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    yutaka115

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    yutaka115

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    ホルダー時代の兄さんと5年後の兄さんが入れ替わっちゃうラウグエ
    途中だけど一旦あげます。セッを入れるかどうかは考え中

    #ラウグエ
    laugue

    5年前と5年後の君へ目を覚ますと、そこは見慣れない内装の寝室。
    昨日は、アスティカシア高等専門学校の、寮の自室で眠りについたはずだ。このベッドは質の良い柔らかさで、拘って選んだことが伺える。寮のベッドでないことは間違いない。
    誘拐か?とも考えたが、待遇が良すぎる。

    それに、隣には、俺の異母弟。何故か全裸で、俺を抱えたまま、幸せそうな長尾でぐっすりと眠っている。


    ん??
    昨日、俺、ラウダと一緒に寝たか?


    疑問は山ほどあるが、こうしていても仕方がない。弟が俺の味方であることは明確なので、とりあえず声をかける。


    「おいラウダ!起きろ!!」


    「んん……せっかく休暇を取ったのだから、もっと寝ていても良いんだよ……。」


    ラウダは目を開きもしないで、俺を再び抱き込んで健やかな寝息を立て始めた。素肌で触れ合ったところが温かくて一瞬微睡むが、「いや、駄目だ!」と自分を奮い起こして、ラウダの肩を揺する。


    「いいから!起きろラウダ!!」

    「んん、わかったよぉ」と寝ぼけた声を上げて、眠い目を擦りながら漸くラウダが体を起こした、が。


    「ラウダ……?お前、何か、雰囲気が違わないか?」

    「ん?あ、その髪型……学生のときの、兄さん??」





    ◇◇◇◇◇





    「寝て起きたら、なぜかここにいたと。まあ、ガンダムなんて摩訶不思議な乗り物もあるくらいだから、あり得ないことではないかもしれないね。」


    ベッドの上に座り込んだまま必死に説明しているうちに、ラウダも目が覚めてきたらしい。相変わらず冷静で理性的な弟が、そう結論付ける。


    「今はA.S.127。つまり、兄さんがいた時代から5年後だ。こっちでは今火急の用件もないから、のんびり過ごすといいよ。そのうち戻るだろうし。」


    寝乱れた前髪をかき上げながら片膝を立てて話す姿からは、何と言ったらいいんだ。その、大人の色気とでもいうのか?とにかく、何とも言えない、圧倒される雰囲気があった。
    まあ、そもそも全裸というだけでこちらも気が引けてはいるんだが。
    当のラウダは気にする様子もない。下半身さえシーツで覆えばいいか、という大雑把さがラウダらしくなくて何だか新鮮だ。


    「わかった。しばらく世話になる。」


    弟なのに、弟じゃないみたいで、じっと見られると少し緊張する。そんな俺の様子を見てか、ラウダは眦を下げて、気遣うように俺の背を撫でた。


    「ね、兄さん。そんな不安そうな顔しないでよ。」

    「べっ別に、そんな顔してない!例え未来に来たとしても、この俺が!心配なんて!するわけが無いだろう!!」


    兄として、ホルダーとして、威厳を保たなければ!

    必死に強い口調で言うが、ラウダは「兄さんの学生時代、懐かしいなあ。」とますます頬を緩めるばかり。くそ、ラウダめ。今は俺の後を健気についてきているというのに、5年後はこんな感じになるのか。


    「大丈夫だから構うな!」と言うと、名残惜しそうに俺の背からラウダの手が離れる。



    その手。指に、キラリと光るもの。


    指輪?



