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    ヌヴィフリ小説置き場
    たまに原神考察もあります!

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    ヌヴィフリ
    王様としてフォンテーヌを守るフリーナちゃんとフリーナちゃんの近衛騎士のヌヴィさんのお話
    自分が道を踏み外したら殺して欲しいと願い断罪の剣をヌヴィに託すフリちゃんと自分の命も握って欲しいと誓願の剣をフリちゃんに渡すヌヴィ。
    互いの命を剣に乗せ、歪んだ鎖で命を縛るヌヴィフリです

    #ヌヴィフリ
    NeuviFuri

    王と騎士と二本の剣この話は原神の世界とは少しだけ設定が違いますが、大陸の名前や国の名前は同じ名前です


    もし僕に何かあれば、僕を殺してくれるかい?ヌヴィレット






    ヌヴィレットside


    私が住むフォンテーヌという国は水の国である。
    この世界には七つの国がありそれぞれ王が治めている。
    代替わりが激しい国もあれば一人の王が長く治める国もある。
    フォンテーヌは代替わりがそれなりに行われる国であり、現在の王は幼い少女だ。
    とはいえ彼女は水の精霊である為、歳は五百を超えている。
    ただ先代の王と今の王は双子でその為、今の王、フリーナは裏方の仕事とそして人寄りの感情の持ち主だったこともあり、国の政治に携わることはなかった。彼女は人が魅せる舞台が好きで、舞台に上がることが多かった。
    彼女の歌劇は素晴らしく、国ではフリーナのファンはとても多い。
    だがフリーナの姉であり王であったフォカロルスが亡くなり、フリーナは自動的にフォンテーヌを守る王となった。
    私はフリーナの近衛騎士であり、ずっと彼女を見てきたが最近のフリーナはあまりにも元気がない為、心配はしている。
    そんな彼女から私は呼び出され、謁見の間に向かう。
    ドアを開けて謁見の間に入るとフリーナは白のロングドレスを着てぼんやりと天井を見つめていた。
    背中が開いたドレスは彼女に良く似合っており、美しい。昔は男装に近い格好をしていたが、王となってからはドレスを身にまとっており、国を治める王らしくなってきたと思う。

    「フリーナ殿」
    「ヌヴィレット…呼び出してごめんね」
    「大丈夫だ。しかし君からあの様な手紙が来るとは、何か重要なことなのだろう?」

    今回の呼び出しは手紙であり、フリーナらしくない。私は彼女の近衛騎士であり傍に居ることが多い。だから直接伝えたら良いが手紙ということはかなり重要な話なのだろう。

    「そうだよ。とても重要でキミにしか頼めないことだ。ヌヴィレット、この剣をキミに授けたい」

    フリーナが手を前に出すと美しい青のレイピアが現れた。
    フリーナは戦う時、剣を使うが青のレイピアは彼女の剣ではない。

    「この剣は断罪の剣(つるぎ)。このフォンテーヌの王を殺せる唯一の剣(つるぎ)なんだ」
    「王を殺せる?」
    「そうだよ。このフォンテーヌはね、昔から王が道を踏み外してきた。姉のフォカロルスはそんな事はなかったけど、それより前の王は道を踏み外したと言われている。その為にこの剣が作られた」

    フリーナは微笑みながら私を見つめる。

    「だからこの剣はキミに持ってて欲しいんだヌヴィレット。そしてもし僕が昔の王のように道を踏み外したらこの剣で僕を殺して?」

    フリーナの言葉に、私は何も言えない。言葉が上手く出てこない。
    何故フリーナはそんな残酷なことが言えるのだろう?
    君を失えば私はどうやって生きたらいいのかさえ分からない。五百年間、私はフリーナと共にあり近衛騎士として過ごしてきた為、私はフリーナを愛している。その愛は王に抱く愛ではなく、一人の少女に抱く感情である。
    きっとフリーナが道を外しその断罪の剣で彼女を殺したら私は一緒に死ぬと思う。
    それほど迄に私はフリーナを深く愛している。
    君を殺す約束などしたくない。
    もしフリーナがいつか道を踏み外し、その時、フリーナを殺したら私も一緒に死ぬと言いたい。
    だがそれを言うことは不可能だ。
    彼女が私に道を踏み外したら殺して欲しいと願うなら私は応えるしかない。
    それが近衛騎士の役目であることはこの数百年で痛いほどよく分かっている。
    だがそれでも君だけを殺すなど私には出来そうもない。
    そこまで考え、私も何も無い空間に手を伸ばす。そして一本の剣が現れた。

