
「だから戦争の騎士には人間を当てはめようと、最初から決めていたんだ。人間こそ、最新かつ終焉のグレート・オールド・ワンに他ならない」
かくして戦争の火は点る。
夜の街に、すべてを燃やす赤色が走り出した。
■場面転換 虚災対側
一方そのころ、あなたたちは虚災対で今後の進退を考えている。
六曜は溜め息をついたあと、HO1を見た。
「HO1。おまえはどうしたい?」
「おまえに、僕の希望になる覚悟はあるか」
>ない
「では大人しく終わりを受け入れよう。どうせあと数時間もない。コーヒーでも飲むか」
>ある
「……待っていた甲斐があった」
「何でもない。事がここまで進んだ以上、やらなければならないことは二つだ。一つは、冬京タワーから九曜を排除すること。もう一つは僕が冬京タワーに実装しておいた時空遡上機能を使い、15年前のグロースの観測を阻止することだ」
「グロースの観測を阻止できれば……おそらくだが、冬京の根幹が上書きされる。こんな終わりは迎えずに済むだろう」
あなたたちは一路、冬京タワーへと向かうだろう。
■冬京タワーまでの道のり
あなたたちは警視庁を出て、車で冬京タワーへと向かう。
走り出してまもなく、あなたたちの乗る車を複数の車両が追いかけてくることに気付く。
ドーの落とし子に支配された人々による妨害をかわして辿り着けるか、カーチェイスとなる。
「ポジション」というこのシナリオでのみ使用する一時的ステータスを使用する。
特殊ルールによるカーチェイスとなる。
1.DEX順に各車両の運転手が≪運転≫を振る。
成功時、ポジションが1上昇。失敗時、増減なし。
2.探索者側のポジションが5になれば目的地到着。カーチェイス終了。
このとき、運転手以外の同乗者PCは任意の技能に成功することで追跡車両の≪運転≫50%にマイナス補正を与えることもできる。
カーチェイススタート時、探索者側のポジションは1、追跡車両のポジションは0とする。
追跡車両の数は2d2、探索者側を含む各運転車両の耐久度は3d10で決定する。追跡車両に追いつかれると、車両耐久度が1d6ダメージ減少する。
>カーチェイス勝利
あなたたちは幾重もの追跡をかわし、華麗に冬京タワーへと乗り付けた。
>探索者側の車両が壊れる
あなたたちは追跡者たちの妨害を受けながら走るしかなくなった。
ひとりにつき三回≪回避≫をロールし、失敗した数だけ1d3のダメージを食らう。
傷だらけになりながらも、あなたたちは冬京タワーへと辿り着いた。
■冬京タワー メインデッキまでの道のり
冬京タワーは非常用電源が作動しているのか、照明こそ灯っていたが、肝心のエレベーターやエスカレーターは機能していなかった。あなたたちはメインデッキまで階段で向かわなければならない。
ひとりにつき五回、階段を素早く昇れるか、≪DEX*5≫をロールして成功する必要がある。
探索者側がロールするたび、KPは1d100を振って街で死んだ人数を決める。
探索者が≪DEX*5≫をロールにもたつくと死人が増えるゲームフレーバー。
■メインデッキ
メインデッキには九曜と、拘束されているHO3がいる。
あなたたちが着くと、九曜はいかにも億劫そうに振り返った。
「……きみたちは、とことん私の邪魔をするんだね」
九曜との戦闘になる。
■九曜との戦闘
この戦闘にHO3を参加させる場合、他の探索者がHO3を解放する必要がある。
【九曜】
HP 26 / DEX 10 / 装甲(魔術) 500 / ダメージボーナス 3d6
攻撃方法 1d3
①押しつぶし 100% ダメージ6d6
②触肢 60% 3d6
③ヨグ=ソトースのこぶし(呪文) 特殊処理
特徴
1RにHPを2回復する。
【六曜】 味方NPC
HP 15 / DEX 11 / ダメージボーナス 1d6
攻撃方法(九曜の装甲がある)
①装甲の無効化(呪文) 80% 九曜の装甲を1d100減少させる
攻撃方法(九曜の装甲がない)
①こぶし 75% ダメージ2d3+1d6
②電撃銃 60% ダメージ1d10+攻撃対象を1Rスタン
他の技能
①応急手当 80%
②医学 80%
③精神分析 80%
>HO1限定提示
九曜は人型の怪物だ。
あなたにとっては、いままで倒してきた怪物とそう変わらない。
あなたは彼の急所を意図的に狙うことができる。
あなたの攻撃が九曜に成功したとき、ダメージを二倍にしてよい。
