if魔フィア 闇医者×金庫番 けぶるような細い雨が視界を遮る。
手を伸ばせば触れられる距離なのに、君の表情も、声も、音のない霧雨に消されていく。
かすかに動いた唇が何と言ったのか、僕にはわからなかった。
ジャバジャバとうるさい水の音に目が覚める。
しめきった窓越しでもわかるほどの雨音にズキリとこめかみが痛んだ。
「ぅ、ぅんん……」
頭が重い。胃の中に残る不快感と、異様な喉の渇き。うつ伏せに寝ていたせいで余計に症状がひどくなったみたい。
酸素不足と許容量を超えたアセトアルデヒドのせいで不調を訴える体をどうにか転がすと、安物のパイプベッドはギシリと悲鳴を上げた。
昨日、彼が訪ねてきた事は覚えている。
寝返りを打った時に鼻を掠めた、僕のじゃない煙草の匂いも夢じゃなく現実だと証明している。
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