    「ヌヴィレット?」
    「君が道を踏み外した時、殺して欲しいと願うなら私はそれに答えよう。だが変わりに私の命も君に握っていて欲しい。フリーナ」
    「キミの命?」
    「ああ。この剣は誓願の剣という。私が騎士になった日に貰った剣だ。剣を振るうことは滅多にないが騎士に取って、剣は命でもある。だから君に持っていて貰いたい。フリーナ」

    私の言葉にフリーナは色の違う美しい瞳を潤ませそして小さく頷く。

    「わかった。僕がキミの命を握る。その代わり僕が道を踏み外したら殺してね」
    「ああ」

    私達は剣を交換する。
    互いの命を握ることは呪いの鎖のようなものだ。だがそれでも私は良かった。
    歪んだ鎖でも愛しいフリーナを縛れるならそれで……










    フリーナside


    断罪の剣。その剣がいつ出来たのかは分からない。このフォンテーヌに伝わる王殺しの剣。
    本来それは僕の持ち物だった。
    王だった姉のフォカロルスが僕に渡した。
    自分が道を踏み外した時に殺して欲しいって……

    このフォンテーヌという国は歴代の王が道を踏み外している国である。
    それはこのフォンテーヌが正義を司る国だからというのもある。正義を貫いた王は最後道を踏み外してしまった。
    フォカロルスはそれを知っていたからこそ、彼女は道を踏み外さないように、僕に断罪の剣を渡した。
    フォカロルスの死は寿命だったけど、僕は昔の王のように道を踏み外す可能性は高い。
    僕は王に向いてない。向いてないから道を踏み外す。僕の中にも国を守りたいという正義はある。だがもし僕の中にある正義が民とは違う方に行くと、きっと道を踏み外してしまう。

    だから僕は断罪の剣をこの国の水龍であり、僕の恋人であり近衛騎士のヌヴィレットに託した。
    だがこの選択はとても酷なものだ。
    彼は水龍だけど優しくて僕には甘いとこあるのも知ってる。だから、彼は僕を殺したら自分も命を絶つかもしれないという思いはある。
    あの時、僕が道を踏み外したら一緒に死んで欲しいと言えたら良かった。だけど頼むことは出来なかった。ヌヴィレットの命は彼のもので僕が操ることは出来ない。もしその言葉を出せば、ヌヴィレットを強い思いに縛り付ける。
    だから、道を踏み外したら殺してとしか言えなかった。
    自室のベッドの上で僕は自分の体を抱きしめる。

    「ヌヴィレット…」

    僕の愛しい水龍…
    僕は立てかけられている剣をみる。誓願の剣。ヌヴィレットの剣。
    僕に渡された彼の命。
    僕らは今日、互いの命を互いがもつ剣に乗せたんだ
    命を剣に乗せるなんてまるで互いの命を鎖で縛ったみたいだ。
    けどそれでも僕は嬉しいんだ。
    ヌヴィレットの命を鎖に縛り付けれたことが……
    そう思いながら僕は眠りに落ちた。







    次の日から僕の腰にはヌヴィレットの剣が、ヌヴィレットの腰には僕が渡した断罪の剣が装備されている。
    僕とヌヴィレットが恋人だということは僕のもう一人の近衛騎士であるクロリンデしか知らない。
    だから僕らの逢瀬は夜も更けた時間、ひっそりと行われる。

    「フリーナ」
    「なんだい、ヌヴィレット」

    夜も更け、フォンテーヌが眠りについた時間。僕とヌヴィレットは僕の部屋で逢瀬をする。
    部屋に入って来たヌヴィレットを見つめる。
    彼の腰に刺さった断罪の剣を見ると、ヌヴィレットを鎖で縛り付けてるみたいで、申し訳なさと嬉しさが混じった醜い感情が胸の中に起こる。
    ヌヴィレットは上着を脱ぎ、シャツとズボンになり、僕をベッドに押し倒す。

