終わりの果て破壊の音が響き渡るハイラルの大地。
遠くに見えるデスマウンテンは噴火しマグマが流れ、砂漠では砂塵を巻き込んだ竜巻が空を貫いている。
水がとうとうと穏やかに流れているはずのラネールでは雷雨が川を濁らせ氾濫しており村を飲み込む姿が見えた。
空は赤黒く汚れ、綺麗なものは何もない。
ハイラル城から怨念の塊が吹き出し世界に睨みを効かせている。
恐ろしい恐ろしい破滅の始まり。
そんな世界の中心で一人のリトが神獣の背中に佇んでいた。
ポツンと一人。ただ一人。
その横には壊れたマリオネットのようにガタガタと音を立てる厄災の化身の姿があり、リトを恐れるように狂い蠢いていた。
「メドー、今の情報をしっかり解析しておいて」
「大丈夫。もう終わったわ」
リトが神獣メドーに冷めた口調で指示すると、メドーは少女のような可憐な声でリトの脳内に語りかけた。
リトはそれならばと背に背負った大きな弓を厄災の化身に向けると、赤黒く渦を巻く目玉に一条の矢を放った。
震え上がりながら消滅した厄災の化身にリトは見向きもしなかった。
どうせこうなるのは分かりきっていたから。
「ねえメドー。この世界が助かる可能性はある?」
「……」
「そう」
この沈黙は否定。それも分かりきっていた答えだった。
リトは風に揺れる翡翠の髪飾りがカツンと鳴るのを聞きながら赤い瞼を閉じた。
どこかで爆発音が響き、蜘蛛のような無機物達がこちらに向かってくるのを感じた。
時期に空を飛ぶ神獣を狙いに敵達が猛進してくるだろう。
「ねえメドー」
「なあに?」
「少しだけ甘えていいかな」
「いいよ」
リトはその場にペタンと座り込むと弓を置きメドーに頰をつけて寝そべった。
羽で撫で摩り、瞼を開いた。
見える景色は暗闇ばかり。その中でメドーの心臓部だけが青く空のように輝いていた。
「大好きだよメドー」
「私も大好きよリーバル」
空を飛ぶガーディアン達に囲まれ、輝く光線がリーバルの胸を貫きメドーの心臓部を撃ち抜いた。
徐々に傾き怨念に塗れたハイラルに落ちていくリーバルをノイズが走った目で見つめ、メドーは甲高く空に向かって鳴いた。