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    other8e

    ジャンルよろずの腐。倉庫代わり。現在@8e1eにひきこもり中

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    幸せであれ
    ※しじみ食べたことないので食感は検索してみたけど実際のところ知りません

    #蘭嶺
    orchidRidge
    ##蘭嶺SS

    「嶺二」
    ぼくの名前を呼ぶ声にゆっくり目を開けると、ベッドの端に腰をかけたランランの姿があった。
    「おはよう、嶺二。やっと起きたな」
    ランランはぼくの頬をそっと撫でてふわりと微笑む。少しくすぐったい。カーテンの隙間から射し込む陽の光が、ランランのまだセットしていないふわふわの髪の毛を明るく照らしてきらきらと輝いている。
    「いまなんじ?」
    身を起こしながら聞くと、7時だと教えてくれた。ちょうどいい時間だ。
    体を起こしたものの疲労の残る体はまだ少しだるくて、ベッドの上でぼうっとしてしまう。ランランの小さく笑うような声が聞こえたかと思うと、ぎしりとベッドの軋む音と唇に優しく触れる感触。それにうっとりとする間もなくランランはぼくから離れて、物足りなさを感じて見上げるぼくの髪を大きな手でくしゃくしゃとかき乱した。
    「ちょっとー!」
    「目ぇ覚めただろ?朝飯作ってあるから早く顔洗ってこい」
    「うん」


    着替えは後回しにして、顔を洗って歯を磨いてリビングに向かうと、美味しそうな匂いがぼくを待っていた。
    「わー!すっごい!和食だ…!」
    テーブルには、お味噌汁に焼き鮭に卵焼きが並んでいて、どれもまだ白い湯気が登っている。どれもとってもおいしそう。
    香りにつられたのか椅子に座ると同時にぼくのお腹がぐうと鳴る。ランランが笑いながらぼくにごはんを盛ったお茶碗を渡してくる。恥ずかしいけど、こんなおいしそうな料理を前にしたら仕方ないよね。
    「いっただきまーす」
    まずはお味噌汁を手に取ればそこには黒い貝がごろごろ入っていた。
    「しじみだ」
    「苦手だったか?」
    「ううん。昨日の打ち上げのお酒が結構残ってるからありがたいよ」
    ランラン、ありがとう!と高い声を作って肝臓もランランに感謝してるよ、と言えば呆れた顔をされてしまった。
    「昨日仕事でしじみ採りして、少し貰ったんだ」
    「そうだったの。寒かったでしょ、お疲れさま。うわっすっごくおいしい」
    身のしまった寒しじみはコリコリとして、うま味が濃くてとてもおいしい。お味噌汁にもよく合っている。
    「打ち上げがあるって言ってたからちょうど良かっただろ」
    「覚えててわざわざ作りに来てくれたの?れいちゃん感激!」
    おまけに、ランラン大好き、と言えばランランの目元がほんのり赤く色づく。
    「いいから黙って食え。冷めるぞ」
    照れ隠しだろうけどぼくから目線をそらし口早に言うと、卵焼きを口に頬張った。
    「はーい」
    と返事をしてぼくも食事に戻る。
    甘めの卵焼きもお魚もとっても美味しくて、あっという間に平らげてしまった。
    「ごちそうさま。美味しかったよ。ありがとね、ランラン」
    「ん」
    時計を見ると7時半を過ぎたところ。着替えてから髪をセットする時間も充分にある。
    そこでランランがまだ部屋着にしているスウェットパンツとトレーナー姿なことに気がついた。カラコンもいれてないし、髪の毛もツンツンしていない。
    「ランラン今日オフだっけ?」
    「いや。今日は午後から」
    「あー、寝る前に聞いた気がする」
    「言ったからな」
    昨夜は、というかたった数時間前にへとへとで帰宅したぼくは、なぜかぼくんちにいたランランに迎えられ、甲斐甲斐しくお世話をされてベッドに運ばれて抱きまくらよろしくランランの腕の中にくるまれて気がつけば朝だった。
    体力が限界なのもあったし、あれよあれよという間でなにかランランと会話した記憶はあるけど内容は曖昧だ。それにランランがベッドから出ていったのも全然気が付かなかった。以前のぼくなら考えられないことだ。すっかりランランがいることが当たり前のようになってしまったみたい。


