ドクターがソーンズの髪を切る話「ドクター、少しいいか」
執務室の扉が滑らかにスライドしてソーンズが顔をのぞかせる。
「やあソーンズ。どうかした?」
ドクターは手にしていたペンをデスクに置いて、来客を迎え入れる。
「人事部から通りすがりに書類を受け取った。これにサインを」
必要事項だけを述べて、ソーンズは薄いファイルをドクターに手渡す。
「ああ、さっき連絡を受けたよ。ありがとう。……うん、問題なし」
中の書類を取り出し、事前にメールで読んだ文章を軽く目で追うと、さっとペンを走らせた。
「それにしても……」
視線を上げて、目の前のオペレーターの髪を眺める。ドクターの視線が自分の顔からわずかに逸れていることにソーンズは首をかしげた。
「どうした、何か気になるのか」
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