また、この情報を≪交渉技能≫に成功して仲間にも急所の位置を共有することで、あなた以外が行う攻撃もダメージを二倍にすることができる。
>HO4限定提示
もう何度も九曜とあなたの目は合っている。
にもかかわらず、九曜の様子はあなたの知るものと何ら変わらない。
きっとあなたの目に対し、何らかの防御を講じているのだ。
あなたは友人を傷つけずに事を収める手段がないことを悟るだろう。
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【KP情報】
基本的に九曜の装甲が剥がれるまで耐久戦、それ以降に一気に反撃という流れになるはず。
九曜の③ヨグ=ソトースのこぶしでは、九曜の6d6の値と、対象のCON+STRを抵抗表で競わせる。九曜が勝ったとき、対象は気絶し、他の探索者か六曜が≪応急手当≫か≪医学≫に成功するまで戦闘から脱落する。
六曜はショゴス・ロードのため、マレウス・モンストロルムp58を参照にKPの望む攻撃方法を増やしてもよい。
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■戦闘敗北 HO3以外全滅
あなたたちは九曜という怪物に敗北した。
空も、地も、街も、人も、あなたたちの視界も、すべてが赤く染まっていく。
世界の終わりは、もう目前だ。
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【KP情報】
探索者ロストエンド。ワンチャンある。ごめん。
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■戦闘勝利
ぐらり、と九曜の身体が揺らぐ。
その指先はもはや人の形を留めていなかった。
雪星やイツカ同様、彼も人ではなく怪物として死を迎えるらしい。
「……HO3……私は、きみを……」
そう言ってHO3に伸ばしかけた腕が届くまえに、九曜は人ならざる肉片となって息絶えた。
世界の終わりを招いた九曜はいなくなった。
しかし、街を包む戦火は一向にやまない。
どころかいっそう激しさを増しているようだった。
そのとき、あなたたちは気付くだろう。
地上で、大きな何かが形作られていくことに。
それは地上に漏れ出したガスと、人間からつくられた灰と、街を溶解した鉄を主材料にしていた。
見える範囲では、円い輪郭で、さびのような赤色をしている。
ひび割れていた表面の亀裂が、ふいに一部広がって、はたしてそこに大きな眼球を成した。
あなたたちはグロースの出現過程を目撃した。正気度ロールが発生する。
>HO1限定 ≪SANC≫ 1/1d5
>HO1以外 ≪SANC≫ 1d10/1d100
■タイムスリップ
顕現しつつあるグロースを見下ろして、六曜が舌打ちする。
「もう時間がないな」
「時空遡上のやり方を説明する。なるべく一度で理解してくれ」
「まず目的地の日時、場所を指定する。何年何月何日のどこ、とな。あとは時空遡上する者がこの冬京タワーから飛び降りればいい」
「……なんだその顔は。だから、目的地を指定して飛び降りるんだ」
「ああ、一つ注意事項がある。存在のラベルが同じ者同士が出会うと、自己矛盾による崩壊の危険がある。この世に同じ人間は二人といないのに、それが有り得ると世界が辻褄を合わせようとするからな。ドッペルゲンガーに遭うと死ぬ、なんて話を聞いたことがあるだろう」
「……要するに、指定の過去のその場所にいる者は時空遡上しない方がいい。うっかり過去の自分に見つかりでもしたら、そのまま存在が消失するかもしれないからな」
「だから僕はついていけない。ここで門の制御に専念する。……おまえたちが向かう先には、きっと過去の僕がいる。足手纏いになりたくはない」
「さて。いつの、どこへ行く?」
>情報開示
①目的の日時、場所を指定する。(×年×月×日の××、のように)
②過去へ向かう者が冬京タワーから飛び降りる。
③六曜と共に残る者は、≪コンピューター≫/≪電子工学≫/≪物理学≫ など演算を補助できる技能によって過去への到達率を1d20底上げできる。
④飛び降りた者が過去へ辿り着けるか、≪POW*5≫+≪③による底上げ≫で判定する
>失敗したらどうなる?
「死ぬか、死んだ方がマシな目に遭うだろう」
>15年前の2月5日の国立天文台にHO2とHO3はいる?
