もちもち 怒っている。かわいい目が四つ並んで怒っている。タケルも漣も、自分がしつこくやりすぎて怒っていることは重々承知しているが、怒っていてもかわいい。
「ニヤケんな。立場わかってんのかァ?!?」
漣が吠えて、タケルがぐっと手を伸ばして自分の頬を指先で軽くつまんだ。いい連携だ……なんて思ってまた顔が緩んでいたらしく、今度は反対側の頬を漣に噛まれた。
「いたた」
間近に寄せられた漣の拗ねた顔もかわいいし、いつもより少し強く立てられた歯も、頬に付けられた唇も、飴玉のように舐めてくる濡れた舌も全部かわいい。
「円城寺さん、本当に反省してるのか?」
「してるしてる。ほら、タケルもこっち噛んでいいぞ」
「噛むって、俺は……」
漣が自分の頬を噛んでるのを、タケルは目線をだけ動かしてチラチラ見ている。不機嫌でムッとしていたタケルの唇がモゴモゴと動いて何かを言いかけた。少し顔が赤くなってるのは、さっき自分が揉みすぎたのだけが原因じゃないはずだ。
「ほら。自分は抵抗しないぞ」
タケルにつつかれたままの方の自分の頬を指さして催促した。タケルが更に葛藤している……。かわいいな。
漣がそんな自分を咎めるようにさらに大きな口を開いてがぶっと噛んだ。
「顔、緩んでんだよ」
「これ、仕返しになんねーな……」
タケルの指がもう一度きゅっと自分の頬をつまんだけど、随分優しい。わかってる、もうそんなに怒ってないだろう?
「かわいいな、二人とも」
しまった、声に出た。
「ざけんな! しつけーの反省しろらーめん屋!」
「はは、ちゃんと反省はしてる!」
一応な。まだムッとして口をとがらせてるせいで、二人ともいつもより頬がぷくっと膨らんでいる。……色々な顔を自分に見せてくれるのが、何よりも嬉しい。
声が出てしまったついでに手も出して、その頬にそれぞれ触れた。
「というわけで交代しようか」
「ハァ!? なんでそーなんだよ!」
「二人とも充分自分の顔は堪能したよな。だから順番」
「またやんのか、円城寺さん……」
噛むのもつまむのもやめて、二人が自分の手のひらに頬をぐっと乗せてくる。まだ少し拗ねたままの顔で。柔らかくてあったかい。
……やりすぎないように、とは思うけど、二人ともこうかわいいとな。