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    だろい

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    だろい

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    ショタisgさんを自分好みに育てる鬼のカントrnちゃんの話、の暫定冒頭。ここからどうやってエロくするんだ……頑張ります……
    冒頭だから全然エロくないので全公開にする

    #潔凛
    rinJae

    鬼が住まう家 R-18 少年は人気のない山の中に一人蹲っていた。
     膝に顔を埋め、栄養が行き届かない小さい身体を更に小さく丸めている。ボロボロの布切れから覗く腕や足は酷く痩せ細り、大人の男が少しでも力を入れたらポキリと折れてしまいそうだ。草履すらないのかそれとも途中で壊れてしまったのか、少年は裸足で足の裏は泥や雑草の汁で汚れ、砂利道を歩いていたのか所々血で滲んでいる。せめて水で洗えばまだ良かったのだろうが、幼い少年はこの広い山の中からピンポイントで川を見付ける事は難しいだろう、化膿するのだって時間の問題だ。尤も少年にとって、それすらどうでも良かったのだが。
     少年は所謂口減らし、簡単に言うと捨て子と言う奴だった。近年旱魃や病が蔓延る世の中で作物が育たないのも若い働き手から幼い子供、年老いた老人が次々と死んでしまうのは仕方のない事だった。
     そう、仕方のない事。
     少年は少ない作物で遣り繰りする村から捨てられたのだ、勿論、それだけが理由と言う訳ではない。少年の瞳の色は、空より濃く、海のような美しい瑠璃色をしていたのが捨てられた一番の理由である。少年は捨てられた村から忌み子として扱われていた。周囲が黒目や焦げ茶であるのに一人幼い子供が異なる瞳をしていれば心に余裕のない村の大人達は気味悪がった、子供特有のクリクリとした大きな瞳や痩せこけた頬を見れば分かる通りその瞳も窪んでいる、それがより一層その瑠璃色の瞳を際立たせていた。
     そして村の人々はこう考えた、この子供がこの飢饉を招いているのではないだろうかと。だったら生贄になり殺してしまった方が自分達の為になるのではないか、と。
     だから少年は逃げ出した、生きたかったから、死にたくなかったから、逃げた。けれど逃げた先には何もなかった、子供の脚では行ける場所など限られているし、抑々栄養不足の身体では体力だってそう多くない。出来る限り遠くへ、遠くへ逃げて来たつもりだったがここが限界だった。くぅくぅ鳴っていた腹は何時しかその音を鳴らす事が出来なくなり、薄く柔らかい子供の脚の裏は皮膚が剥けていた。もう一歩も歩けない、歩ける程の体力も筋力もない。少年が大きな木の下で一休みするように腰を下ろしたのが、つい3日程前の事だ。
     もう3日、3日も飲まず食わずである前に逃げ出す前からずっと少年は何も口にしていない。少し嘘を吐いた、あまりの空腹に耐えかねて僅かな雑草を引き抜いて口にした事がある、根っこは土だらけで殆ど萎びている雑草を口にした。そして吐き出した。
     雑草だった物と僅かな胃液が少年の口からポタポタと落ちる、胃液によって焼かれた喉が乾燥し切った喉に染みて酷く痛んだ。吐き出した身体は異物に何度も痙攣する、とっくに枯れ切ったと思っていた涙腺はまだ生きていたようで、ポロポロと生理的な涙を零しているのを見た少年はまだそんな水分があったのかと場違いな事を考えていた。
     ピクリとも動かない少年は瑠璃色の瞳を閉じて縮こまる、傍から見たら死んでいるように見える事だろう、いつ死んでもおかしくないと言うのに少年の生命力は存外しぶといのか未だに生き永らえている。早く死んでしまえたら楽だろうに、そんな事をつらつらと考えては眠る、その繰り返し。
     そんな時、ジャリ、と足音がする。少年の近くを誰かが通り掛かったようだ。
     こんな山に人などいないだろうに、獣なのだろうか、真面に考える事すらできない少年はそう考えていると随分と高い位置からおい、と低い声が響く。

    「そこのお前、死ぬのか」
    「……」
    「それとも、口が利けねぇのか」

     口が利けない訳ではない、利く程の気力がないだけだ。死ぬのか? どうだろう、きっと少年はそう遠くない内に死ぬのだろう。誰にも知られずひっそりと死に、鈍色の空をクルクル回る烏にその死骸を突かれ、やっと肉にあり付けた山の獣達に喰われる。元より肉なんて部位は残っていないのだからそう食える部分だって多くないだろうに。
     じっとしている少年を誰かがずっと見詰めている、本当は居心地が悪いから早く立ち去ってくれれば良いのにその人は動く気配が感じられない。
     それにしても随分とハキハキとした声だった、焼けて枯れて掠れてしまった少年の喉と違いしっかりと言葉を発する事が出来る。子供だからとか何も食べてないからだとかそんなのが言い訳に聞こえる程その人の声が遠い、恐らく相当背が高いのだろう。羨ましい事だ、少年はそうなる前に死んでしまうと言うのに。
     何も答えない少年にその人物は一歩、近付く。そして布の擦れる音がして僅かに視線を上へ上げる、汚れ一つない真白い着物の生地と真っ白な足に立派な草履が見えた。

    「お前、生きたいか」
    「……」
    「死にたくないなら、俺と来い」

     手を、差し出された。
     少年は暫くその大きくて白い掌を見詰める。その手を握っても良いのだろうか、少年とて馬鹿ではない、自分が村から忌み嫌われている事も知っているし何の労力になる事もない、遠くにあると言われている都の子供達のように清潔で健康と言う訳でもない。少年を連れて行く意味が、見出せない。
     躊躇っている少年にその人ははぁ、と一つ溜め息を零してから立ち上がる。ほらやっぱり、自分を連れて行くなんてそんな都合の良い事、起こるはずもない。再び視線を下に下げようとした少年は、突如身体が浮いた。地に足が付いていない、吃驚してその目を開くと、より驚く。
     角、青み掛かった鋭利な角が、生えていた。
     人外と呼ぶにふさわしいそれを覗けば、その人は、少年が今まで生きて来た中で一番美しい人だった。
     少年と似て非なる花緑青の瞳に雪のように透き通る白い肌、少年を抱き抱える腕は一本だけ。地上が遠い、この人は少年が想像していた通り随分と背の高い人の様だった。少年が村から出て行く前に聞いた単語を手繰り寄せて思い出す、鬼、少年の本能が今目の前にいる人が鬼であると告げた。美しい青い鬼は少年をマジマジと見やりふぅん、と詰まらなさそうに呟いた。

    「やっと見付けた」
    「……?」
    「お前、名前は?」
    「……っ、……」

     声が出ないながらに少年はパクパクと口で名前はない、と伝える。その鬼はそうか、と呟いた後になら俺が名付けてやるとも言う。

    「これからお前は潔世一と名乗れ」
    「……ぃ?」
    「行くぞ、俺達の家に帰るんだ」

     家、少年……潔にとって一番縁のないモノ、それをこの鬼は潔を連れて帰ると言った。綺麗な着物だと知っているけれど潔はギュウッと掴む、殆ど力のない子供が握った程度では深い皺にすらならないがそれでも潔は持ち得る限りの力を込めた。
     温かい。
     布越しに伝わる体温に潔はポロリと、一粒の涙を零した。
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