「HO3は間違いなくいる。HO2は……推定しかできないが、いたんじゃないか?」
>15年前の2月5日の国立天文台にHO1とHO4はいる?
「おまえらは知らん。僕よりおまえたち自身のほうが詳しいだろう」
>HO2とHO3は15年前の2月5日の国立天文台にタイムスリップできる?
「僕は推奨しないが、技術的には可能だ」
>ここに残るひとはどうするの?
「僕の手伝いをしてもらう。時空遡上の成功確率は少しでも上げたいだろう」
---
【KP情報】
シナリオとしての正解は「15年前の2月5日の国立天文台」を想定している。
タイムスリップはHO1とHO4の二名推奨。
HO2とHO3も時空遡上自体は可能だが、過去でKPの任意のタイミングで≪隠れる≫に成功しない限りロストになる可能性がある。
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■タイムスリップしない
あなたたちの判断を、六曜は「そうか」とだけ言って、静かに受け入れた。
あなたたちは大人だ。
いずれ遠からず、ひとが死ぬことも、世界が終わることを知っている。
それがいまだっただけの話なのだから。
はたして、すべてが終わる。
---
【KP情報】
探索者ロストエンド。
---
■いざ過去へ
あなたたちは目的地を定め、向かう者を選定した。
メインデッキの窓を割り、飛び降りる先を一瞥したあと、六曜の合図を待つだろう。
気付けば、夜は明けていた。
薄暗闇は去り、新しい朝を迎えようとしている世界を、夥しい赤色が邪魔している。
たしかに世界は、いつか終わるのかもしれない。
けれど、それはいまじゃなくてもいいはずだ。
人々はもう少し、明日を望んでもいいはずだ。
「準備ができた。いつでも行ける」
夜明け前。
冬京タワーから流星が落ちる。
あるいはそれは、誰かの希望として飛び立ったのかもしれない。
---
【KP情報】
この描写のあとで④のロールをさせるとそれっぽくていいかもしれない。
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■15年前の2月5日の実高市の国立天文台以外を目指す or 上記④の過去へ辿り着く判定に失敗する
あなたたちは意識を取り戻す。
真っ先に目に入ったのは、晴れ渡る青い空。
そしてあなたたちの職場である警視庁だった。
そのとき、あなたたちの無線に連絡が入る。
『医療刑務所より受刑者一名が脱走! 繰り返す、医療刑務所より受刑者一名が脱走! 本名は日賀板礼央、近くに配達に来ていた軽トラを強奪し都内を逃走中! 応援求む! 繰り返す、応援求む!』
あなたたちは虚災対での、最初の出来事を思い出す。
日賀板 礼央による脱走。
それが、あなたたちの始まりだった。
だから、あってはならないことだった。
時空遡上が失敗したのだ。
まもなくあなたたちは六曜からの忠告を思い出すだろう。
──過去の自分に見つかったら、存在が消失するかもしれない。
この時代のこの場所には、この時代のあなたたちがいる。
まもなく彼らは警視庁から飛び出してきて、日賀板を追跡し始めるはずだ。
そのときに、もし、過去の自分たちに見つかったらいったい何が起こるのか。
あなたたちは未知の恐怖を覚えるだろう。
……あなたたちはまだ、新しい脅威に気付いていない。
あなたたちは安全な時空遡上から外れてしまった。
本来目を付けられることのなかった存在に、認知されてしまっているのだ。
そう、角に棲まう時空の猟犬に。
あなたたちは過去の自分たちからも、時空の猟犬からも逃げ隠れ続けなければならない。
これから先、ずっと。
永遠に。
---
【KP情報】
ティンダロスの猟犬に目を付けられた状態でシナリオ一話時点に戻る。
もしかしたら二周目の探索者たちで世界は救えるかもしれないが、一周目の探索者は継続不可になる。実質ロストエンド?