    「んっ…ふっ、ヌヴィ…レット」

    キスをされて僕は彼の背中に手を回す。

    「フリーナ。今日は何も無かったか?」
    「特にはないよ」

    今日は特に何も無かった。平和な日。
    ヌヴィレットは良かったと言って僕のドレスの胸元に指を引っ掛ける。

    「いつも思うのだが、この服は少し露出がありすぎでは無いか?」
    「仕方ないよ。僕は王だから相応しい格好をしないといけない」

    昔は男装ぽい格好をしていたが王に相応しい服はドレスだと言われたから今はドレスを着ている。

    「このドレスは誰がデザインを?」
    「デザインは知らないけどドレスを選んだのはクロリンデだよ。僕の近衛騎士は君とクロリンデだけだ。服を選ぶのも昔から彼女がしてくれる」

    同性の彼女が選ぶドレスはどれも大人ぽい。恥ずかしいと言えば、クロリンデは微笑みながら、よく似合っていると言い、ヌヴィレット様も喜ぶと言われる。

    「キミはこんなドレスは嫌いかい?」

    彼が喜ぶと言うとから着てたのに…そう思いながら尋ねるとヌヴィレットは僕の胸元を吸い上げる。

    「ぁ…っ」
    「嫌いではない。君に似合っているし、好きだ」

    良かった。そう思いながらヌヴィレットにキスをする。

    「フリーナ、愛している」
    「僕もだよヌヴィレット…キミのこと…」

    愛しているとは恥ずかしくて言えなくて、口を紡ぐと、ヌヴィレットは額にキスを落としてくれた。

    「君の気持ちは分かっているフリーナ」
    「ヌヴィレット」

    目尻に溜まった涙を救い取られる。
    そしてヌヴィレットの愛を僕は受け入れた。







    ヌヴィレットside


    フリーナと恋人の時間を過ごすのはとても幸せな時間であり、私の腕の中で眠る彼女を愛しいと思う。
    フリーナの命は私が握っている。そう思うと彼女を私に縛り付けているようでなんとも言えない高揚感と黒い感情が混じる。
    私はフリーナの長くなった髪に手を入れ口付ける。
    私がフリーナを殺す時は私も死ぬ時であり、もしフリーナが私に剣を向ける時が来るなら互いの命を一緒に終わらそうとまで思っている。
    五百年間という長い時は、そう思わせるほどに長く愛しいものでもある。

    「フリーナ」

    私はフリーナの額にキスをし、眠りに堕ちるのだった。



    フリーナと愛し合って、私達が互いの命を託した日から1ヶ月程経った。

    最近、フリーナの体調がかなり悪い。
    今日も熱を出して寝込んでいる。
    理由は王宮内部にある嫌な動きだ。
    この国の王宮は今、先王を推す派閥とフリーナを推す派閥に別れている。
    先王派の人々はフリーナをお飾りの王だと言い、先王だったフォカロルスやその前の王、エゲリアの方が良いといい、彼女の言葉に耳を貸さず議会でもフリーナに酷い言葉を投げる。フリーナが即位した後から元気があまりなかったのはこの先王派の動きのせいでもあった。
    フリーナは本来、美しい純水精霊であり彼らは穢れを嫌う所がある。その為、人間の負の感情はあまりにもフリーナには毒となっており、その穢れが限界となり、体調不良を起こしているという訳だ。
    彼女の公務は私が引き継ぎ、フリーナは今、私と同じくフリーナの近衛騎士のクロリンデが世話をしている。
    これ以上彼女に汚いものは見せたくないと思ったからだ。

    とはいえ、公務から退けたとしてそれは一時的な対策に過ぎない。
    公務に現れないフリーナを先王派は、王失格だとも言い出しており、醜い言葉は日に日に酷くなる。
    その言葉を先週聞いたクロリンデは先王派の者に決闘を挑みかけたが、私が抑えた。
    武力行使は最後の手段であり、今はその時ではないからだ。

