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    masasi9991

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    世間話と膝枕の土ガマ

    ##妖怪ウォッチ

    つらつらと 2021-05-26
    「で、それで見たこともねえ奴らが、ビルの上に居てよ……なんでオレのようなのをこんなとこまで呼び出した、って聞いたら両手合わせて拝み始めるんだよ。こいつは参ったなと、なにか勘違いしてやがると思ってこっちの事情を話してみようにも、ああいう奴らは聞く耳持たねえのなんのって……で面倒になって置いて帰っちまおうかとも思ったけど、まだ足は生えてるつもりらしくて、ほっぽっておいたら延々とここに居座って地縛霊にでもなるのかなとさ……」
    「ふむ、わからん。お主はいったい何の話をしておるのだ」
    「土蜘蛛さんが訊ねたんじゃねえか。あの庭に増えた石の話だよ」
    「持ち帰ったのか? 物好きな」
    「放っちゃおけないのが、どうもオレの性らしいや。ところがさ、連れ帰ったはいいものの、奴らみんな呪われてたんで……それで蛙にでも縋ろうってんで……まあ奴らオレが蛙とは知らんでいたらしくて……」
     話してる途中に眠くなってきて、あくびをひとつ、と寝返りを打とうとした。ところがこの枕があんまり広くもないモンだから、うっかり間に落っこちそうになる。
     枕の上に伸びた身体のてっぺんの、堅苦しっく据えられた白い顔が顰めっ面をする。股の間に落ちかけたオレの頭を無言で押さえつけた。
    「足がしびれる」
    「落っこちそうだから正座をするならもっと真っ直ぐ足を揃えて……それかあぐらに座り直してくれてもいいぜ」
    「どうして吾輩がお主の注文を聞かねばならぬ」
    「膝はいくら貸しても減らねえし、それにわざわざオレが借りてやっているとも言える」
    「そろそろ店じまいだ」
    「でもあんたの手元の仕事は進んじゃいねえじゃねぇか」
    「お主の無益な話を聞いていると身が入らぬ」
    「まあまあ、あんたの言う通りただの世間話なんだからさ、構えず適当に聞き流してくれよ。ええと、どこまで話したかな。奴ら石になっちまって……」
    「石化の呪いか?」
    「いや違うな。そうだ、その呪われてた奴らを持ち帰ったはいいが、まあ結局オレにはよくわからん話しでさ。知らねえよなぁ、あんな都会で今日日何人か呪い殺してる奴が居るなんてさ。まあでもひとまずやつらそれから逃げたいって言うんで……もう死んでんだが……まあ死んでも会いたくない相手ってのは、あるわな。そんならオレの屋敷にでも隠れていればいいからさ、連れ帰ったんだ。しかし息をするのも見つかるかも知らんとか思って怖いとか……息も止まっているように見えるんだが、で……」
     喋っている途中途中、あくびがもう一つ、二つ、出てきた。どうもこいつの膝は温くていけないな。いい塩梅だ。
    「おい、寝るでない。先が気になるであろうが」
    「オチなんかねぇ話だぜ。とにかくそんなら石にでも化けてしばらく身を隠したらどうだ、と誰かが面白半分に言ったんだよ。オレはその声を聞いていないが、なんだ、家来が言うには、小鬼かなんかがいたずらついでに囁いて走ってったらしいんだわ。そっからトントン拍子で、なんか奴ら石になっちまったみたいなんだ。死霊だから……石ぐらい……なれるのか? 人間ってそんなもんだっけか? どう思う?」
    「なるほど、それはまた妙な問題だ。強い情を抱いて死ねば、人の魂にもそのような力が備わることがある。この場合は怖気であろうな。それも幾人かの心が合わされば……」
    「いやそんなに重たい話じゃねえ。オレが知りたいのは、あの石がどのくらいで元に戻るかってことなんだ。オレがというか、オレにとっちゃどうでもいいんだが、台所のえんらえんらが漬物石代わりに使いたいが、漬けてる途中に突然元に戻られたら困るって言うもんでさ」
    「それは知らぬ……。当人に聞けばよかろう」
    「しかし石は口を利かねえ。そんなわけで、オレの朝飯が浅漬けになるか、古漬けになるかの分かれ目という話さ。ああ、他愛もねぇなあ。この膝借りたまま、もう寝てもいいか? それとももっとオレの話を聞きたいか?」
    「どうせ次も下らぬ話であろう?」
    「うん、そうだ。ああそういえば、昨日あんたにやった花の話……持ってきたときにしたっけ?」
    「聞いてみなければわからぬ」
    「そりゃそうか。あれは糖蜜漬けになってたんだが……うん。眠いな……」
    「待て待て、気になるであろうが」
     瞼の閉じかけたオレの顔を、土蜘蛛が覗き込む。頬をやんわりと抓られる。しかし、眠い。引き留めようにも午睡の時間だ。


    【了】
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