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    ゆるゆる書いている天使かりむと悪魔じゃみうのパロディ小説その2です
    天使かりむが悪魔じゃみう追いかけて堕天したはなし

    #ジャミカリ
    jami-kari

    「飛べないとは?」
    「えっと…」

    変わらず雨が降り続いている、朝の10時。
    背中から小さく白い羽を生やした カリムと名乗る赤子は 俺の質問にしょんぼりうなだれている。

    (あしたには、かえるから)

    昨夜、そう言ってすやすやと寝入ったこいつは 俺の服の袖をぎゅっと掴みながらそれはもうぐっすりと眠った。ひとんちのベッドで。
    もちもちとした丸い指をゆっくりと俺の袖から引き剥がし、気が済むまでふにふにほっぺを突つきまわしてやったあと 物音を立てないようにそっと部屋から出た。

    「疲れた」

    ソファに寝転び思わず独り言が漏れる。ただでさえ雨の日の夜は気が滅入るというのに、あいつといるとそれだけで何故かぐったりする。そもそもなんであんな世話を焼いてやったんだ。俺らしくない。
    まあ、明日には帰るというのだから あと数時間で解決するだろう、それまでの我慢だ。

    どうせ起きたらお腹すいただの着替えがないだのじゃみう〜だの言う姿が容易に想像がつくので、まだ雨に濡れたままのあいつの服の他にももうひとつ服を用意しておくかと思いまたクローゼットを漁った。
    前住人の服が詰まったクローゼットの中には 白くてふわふわとした手触りがよくいかにも高級そうなあしらいが施された服が多い。またも適当に見繕い、何着か手に取るとそのままリビングの椅子へかけておいた。

    手が痛い。
    きっと慣れないことをしたせいだろう。指の先が何故だかじんわりと痛む。
    ふかくため息をつきながら、やけに広く静かに感じるリビングで 窓の向こうにある青白く輝く水に濡れた空を見上げた。



    「じゃあな〜〜!」

    まだ弱く雨は降っているが、薄く光る朝日の中でそいつは振り返って元気にそう言った。
    本当に、なにをしにきたんだこいつ。


    「はい さようなら」

    俺は幼稚園の先生か。もういい。
    別れの言葉を言い放つと、じっと見上げてくるそいつから視線を切り上げて玄関の扉を開け 俺は淡い日光から遠ざかった。鍵を閉める。

    本当に、疲れた。

    つい情けをかけてしまったが、もうこんなことはしない。
    それにこんな住居にだって、いつまでも居たくはないんだよ本当は。

    ふと廊下を見ると、カリムのものと思われる小さな白い羽が てん と落ちているのが視界に入った。
    抜け毛を落としていくな。

    「というか、あんな小さなぴよぴよした羽で飛べるのかアイツ」

    俺は少しでも疑問点を残したままでタスクを終了させることが苦手だ。
    後々の影響と 問題点解決のため再思案する手間を考えたら いまのうちに面倒ごとの芽は潰しておいた方が良い。



    そっと外に出て門扉のところまで行き、あたりを見渡す。
    あの短い足と羽ではまだ遠くまでは行っていないはずだ。
    カラスにでもつつかれて、いじめられてるのではないか。

    そんなことを思っていると、ちょうど道路の脇を歩いている小さな姿を捉えた。
    お弁当と 着替えをくるんで持たせた布バッグを持って、小雨の中てくてくと足をすすめている。
    のんきに鼻歌など歌っている。

    つい気になって 追いかけてしまう。
    どうせそのうちお仲間が迎えにでも来るんだろう。
    恩を売るわけではないが、面倒をかけられた礼のひとつでももらっておいてもいいかもな。

    そんなことを思いながら、10分ほど歩いていると街の中にある公園にそいつは入っていった。
    石畳で出来ている道を歩き、森林の傘をうまく使いながら 雨の中さらに水を巻き上げている噴水の近くへと向かっている。

    「よいしょ」

    大きくその葉を広げたケヤキが近くに育っている。
    ちょうど雨があたらない居心地良さそうな木陰の椅子に座り、そいつはふうと空を眺めた。
    「あ」
    そして俺と目があった。


    もう、飛べないんだ。
    そいつはそう呟いた。


    ーー
    「飛べないとは?」
    「えっと…」

    変わらず雨が降り続いている、朝の10時。
    背中から小さく白い羽を生やした カリムと名乗る赤子は 俺の質問にしょんぼりうなだれている。

    「ほんとうは、だめなんだ。ジャミルに会いに来ちゃだめだって言われた。」
    「ほう」

    それは、俺がお前とは絶対に相容れない生き物だからか。
    心のざわつきを誤魔化すかのように、カリムのむにむにとほっぺをつつく。
    どきどきとする心臓の音を反映させたかのように 指の先がじんじんと熱くなる。

    ほっぺをつつかれたままカリムは答えた。

    「でもそれでもいいやって。ジャミルに会えるなら、飛べなくたっていい。」
    「は?」
    「会えただけで、いいんだ。」

    愛が重すぎないか。
    俺はお前のことなんて、知らないって言っているのに。
    本当に人違いではないのか。お前は天使なんだろ。神の使いなんだろ、俺みたいな存在に関わるなよ。

    「迷惑だってわかってる。邪魔にはならないから。」
    「それで」

    自分じゃ何にもできないのに、邪魔にならないと説得できるだけの根拠もないのに。
    そう言い張るこいつに向かっておれは1つ提案をした。
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