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■六曜と残った者のみ聞ける
時空遡上を見送ったあと、六曜は肩の荷が降りたように息を吐いた。
力の抜けた笑みを浮かべ、残ったあなたたちへ目を遣る。
「……これで最後だ。懺悔をしよう」
「僕は意図的におまえたちに黙っていたことがある」
「何、難しい話じゃない。いまここにいる僕たちはどうあっても救われない、というだけだ」
「冬京なんて都市は存在しない。正史では冬の京ではなく、東のみやこというらしいからな。ここはいつ終わっても、他の世界に絶滅の影響を与えないよう因果隔離された、見捨てられた牢獄なんだよ」
「正史とこの隔離都市は15年前に分岐された。過去に向かったあいつらがうまくやれば、正史の僕たちは救われるかもしれない。それはどうあってもこの僕たちではない、というわけだ」
>HO3に対して
「九曜がああなってしまったのは、この事実を知ってからだ。いまのきみがどうあっても救われないことに、あいつは耐えられなかった」
「だから僕は、きみから九曜の記憶を奪った。自分のせいで兄がおかしくなった、なんてきみに無用な負い目を与えたくなかったからな。……まあ、いまでは思い出してしまっているようだが」
「……どうしたい?」
「正史のおまえたちと、いまのおまえたちは異なる存在だ。過去へ向かったあいつらがうまくやっても、いまのおまえたちが救われるわけじゃない。正史のおまえたちは何も覚えていないだろう」
「だが、僕なら……完全には難しいかもしれないが、いまのおまえたちと正史のおまえたちをある程度同期させられるかもしれない。もちろん、過去へ向かったあいつらが失敗すれば意味はないが」
「どうしても忘れたくないことは、あるか?」
>ある
「そうか。では、手伝おう」
六曜の手があなたの額に触れる。その顔はどことなく険しかった。
>ない
「……ああ。それが正しい」
六曜は笑う。
「こんなことは、忘れてしまえ」
>ある場合の情報開示
あなたは正史の自分に記憶を持ち越すことを選んだ。
そのとき、異なるあなたは世界がつじつま合わせで作られた、ひどく儚い不安定なものだと知ってしまうだろう。正気度ロールが発生する。
>≪SANC≫ 1d10/1d100
この正気度ロールでSANが0になったとき、あなたが記憶を持ち越すことは失敗する。
正史のあなたは知らなくていいことを知らずに生きていけるだろう。
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【KP情報】
記憶を持ち越しチャレンジSANCに成功したとき、改変が起こったあとの世界でも探索者はこのシナリオ内の記憶を覚えていてよい。PC、NPCの名前や能力、事件の詳細など。
また、このときSANが0になっても、ただ記憶を持ち越すことができないだけで、正史の探索者のSANが減ったりはしない。初期値に戻るだけ。
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【4話 過去】
■15年前 到着
あなたたちは無事、目的地に到着した。
15年前、2月5日。
三鷹市の国立天文台。
そこでは家族向けのイベントとして天体観望会が開かれている。
会場のあちこちに立っているのぼり旗には「あのネメシスを発見しよう!」というキャッチコピーが印刷されていた。いまからあなたたちは、あの期待を裏切らなければならない。
>≪目星≫
のぼり旗のキャッチコピーの下に、子ども向けイベントの詳細が小さな文字で載っている。
どうやら、このイベントでネメシスを発見する栄誉を与えられる子どもがひとり選ばれるようだ。
イベントの開催時刻はもうすぐである。
>≪聞き耳≫
近くを通りがかった家族連れが、息子に向かって「お星さまを見つけられる役になれるといいね」と話しかけている。どうやら、ネメシスを発見するタイミングは子ども向けイベントで起こるらしい。
>HO1限定 情報開示 【思い出す】
あなたは思い出す。
あなたとその家族が日賀板によって交通事故に見舞われたのは、この日、この場所の近くだ。
事故が起こる時刻はもうまもなくといったところ。いますぐ向かえば、事故を防げるかもしれない。だがそれはもう一つの災厄を見過ごすのと同じことだ。
それに六曜の言によれば、過去のあなたに、いまの自分を目撃されるわけにもいかない。
>【思い出す】提示後に≪アイデア≫
……誰かに頼れば、あるいは過去の自分や家族を救えるかもしれない。
だが、それによってまた、あなたの知る歴史とは差異が生まれるだろう。
交通事故が起こらなければ、あなたの家族は死なない。
雪星やHO4に出会うこともなくなるだろう。
---
【KP情報】
現時点では分岐が起こっていないのでまだ「実高市」ではなく「三鷹市」のままでいい。
PLに「ネメシスを発見する子ども向けイベント」を提示してそこへ誘導しつつ、HO1に「過去の自分と家族を助けるかどうか」を選ばせる。このとき、HO1以外の探索者がついてきていなかったときは誰かに頼る選択肢は自動消滅してしまうので、なるべくHO1以外もついてこさせること。できればHO4推奨。