    「ラウダ、それ……。」

    「ん?」


    もう一度、目で確認する。


    シンプルなデザインの、指輪。着けているのは、左手。薬指だ。

    それが意味することが分からないほど、俺は馬鹿ではない。


    「ら、ラウダ。お前、け、結婚したのか……?」


    ラウダはハッとして、手を隠すがもう遅い。俺は、しっかりとこの目に焼き付けた。それに、今気づいたが、ベッドサイドにはコンドームの箱も、封を切られたパッケージも、無造作に置かれている。
    よく見ると、ラウダの褐色の肌にもいくつか鬱血した痕があって……昨夜もお楽しみだったようだ。

    どうりで、この色気。


    全てが腑に落ちた。



    「5年後、ということは、今23……。もしかして、相手は、俺の知っている奴か?!」

    「そ、そうだけど!兄さん、話を聞いてくれるかな。」

    「その、せ、政略結婚じゃなく、ちゃんと、お前が好きな奴と結婚できたのか?」

    「そうだよ!宇宙で一番愛してるから、結婚したんだ!!ねえ、兄さん、こっち向いて!」


    ラウダが頬を紅潮させながら、それでも結婚相手のことを『愛してる』と、力強く宣言した。誰かの夫となって守るものができたからだろうか。俺の肩を掴むラウダの手は、記憶より力強い気さえする。

    そうか、ラウダは、ラウダが好きな相手と結婚できたんだな。

    ラウダは生まれのこともあるし、ずっと俺の後を付いてきて俺のサポートばかりしていたから、てっきり恋愛には興味がないのだと思っていたが、そうではなかったらしい。


    「じゃあ、今、幸せなんだな……。」

    「当たり前だろ!毎朝『おはよう』って言いあえて、一緒のものを見て、一緒のものを食べて、夜『おやすみ』って言って、最愛の人と一緒に眠れるのが、幸せじゃない人なんていないよ!!仕事では別行動のときもあるけど、それ以外はずっと一緒にいられる約束が結婚なんだから!!」


    熱弁するラウダと裏腹に、足元からひんやりとしたものがだんだんと這い上がってくるように、俺の心は冷えていく。

    そうか、ラウダには、そういう人がいるんだな。一緒にいたいと、一緒に過ごせることが幸せだと思える相手が。
    しかも、それは俺も知っている相手。

    全然、気づかなかった。
    俺、ラウダの兄さんなのに。


    めしゃ、と心がひしゃげる音がする。
    おめでとうって、喜んでやらなきゃいけないのに。


    今日は休みらしいが、俺が現れたせいで、ラウダは最愛の人と過ごせなくなってしまった。それに、ラウダのことだから、俺が戻るまでは面倒を見るつもりだろう。それが結果として、ラウダの幸せな時間を奪ってしまうのだという事実にも苦しくなる。


    「すまない。せっかくの休暇なのに、邪魔して。俺は本当に大丈夫だから、どうか俺のことは放っておいてくれ!!」

    「ねえ、だから兄さん!!僕からどんどん遠ざかろうとするのやめてよぉ!!!」





    ◇◇◇◇◇





    ラウダは優しいから、迷惑じゃないとか気にするなとか言ってくれたが、俺は全くそんな気分にはなれなかった。


    俺は一人でも生きていける。ラウダに迷惑をかけるくらいなら出ていく!と、家を飛び出そうとしたところを物理的に抑え込まれ、玄関前のガーデンベンチに座らされている。ラウダ、逞しくなったな……。


    俺としては、隙を見て逃げ出してやろうとも思っていたのだが、「指輪、嫌なら外すから!兄さんが出ていくくらいなら躊躇いなく外すよ!!僕の顔を見たくないならそれでもいいから、とにかく家の敷地内にいて!!」とべそをかいたような顔で言われては、従うしかなかった。
    指輪を外すと言わせてしまうなんて、ラウダにも結婚相手にも、ただただ、申し訳ない。


    ラウダが用意してくれた朝食を一人で食べていると、また気持ちが落ち込んできた。
    だって、ラウダは今頃、愛しい愛しい結婚相手との朝食を楽しんでいるだろうから。