    支度を済ませて玄関に向かうと、ソファで船を漕ぎ始めていたランランも起きてついてきた。目がとろんとしていて眠そうだ。
    「寝てていいのに」
    「このあと寝るからいい」
    ふあ、と大きなあくびをひとつ。
    「今日も遅いのか」
    「うーん。日付変わる前には帰れるかな。ランランは?」
    「おれもそのくらい」
    「今日もうち来る?」
    ランランは少し悩む素振りをみせてから肩をすくめる。
    「今日は帰る。やることあるしな」
    「そっか」
    残念。それが表情に出ていたのか、ランランが帽子の上からぼくの頭をぽんぽんする。寝起きの時とは違って優しい触れ方だ。
    「また今度な」
    「うん」
    ランランが帽子のつばを少しあげる。まぶたを閉じれば優しいキスが唇にふってくる。
    離れるのが名残惜しい。目を開けるととびっきりに優しい顔をしているランランが瞳にうつる。ぼくの彼氏は今日もかっこいい。その大好きな姿を目に焼き付けて次に会える日まで乗り越えよう。
    「行ってきます」
    「おう」
    手を振れば、ひらひらと振り返してくれた。



     数日後、ランランちにお泊りを決めたぼくは、ランランと二人で夕食後のまったりタイムを過ごしていた。
    ソファで隣通しぴったりくっついて、他愛もない話をしながら時折みかんをつまむ。
    ランランが番組の景品でもらったみかんはとっても甘い。一箱分あるみかんはあっという間になくなりそうだ。おいしいみかんにご満悦なランランはたまにもっと食えとばかりに皮を剥いてくれたみかんをぼくにも与えてくる。
    反対にぼくが剝いてるそばから口をあ、と開けてぼくに口へ運ぶのを強請ってくることもある。
    甘やかしたり、甘やさかされたりだ。

     なんとなく話が途切れたタイミング。ぼくはこの前から考えていたことを口に出す。
    「ねえ、ランラン、一緒に暮らさない?」
    「は」
    こちらを見るランランは目をまんまるにさせている。
    「……嫌?」
    「いや、嫌じゃねぇよ。おまえから言われるとは思ってなかったから、驚いた」
    ランランの言うことはもっともだ。いつもこわがって一歩を踏み出せずにいたのはぼくだから。
    でもあの日の朝、ぼくが夢みた日常みたいで、こんな日が続いたらいいのにって思えた。
    「こないだ、ランランが朝ごはん作ってくれた日あったじゃん?あんな朝がすごせるの、なんだかすっごく幸せだなって思ったんだよね。一緒に住めば、毎日とは言えないけどもっとこういう朝があるのかなって思ったらすごくいいなって」
    「めし係かよ」
    「違うって!」
    「分かってる。冗談だ」
    「んもう!ぼくちん結構真剣なんだけど」
    「悪い」
    「で、どうなのランランは。ぼくと一緒に住みたい?今のままがいい?」
    「……住みたい、とは思ってる」
    言い渋るランランの理由は分かってる。
    「今すぐにってわけじゃないし、ゆっくり考えよ。ねっ」
    「ああ」
    ランランの都合もあるからすぐには無理だけど、一緒に暮らせる日はきっとそう遠くはないと思う。
    ぼくが夢みた景色とはほんの少し違っていたけど、隣にいるのがランランであることがとっても幸せだ。ランランにとってもそうであってほしいからぼくもちゃんと愛を伝えたい。心のままに素直に生きた先で、きみと一生隣で笑い合っていたいから。
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