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■PLに整理の時間を与える
あなたたちは状況を整理する。
あなたたちは過去のHO3がグロースを観測しないよう、策を講じる必要がある。
また、この場所には過去の二月イツカとHO2が到着しているはずだ。もし望むなら、イツカがHO2を無辜の子どもとすり替えるまえに、止めることもできるだろう。
HO2とHO3は同じ子ども向けイベントに参加するはずなので、駆けずり回らなくとも、どちらもひとりで助けられる可能性が高い。
だが、HO1の家族を助けたい場合、いますぐそちらへ向かうしかない。
HO1の無事と、HO2とHO3の救済を叶えるのは、ひとりでは不可能だ。
①グロース観測を防ぐ
②日賀板による交通事故を防ぐ
両立するには、あなたたちは手分けする必要がある。
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【KP情報】
シナリオとしては、HO1にグロース観測阻止、HO4(あるいは他の探索者)がいればHO1の交通事故阻止に向かってほしい。
たぶんPLはどれをどうやればいいか混乱していると思うので、シナリオが想定している状況と、解決条件を提示する。必要なければ飛ばしてよい。
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■日賀板による事故を防ぐ
あなたは国立天文台を離れ、交通事故が起こる現場へ急ぐだろう。
>HO2、HO3限定 ≪隠れる≫
あなたは国立天文台から出る最中、過去の自分に目撃されなかった。
>上記≪隠れる≫失敗
ふいにあなたの視界が揺らぐ。
急がなければと思うのに、足が動かない。
何故と思う思考さえ薄らいでいく。
ふいにあなたは、ひとりの子どもと目が合った。
それは過去の自分だった。
見られたのだ。
だからもう、あなたは崩れてゆくばかりなのだ。
あなたが目的の現場に辿り着いたとき、もう日賀板のトラックは怪しい動きを見せ始めていた。
前方の自動車に衝突するまで、数分もあるまい。
あなたは何らかの手段をもって、交通事故を防ぐ必要がある。
PLが提案する任意の技能によって、日賀板の注意を惹きつけたり、トラックを自動車にぶつけずに停止させることができる。HO4であれば銃で注意を惹きつけたあと、≪目星≫に成功して視線を合わせることで日賀板の正気を失わせるなどで防ぐことができるだろう。KPが許す範囲で、PLがやりたい演出を優先してよい。
PLが提案する任意の技能が成功したとき、トラックは壁にぶつかるなどして、動きを止める。
周囲の人々は驚きながらも、巻き込まれた者がいないことを確認し始めるだろう。
もちろん、過去のHO1とその家族が乗っていた自動車も無事だ。
彼らは救われたことにも、あなたにも気付かない。
幸せな日常を乗せて、どこかへ走り去っていく。
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【KP情報】
PLによる大喜利コーナー。
HO1以外がこちらに来ることを推奨する。
現場の座標は、1話で目にした事件資料を覚えていたとか、HO1に教わったとかで処理すること。
このシーンで≪隠れる≫に失敗したHO2、HO3はロストとなり、交通事故を防ぐことはできない。
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■子ども向けイベント HO2を助ける
あなたはHO2を、あるいは二月イツカを助けることにした。
HO2をすり替える前に助ける場合、二月イツカを説得しなければならないだろう。
まずは人混みの中から、二月イツカを見つけなければならない。
>HO1以外 ≪目星≫
あなたは無事、幼いHO2を連れたイツカを見つけ出した。
>HO1限定 情報開示
あなたの目をもってすれば、探すまでもない。
なにせ怪物しかいないこの人混みで、イツカとHO2の姿だけはヒトに見えるのだ。
あなたはすぐに二人を見つけ出した。
「な、なんですか……?」
あなたに声をかけられたイツカは困惑している。
彼に理由を説明し、HO2をすり替える必要がないことを分かってもらうには任意の≪交渉技能≫に成功しなければならない。このとき探索者のRPによってはプラス補正を与えてもよい。
>≪交渉技能≫
イツカはあなたの言い分に耳を傾けた。少し悩んだあと、「信じていいんですか?」と不安げに尋ねてくる。彼にとっても家族を失わずに済む千載一遇の機会なのだ。
あなたを信じると決めたイツカは、協力者になってくれる可能性もある。
KPの任意か、PLの希望によって同行させてもよい。
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【KP情報】