    邪魔なのは俺。

    寂しい、なんていう権利はないのだ。





    ◇◇◇◇◇





    「本当に、学生時代のグエルじゃない。」


    癇に障るこの声は、ミオリネか。

    ラウダから連絡を受けたのか、事情は知っているようだ。以前の挑発的な物言いは無くなり、あの長かった髪も短くなっていて、嫌でも5年後に来たということを実感する。

    だが、今はそれについて考える余裕はない。


    「見世物じゃない。……何の用だ。」

    「用も何も、結婚記念日のお祝いを届けに来たんでしょうよ。」

    「結婚記念日、だったのか。」

    「そうよ。結婚記念日くらいのんびり二人きりで過ごしたい~って、1週間も休暇取るから、わざわざ届けに来てあげたんじゃない。」


    ますます、よくないタイミングで来てしまったのだと実感する。

    ラウダの、せっかくの休暇、記念日を、俺が台無しにした。

    ミオリネは、そんな俺の内心を知ってか知らずか、向かいのベンチに腰掛け、「はい。」と包みを置いた。


    「これ、お祝い。」

    「ラウダに、直接渡したらどうだ。」

    「はあ?嫌よ。表立って揉めることはもうしないけど、私、ラウダとは根本的に相いれないの。」


    俺の様子を追及するでもない様子に、警戒していた心が少しだけ和らぐ。我儘ヒステリー女だと思っていたが、5年間で少しは成長したらしい。元来賢い女だ。今のミオリネになら、聞いてみてもいい、か?



    「なあ。」

    「何よ。」

    「……ラウダの結婚相手って、どんな奴なんだ?」


    俺の問いに、ミオリネが唖然とする。唖然、というと正しくなかったかもしれない。正確には、半分驚き、半分呆れたような顔をされた。


    「それ、ラウダに直接聞かなかったの?」

    「俺が結婚生活の邪魔になっていると思ったら、聞けなかった……。俺も知っている奴らしいが、俺は全く気付かなかったし……。」


    ハァ―――っとため息をついたミオリネは、米神に人差し指を当てて暫し考え込むように目を瞑った後、ゆっくりと、言葉を選びながら言った。


    「そんなに気に病まなくてもいいと思うわ。あの弟なんだし、あんたが大事なのは昔も今も変わらないわ。」

    「だが!今は、その、ラウダは結婚していて、相手のこともあるわけだし。」

    「あんた、そんな面倒くさい男だったのね……。」


    ミオリネがジト、と睨んでくる。そんな目で見なくてもいいだろ!こっちは真剣に悩んでいるんだ!!


    「まあ、ラウダが、結婚相手にぞっこんなのは間違いないわ。初めて会ったときには既に一生この人を支えるって決めてるわ、相手宛のプレゼントとかラブレターは無に帰すわ、自分以外のところに行きそうになったらガチギレして止めるわ、最終的に、『僕と結婚してくれなかったら死んでやる!』って脅迫めいたプロポーズして結婚したらしいから。」


    絶句。
    ドラマでもなかなかない熱烈さだ。


    「ラウダに、そんな情熱的な一面があったとは、知らなかった。」

    「知らなかったのは、あんたくらいでしょ。私は小さいころからずっと睨まれていたんだから、全く驚かないわ。」


    ミオリネが立ち上がる。


    「帰るのか。」

    「そのつもりだったけど、その前にラウダに言っておくことがあるの。」


    5年間で何があったのか。

    すっかり強い女になったミオリネが颯爽と家の中に入っていくのを、俺はただ黙って見送った。





    ◇◇◇◇◇





    残されたのは、自分と、食べ終わった朝食のトレー。

    戻しにいってラウダと鉢合わせるのも気まずい、と放置していたのだが、このままにしておくのも申し訳ない。……ミオリネは、今ラウダと話しているはず。
    つまり、ラウダと会わずにトレーを戻すなら、今がチャンスでは?

    トレーを持ったまま足音を殺して、邸内に入り、廊下を移動する。キッチンは、リビングを通り抜けた先にあったはずだ。リビングからは予想通り、ミオリネとラウダの声が聞こえる。何の話をしているかは分からないが、とにかく2人が話している隙に、キッチンにコイツを置いてきてしまおう。

    リビングを通るタイミングを図ろうと、身を低くしてリビングの様子を窺う。



    「あんたねえ!!いい加減にしなさいよ!!!」



    ミオリネの怒声。
    罵られているのは、ラウダだ。ラウダは、ソファに座ったまま俯いている。
    その表情はここからは見えないが、きっと傷ついているに違いない!


