「お誕生日おめでとうございます!」
晴れやかな声と共にプチケーキが配膳された。店内の人々が店員の囃し立てる歌声に乗せられて疎らに手拍子を始める。歌そのものは日本でよく聞くものと変わりなく、歌詞のみがハワイ語に変わっている。ハウオリラーハナウ、イヤーオエ、とゆったりとしたリズムで何度も節が回る。気が付けば和やかな祝いの空気に包囲されていた。
観光客向けのサービスなのだろう、ホールスタッフの一人が飾られていたウクレレを手に取り弾いている。いつの間に出身時代データを握られていたのか。知られていればシライよりも優先的に襲撃されていてもおかしくはない。だが、それもまたクロックハンズの企みのうちなのかもしれず、本部の状況が気にかかる。敵の真意には触れられぬままだ。マイ=ラッセルハートと同じく、ハイドも黙秘を貫いている。
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