魔術学校の中は複雑に入り組んでいてまるで迷路みたいだ。
誰が何のために使っているのか分からない小部屋がたくさんあって、けれど不思議なことに埃も積もっていなければ、机の上には先ほどまで誰かがここにいた証であるかのように、インキも乾ききらない紙束が置いてあったりする。
マルシルは研究室からも寮からも遠い小部屋に体を滑り込ませた。
何年もこの学校にいるが、この部屋が一番人気がない。
誰が来るわけでもないが、隠れるように机と椅子の陰になる場所に座り込むと膝を抱える。
窓から差し込む夕日が影を落としたことで、マルシルの姿はすっかり隠れてしまった。
制服の真っ黒なワンピースは砂や埃が目立つ。普段なら絶対に嫌なのに、今は汚れることも気にならなかった。
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