HO2の岐路はシナリオには影響しないけど、PL的には思うところがあるかもしれないので……。
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■子ども向けイベント グロース観測の阻止
子ども向けイベントには多くの子どもが参加している。幼いHO3の姿もある。
その保護者として同伴している、あなたが知るより若い九曜や六曜の姿も見つけられるかもしれない。
どうやら望遠鏡を覗く役目を、子どもたちの中から抽選で選ぶようだ。
既に大人であるあなたは抽選に参加することすらできない。
正攻法以外の手段を選ぶ必要があるだろう。
PLが提案する任意の技能によって、観測を阻止することができる。たとえば≪拳銃≫をロールして騒ぎを起こしてイベントを中止させる、望遠鏡を壊すなど。KPが許す範囲で、観測を阻止するPLがやりたい演出を優先してよい。このとき、イツカの協力が必要であれば頼むこともできる。
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【KP情報】
PLによる大喜利コーナーそのに。
このとき、まだグロースを観測していないHO3は不死の身体ではないので気をつけること。
HO3に危害を加えるようであれば、九曜と六曜に敵意を向けられる可能性がある。
テロリストを装うよりは、なるべく望遠鏡を壊す方向がいいだろう。
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■グロース観測阻止の達成
ふいに、世界が儚く揺らいだ。
ひとも建物も天地さえも、万華鏡のようにきらめいて歪んでいく。
あなたたちも例外ではない。
自分という存在が薄れつつあることを自覚するだろう。
根底は覆った。
滅びの予兆は失われた。
世界はもう、隔離仮想都市たる冬京を必要としない。
奇しくもあなたたちは、世界五分前仮説の実証実験を目撃した。
世界はそう在れと願われた形に構成されていくだろう。
しかし、あるいは。
忘れたくないものがあるならば、手放さない努力も叶うかもしれない。
>忘れたくないものがある
あなたは自らの記憶を握りしめる。
それは、これからの正史のあなたが、実は世界はつじつま合わせで作られるほど脆いものであると知ることと同義だ。正気度ロールが発生する。
>≪SANC≫ 1d10/1d100
この正気度ロールでSANが0になったとき、あなたが記憶を持ち越すことは失敗する。
正史のあなたは知らなくていいことを知らずに生きていけるだろう。
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【KP情報】
記憶を持ち越しチャレンジSANCに成功したとき、改変が起こったあとの世界でも探索者はこのシナリオ内の記憶を覚えていてよい。PC、NPCの名前や能力、事件の詳細など。
また、このときSANが0になっても、ただ記憶を持ち越すことができないだけで、正史の探索者のSANが減ったりはしない。初期値に戻るだけ。
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■日賀板による事故は防いだが、グロース観測を阻止できなかった
気付けば、あなたたちは国立天文台とは異なる場所にいた。
真っ先に目に入ったのは、晴れ渡る青い空。
そしてあなたたちの職場である警視庁だった。
そのとき、あなたたちの無線に連絡が入る。
『医療刑務所より受刑者一名が脱走! 繰り返す、医療刑務所より受刑者一名が脱走! 本名は日賀板礼央、近くに配達に来ていた軽トラを強奪し都内を逃走中! 応援求む! 繰り返す、応援求む!』
あなたたちは虚災対での、最初の出来事を思い出す。
日賀板 礼央による脱走。
それが、あなたたちの始まりだった。
だから、あってはならないことだった。
時空遡上が失敗したのだ。
まもなくあなたたちは六曜からの忠告を思い出すだろう。
──過去の自分に見つかったら、存在が消失するかもしれない。
この時代のこの場所には、この時代のあなたたちがいる。
まもなく彼らは警視庁から飛び出してきて、日賀板を追跡し始めるはずだ。
そのときに、もし、過去の自分たちに見つかったらいったい何が起こるのか。
あなたたちは未知の恐怖を覚えるだろう。
……あなたたちはまだ、彼の不在に気付いていない。
彼は本来禁じられているタイムパラドックスを支援したことを、組織に気付かれて処罰された。
この世界で六曜の名を出したとき、あなたたちはようやくそれを知るのだ。
「六曜なんてひとはいない」と、誰もが異口同音を繰り返したときに。
あなたたちは過去の自分たちから逃げ隠れ続けなければならない。
これから先、ずっと。
永遠に。
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【KP情報】
六曜がいない状態でシナリオ一話時点に戻る。
もしかしたら二周目の探索者たちでも九曜を倒し世界は救えるかもしれないが、一周目の探索者は継続不可になる。実質ロストエンド?
