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    知.多.半.田在住のチルライ。
    人の現パロに知.多.半.田に住んでそうって発言したので自分でも書きました。

    まだ初夏だというのに、部屋は換気をしていても既に蒸し暑い。
    夕飯も片付けも済ませてしまい、二人は食後のデザートとしてアイスを食べながらベランダで風に当たっていた。
    住宅街にあるアパートの周辺は暗い。時折通る車のヘッドライトが、真っ黒な地面をすっと白線を引くように流れていくのを眺める。
    「暇だな」
    口に咥えていたアイスの棒を離して、チルチャックは言った。
    眠るにしては早く、遊びに出掛けるにしては遅い。いくら連休前といえど、二人とも一日仕事をこなした後で、これから遠出をする元気もなかった。
    「そうだね」
    「なんかすることないのかよ」
    「うーん。あ、映画でも観る?」
    「お前が持ってるのは怪獣映画くらいだろ。もう何度も観せられた」
    「面白いだろ。宇宙から飛来した謎の生物と植物、それを焼き払う巨大怪獣」
    チルチャックはうんざりした様子で右手に持っていたアイスの棒をぷらぷらと振ると、ベランダの柵に寄り掛かる。
    「まさか通信会社の社員があんなに活躍するなんて。俺も一時はあの会社に入ろうと思ったものだ」
    「それも聞いた。なんでそっちなんだよ、もっとヘリとかなんとか出てくるだろ」
    「ヘリはすぐやられた」
    通信会社の社員だって直接戦った訳でもないだろうに、と言いかけてチルチャックは言葉を呑み込んだ。これ以上話が長くなっても面倒だ。
    「まあ、でも映画か。有りだな」網戸を開けて、部屋に一歩踏み出しながら呟く。「腹ごなしに少し歩くか」

    レンタルショップのやけに小さいカゴの中に、チルチャックは気になっていた映画のDVDをいくつか放り込んだ。
    二階建ての店内は、一階がアニメや特撮、邦画などがまとめられており、二階には主に洋画が置かれていた。
    ライオスを一階の特撮コーナーに近寄らせないように誘導し、二階の一角で共に映画を吟味する。
    「今、カゴに何本入ってる?」
    「八本」
    「あと二本適当に選べ。十本借りたほうが安いらしい」
    ライオスの後ろの壁に掲示された料金表を指す。ラミネートされた紙は、いつから貼られているのか劣化して端が剥がれかかっている。
    「そんなに観られる?」
    ライオスは顔だけを少し振り向かせると料金表を見た。
    「計画的に観るんだよ。五日しかないんだぞ」
    「七泊八日って書いてあるけど」
    「来週末は予定があって返しに来られないだろ。実質五泊六日。連休中に観終えるぞ」
    「・・・・・・そんなに借りなくてもいいのに」
    ライオスの言葉を無視して、再度棚を眺めると十年以上前に観たことのあるタイトルが目についた。
    「あ、これなんかどうだ。大分前に観たけど面白かった。ちょうど続編の2もある」
    「君のおすすめなら」
    パッケージを棚から取ってライオスに渡すが覚えがないらしく、興味深そうに裏面のあらすじを読み始める。
    ふと、ライオスは棚に目を向け不思議そうに首を傾げた。
    「あれ、このシリーズは3まであるよ。あと二本じゃ足りないんじゃないか?」
    「これは2で終わりなの。3なんてなかった」
    苦虫を嚙み潰したような顔で即答すると、ライオスの手からDVDを奪い取り、カゴに入れた。併せて棚から続編も取るとレジに向かうために階段を降りる。
    背後からは何かを察したかのように「そうなのか」という返答が聞こえた。
    「あ、チル。待って」レジ前の菓子コーナーでライオスが立ち止まった。「ポテチ、買っていこう」
    その言葉に頷いて、乱雑に積まれた箱の中から一袋手に取ると、不満そうな声が上がる。
    「またソルト&ビネガー?」
    「ビールに合うだろ」
    「・・・・・・家にあったっけ」
    「実は奥の方に隠してあった」
    呆れたように笑うのを横目にチルチャックはレジに向かうが、ライオスはその場に留まってじっと別の菓子を眺めていた。

    出入口前に置かれた、虫除けのための巨大な扇風機に乱された髪を、手櫛で直しながら帰路を並んで歩く。
    十時近いからか、車も人通りも少ない。いつも通りの静かな夜だった。
    「どれから観ようね」
    「お前が一番興味なさそうなやつ」
    「ええ?」
    「今日は興奮したお前が朝まで考察だのを話すのを聞くつもりはないからな」
    不満気な声を上げるライオスを笑っていると、路地の先から車のヘッドライトが向かってくるのが見えた。
    チルチャックはライオスの持っていたレンタル店の袋を軽く引っ張ると、道の端に寄り、車が通りすぎるのを待つ。
    車が通りすぎて袋を離そうとするが、その前にライオスに手を取られ持ち手の一方を握らされる。
    「ビール、何が冷えてるの?」
    「・・・・・・サッポロ」
    「いいね、早く帰ろう」
    大して大きくも、ましてや重くもない袋を二人で持つのは酷く滑稽で、歩きづらくて仕方なかったが、隣の男の嬉しそうな様子にチルチャックは口を噤んだ。
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