    さっきまで会いたくないと思っていたのに、ラウダが傷つけられていると思った瞬間、頭が真っ白になった。



    気付けば、俺はトレーを足元に置き、ミオリネとラウダの間に割って入っていた。ラウダを背にかばうようにして、ミオリネと向かい合う。


    もう結婚して独り立ちしたラウダにとってはお節介なのかもしれないが、それでも、俺はラウダの兄だから。

    たとえお呼びでなかろうが、俺が守らなければいけないんだ!!


    「ミオリネ!ラウダに危害を加えるなら、ただでは置かないぞ。」


    ミオリネを睨みつけるが、当のミオリネは怯える様子もない。図太いやつめ。


    「危害ぃ?そういうのは、あんたの後ろのやつに言ってくれる??」


    しかも、半目で俺の後ろを指さしてきた。俺の後ろにはラウダしかいないが?

    可哀想なラウダ。せっかくの結婚記念日なのに俺に邪魔され、おまけにミオリネには怒鳴りつけられて。

    きっと、眉を下げて、心細げな顔で俺を見ていることだろう。

    安心しろ、兄さんが絶対に守ってやるからな。

    そう思って振り向くと。


    ぽ―――っ♡


    そんな擬音がぴったり合うような、目を蕩けさせ、頬を桃色に染めて、そう、まるで恋をしているかのようなラウダが、そこにはいた。


    「ら、ラウダ?」

    「グエルっ!!!」


    俺の名を呼んだラウダは、そのままぎゅうぎゅうと俺を抱きしめてきた。それはもう、痛いほどの力で。

    ミオリネがそんなに怖かったのか?!

    しかし、「痛いからやめろ。」なんて言うのは俺のプライドが許さない。とにかく落ち着かせてやらねばと背中に手を回して擦ってやると、ぐりぐりと頭を俺の首元に押し付けてくる。

    体つきは逞しくなっても、こういうところはまだまだ可愛い弟であるらしい。


    「ラウダ、落ち着いたか。」

    「私、もう帰っていいかしら?」

    「ミオリネ!まだ話は」

    「ああ、構わない。世話をかけたな。」


    なぜか俺にへばりくっ付いたままのラウダが返事をする。しかも礼まで言った。どういうことなんだ。
    ミオリネはその身を翻し、こちらを振り返りもせずに帰っていった。

    疑問符がたくさん浮かんでいる俺の両頬を、ラウダが優しく包むと至近距離で目が合う。ラウダの目は、まだ熱に浮かされたように蕩けたまま。

    何だ、それ。そんな顔知らない。


    「ラウダ、落ち着いたなら離せ。」

    「グエル、僕のグエル!兄さん!大好き!!愛してる!!」


    ああ、やめろ!やめるんだ!!
    これでは、まるで愛の告白じゃないか。
    よくないぞ。こんなの誤解を生んでしまう。

    ラウダの肩を押して、無理やり引きはがす。ラウダが戸惑った顔をしたが、それに構ってはいられない。もっと大事なことがあるだろうが!


    「お前、結婚したんだろ!俺にベタベタと懐くんじゃない!!」


    そう言った瞬間、蕩けていたラウダの目が、キッと吊り上がった。
    再び俺の方に伸ばしてくる手を振り払うと、怒ったように無理やり腕を掴まれた。

    ギリ、と音がしそうな程に強い力で。

    ラウダは、ラウダなら、こんな風に、乱暴に触れてこない。


    「離せ!!!」


    思ったよりも、ずっと冷たい声が出た。一瞬手の力が緩んだが、それでも解放してはくれない手に、俺のラウダとの違いを感じて腹が立つ。そのくせ傷ついた顔ばかりラウダと同じだ。