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■日賀板による事故を防げなかったが、グロース観測は阻止できた
かくして世界は作り変えられた。
HO2は実兄と離れることも、その記憶を失うこともなく。
HO3は家族が世界を滅ぼすことも、自身が絶滅の小端末になることもなくなった。
二人はもしかしたら、この世界では刑事とは違う道を選んでいるかもしれない。
だが、HO1。HO4。あなたたちは違う。
この世界でも、日賀板礼央による事故は起こった。
HO1に、血の繋がった家族はもういない。
人間が怪物に見える視界も、そのままだ。
HO4も、父の会社が倒産し、家族と離散している。
やはり、あなたたちは雪星に引き取られている。
六曜があなたたちの下を訪ねてきたのは、ある冬の日のことだった。
「はじめまして。僕は六曜。一応医者だが、今日は紅機関の小間使いとして会いに来た」
「単刀直入に言う。おまえたちに首輪付きの素質が認められた」
「おまえたちに選べる道は二つ。僕や雪星と同じく世界の裏で暗躍する怪物になるか、僕にここで殺されるかだ」
>首輪付きになる
「……そうか。不幸なことだ」
「おまえたちはもう、ひととして死ぬことはできないよ」
あなたたちは六曜に連れられ、紅機関へと赴くだろう。
そこで真実、怪物になる。
あるいは、本当の家族になるだろう。
>首輪付きにならない
「……ああ。その答えが聞きたかった」
六曜の人差し指が、指揮者めいて振られる。
途端、あなたたちの視界がずれる。
かくん、と傾いて、動いて、落ちた。
胴体と首が切り離されたのだと気づいたのは、死を迎える寸前だったことだろう。
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【KP情報】
首輪付きになる場合、ノーマルエンド。首輪付きになった探索者は原ショゴスとなり、生還だが実質継続不可となる。
首輪付きにならない場合、ロストエンド。六曜に殺されて終わる。
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■日賀板による事故も、グロース観測も防いだ
かくして世界は作り変えられた。
HO1は家族を失うこともなく、高次脳機能障害を患うこともなく。
HO2は実兄と離れることも、その記憶を失うこともなく。
HO3は家族が世界を滅ぼすことも、自身が絶滅の小端末になることもなくなった。
HO4は父の会社が倒産することもなく、一家が離散していることもない。
あなたたちは刑事にもならず、まったく違う存在になっているかもしれない。
ある日、あなたたちは同じ時間に東京の交差点ですれ違う。
もしそのとき振り返ったなら、あなたたちの物語はまた動き出すかもしれない。
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【KP情報】
トゥルーエンド。
「冬京」ではなく「東京」で正しい。誤字にあらず。
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■シナリオクリア
【ノーマルエンド】
HPとMPを全回復
首輪付きになった探索者(記憶を持ち越している)
・SAN回復 1d50
・任意の技能を一つ成長 +1d10
・クトゥルフ神話技能 +1d30
・後遺症「首輪付き」
ステータスを原ショゴスとしてのものに変更、振り直すこと。
首輪付きになった探索者(記憶を持ち越していない)
・SANが初期値にリセットされる
・クトゥルフ神話技能を含む当シナリオ中の技能成長がリセットされる
・クトゥルフ神話技能 +20
・後遺症「首輪付き」
ステータスを原ショゴスとしてのものに変更、振り直すこと。
首輪付きになっていない探索者(記憶を持ち越している)
・SAN回復 1d50
・任意の技能を一つ成長 +1d10
・クトゥルフ神話技能 +1d30
・希望するのであればステータス、技能すべてを振り直してよい。
首輪付きになっていない探索者(記憶を持ち越していない)
・SANが初期値にリセットされる
・クトゥルフ神話技能を含む当シナリオ中の技能成長がリセットされる
・クトゥルフ神話技能 +1d10
・希望するのであればステータス、技能すべてを振り直してよい。
【トゥルーエンド】
HPとMPを全回復
記憶を持ち越している探索者
・SAN回復 1d50
・任意の技能を一つ成長 +1d10
・クトゥルフ神話技能 +1d30
・希望するのであればステータス、技能すべてを振り直してよい。
記憶を持ち越していない探索者
・SANが初期値にリセットされる
・クトゥルフ神話技能を含む当シナリオ中の技能成長がリセットされる
・クトゥルフ神話技能 +1d10
・希望するのであればステータス、技能すべてを振り直してよい。
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お疲れ様でした。