    「ラウダは、俺のラウダは、俺のことグエルって呼ばない!そんな目で俺を見ない!俺が言えばすぐに『そうだね。』って言って聞いてくれる!俺にべたべた触ってこない!」


    「……言いたいことは、それだけ?」


    ラウダが低い声で言う。
    そんな声聞いたことない。
    そもそも、俺がこれだけ言えば、ラウダは、困ったように眉を下げて退いてくれるはずなのに。


    「ラウダは、かわいいんだ。小言は言うけど、俺に怒ったり睨んだりしない。母親は違うけど、ずっと俺のこと、兄さん兄さんって慕ってくれる。俺のことを一番優先してくれて、決闘のときも、他のどんな用事を差し置いても、俺のサポートをしてくれる。ラウダは、結婚なんてしてないし、俺以外の奴を1番になんてしない。」


    ラウダは黙ったまま何も言わない。何か言えよ。ああ、ただの兄である俺には、弁解する必要もないということか?

    そうだよな!

    お前には愛する結婚相手がいるんだもんな!!



    「お前なんか……お前なんか、ラウダじゃない!!!」



    ぼろぼろっと目から涙が零れた。

    最悪だ。泣くつもりなんかなかったのに!
    しかもよりによってラウダの前で!!

    ああでも、こいつはラウダじゃないんだった。
    その証拠に、俺が泣いていたって、涙を拭ってもくれないし、全然言うこと聞いてくれない。
    振りほどこうとしてもびくともしないくらいに強く腕を握られているのに、それがラウダじゃないことが酷く悲しい。



    「離せよ!俺は帰る!!」

    「駄目。少なくともその状態で手を離す程、僕は馬鹿じゃない。」


    冷たくあしらわれて、ますます涙が止まらない。
    5年たったら、ラウダはこうなってしまうのか。
    俺のラウダは、5年経ったら、いなくなってしまうんだ。



    「……う、うぅ、いやだ。俺は、俺の、ラウダのところに帰りたい…離せよ…!」



    声は震えるし視界は滲むし、腕は痛いし、もう嫌だ。
    何も見たくない。何も聞きたくない。
    その場に座り込んで蹲ろうとするが、腕を掴まれているからそれもできない。床についた膝がひんやりと冷たい。
    こいつから逃げたい。帰りたい。



    「らうだに、会いたい。」





    ◇◇◇◇◇





    腕を引かれて、ラウダの胸に飛び込む形になった。「離せ」と言おうとしたところで、今度はそっと、背中に腕を回される。
    床に座り込んだ俺を、ラウダの腕が包む。俺の額に当たっているのが、ラウダの胸だ。どくん、どくん、と力強い心臓の動きを感じる。
    冷静に見えていたけれど、ラウダも、本当は動揺していたのか。

    する、と撫でるように優しく触れられると、俺の知っているラウダみたいで、つい顔が見たくなってしまう。

    腕の中で身じろぎすると、宥めるように背をとんとんと擦られる。


    「ごめん、兄さん。僕が悪かった。兄さんは過去から来たから。今の、僕の時代のこと、あまり知らない方がいいと思ったんだ。だから、隠して、誤魔化して……結果として兄さんを傷つけた。それは、本当にごめん。」

    「別に、知ったところで何てことないだろ。」

    「僕の指輪見ただけであんなに狼狽えて避けられたら、流石に……。」


    ずび、と鼻をすする。そんなこと考えずに言ってくれたらいいのに。俺はお前の兄さんなのだから、何があったってお前の味方だ。

    そう伝えたが、ラウダは浮かない顔で続ける。


    「いや、それが、そうでもないかも知れなくて……。」


    顔を上げると、眉を下げて情けない顔をしたラウダがいた。それがいつものラウダっぽくて、目をぱちぱちと瞬かせて、じっと見入ってしまう。

    幼い面影を感じたかと思えば、俺の眦に「泣いたから赤くなっちゃったね。本当にごめん。」と労わるように指を這わせてくる。不快ではないが、ぞわぞわする。この大人びた顔のラウダにはまだ慣れない。

    くそ、俺に構う前に、言うべきことがあるだろ!


    「そんなことより、何を隠してたか言え!!!」


    暴れ出そうとする気配を察したのか、ラウダが「言う!言うから!!」と慌てて続ける。

    わかればいいんだよ、わかれば。

    ふん、と鼻を鳴らすと、「その顔、久しぶりに見た。」と呟かれた。


    「何だ。この時代の俺とは、あまり会ってないのか。まさか、喧嘩して、絶縁した……とかか?!」

    「いや、そうではなくて、むしろ、逆というか……。」


    ああ?!と凄むと「分かってるよ!」と言って、ラウダは、すーはーと深呼吸を始めた。何だよ。そんなに覚悟決めていうことか。



    「あの……僕ね。グエル、貴方と、結婚したんだ。」



    アナタトケッコンシタンダ。



    「は?」


    「だから、僕、ラウダ・ニールは」

    「お前、ラウダ・ニールは」

    「貴方、兄さん、つまり、グエル・ジェタークと」

    「お前の兄、つまり、俺。グエル・ジェタークと」

    「結婚したんだ。」

    「結婚した、のか。」



    沈黙。



    「え?!お前、おおおお俺と結婚したのか?!嘘だろ?!!」

    「あーあーあー!!絶対にそういう反応すると思っていたから言いたくなかったんだよ!!ちなみに、僕の初恋はグエルだし、第一印象から決めてました!!!」

    「うっそだろ……だって、寝室にコンドームもあったじゃん…。しかも大容量の箱で……。あと、あの、キスマークって、まさか、付けたの……お、俺か?俺、お前とセックスしてるのか……?」

    「よ、よく見てるね。その通りです……ちなみに、キスマークは一回につき一個らしくて、嫉妬したときには服を着ても見えるところにつけるんだって。かわいいね。」

    「お、おおおお俺が……、そんな、破廉恥な……!!」

    「ちなみに、兄さんの時代の僕も、毎晩兄さんをおかずに抜いてるよ。」

    「やめろ!!ラウダ!かわいい俺のラウダが!!!」

    「それに関しては諦めてくれるかな。兄さんが思い描いているラウダは現在過去未来のどこにもいないよ。」


    うう~~~と唸ると、「かわいい弟でいられなくてごめんね。」と、慰めるように頭を優しく撫でてくれる。先ほどまで嫌だ触るなと拒否していたのに、じんわりと温かさが伝わるような優しい手つきにはつい絆されてしまう。
    床が冷たいけれど、そんなの気にならないくらいに、ラウダと触れているところがほんのり温かくて気持ちいい。



    「らうだぁ……。」


    もっとくっつきたくなって身を寄せたら、今度はラウダが俺の背と頭からバッと手を離して距離を取ろうとする。

    何でだ。さっきまでしつこいくらいに触ってきただろ。

    ラウダの顔を覗き込むようにして睨むと、その顔は真っ赤だった。


    「ラウダ?」

    「あの、僕さあ、一応この時代ではグエルと結婚してて。」

    「さっき聞いた。」

    「寝室の100個入コンドームが一か月もたない位には、性生活の方も充実していて。」

    「分かっている。見たから。」

    「で、その、あんまりくっ付いていると、僕もまだ若いから、今の兄さんにその気がないと分かっていても、反応してしまうかもしれないわけで。」



    反応したから何だと言うのだ。結婚している相手にそういう気持ちがない方が問題だと俺は思うがな。

    それに、今の俺は気分がいい。

    やっぱりラウダの一番は俺だった!この真っ赤な顔も、おろおろした顔も、無様に後ずさる挙動も、全部全部俺のせい!!

    おろおろと言い訳して俺から目を反らすラウダ。身を起こして、ソファのある方に後ずさろうとしている。

    逃がすか!!

    タックルの要領でラウダの腿を掴んで、ソファに引き倒す。少しは痛かったかもしれないが、倒した先はソファだ。大したことはないだろう。
    隙をついて、そのままラウダの腹の上に馬乗りになる。所謂、マウントポジションという位置。俺の圧倒的優位。

    にんまりと口角を上げて笑えば、ラウダは逆に顔を引き攣らせた。

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