    私はフリーナの部屋に入る。
    そこにはクロリンデが居り、眠っている彼女の手を握っている。

    「ヌヴィレット様」
    「クロリンデ。彼女の様子は?」
    「熱がまだ高く眠っています。時々目は覚ましますが直ぐに眠ってしまい……」
    「そうか…」

    人の醜さというものはフリーナにとってかなりの毒なのだろう。フォカロルスは考えもひと寄りでは無かった為に体調を崩すことは無かったとのことだが、フリーナはフォカロルスが言っていたようにかなり人間寄りである。

    『フリーナは僕より弱いんだよヌヴィレット。だからあまり穢れに触れさせないでね』

    そう言われていたのに私は彼女を穢れに触れさせた。
    命を絶って欲しいという約束の時から、フリーナは酷い苦しみに耐えていた可能性はあったのに私は気づかなかった。

    「ヌヴィレット様。先王派の動きは……」
    「今は大人しくしているが、次の議会で何かあるかもしれない。もう暫くフリーナを頼む」
    「わかりました」

    私は部屋から出て、次の議会に備えるために書庫に向かう。
    先王派は今、フォンテーヌに新たな力を入れようと躍起になっている。議会ではその話で持ち切りだ。

    だがフリーナはその力は暗黒の力であり絶対にフォンテーヌに入れてはいけないと否定しているのだが、それが先王派は気に入らず現状のままではフォンテーヌは他国に文明で負けるとも言い、挙句にはフリーナは王に向いて居ないとも言いだしている始末だ。

    「フリーナ様の体調は大丈夫だろうか?」

    書庫に入るとその様な声がし、私は歩みを止める。

    「心配だよな。ずっと寝込んでいるって……」
    「それも全て先王派の奴らが悪いんだろ?そういや先王派に付いた奴が、この国には断罪の剣というのがあると言っていたんだよ」
    「断罪の剣?」
    「ああ。なんでも王殺しの剣で、今はそれを躍起になって探しているとか……」

    断罪の剣は私が持っているが、断罪の剣を探すと言うことは先王派はフリーナを暗殺でもしようとしているのか?
    話が気になるため、声のする方には歩かず、彼らが放つ言葉を聞くことにする。
    幸い書庫には、話をしている二人しか居ない。多分彼らはフリーナ側の者なのだろう。

    「王殺しの剣!。それってフリーナ様を殺すってことじゃないのか!?王殺しを狙うなどなど国家転覆罪になるぞ」
    「国家転覆!?先王派のやつら何考えてる…俺は先王を知っているがフリーナ様は先王様と同じぐらいの手腕はあり、それに美しい。フォンテーヌは水の国だが彼女はまさにフォンテーヌの王に相応しい方だというのに……」


    フリーナを殺すために断罪の剣を狙うのなら確かに国家転覆罪となる。そこまでして暗黒の力というものが欲しいのか?それともフリーナが王に向いていないと思い込んでの動きなのか?
    騎士が言ったようにフリーナは王に相応しい品格を持っている。フォカロルスは神々しいという感じだが、フリーナは美しく可憐であり人に寄り添う心を持つ優しい王であり、その手腕はフォカロルスと同じ程にある。

    私は書庫を後にして、フリーナの部屋に戻る。
    とにかく、国家転覆のことをフリーナに教えなければならない。
    国家転覆となれば近衛騎士の私の一存で動くことは不可能だからだ。

    「フリーナ殿、クロリンデど……」
    「え?ぬ、ヌヴィレット!?…」

    部屋のドアを開けた瞬間、目に飛び込んで来たのはフリーナの裸体と、そしてフリーナの体を拭いているクロリンデの姿だった。
    慌てていてノックをするのを忘れていた。

    「す、すまない。ノックを忘れた」
    「ううん、だ、大丈夫。少し待っててくれないかな?」
    「ああ」

    私は部屋を一度でて、そしてフリーナが良いと言ったので中に入る。

    「ヌヴィレット、ごめんね。変なもの見せて……それでかなり慌ててたみたいだけど…」

    フリーナは申し訳なさそうに私を見つめる。瞳は熱で潤んでおりまだ体調が悪いのが分かるが、今は話を聞いて貰うしかない。

    「実は先程、聞いたのだが先王派が断罪の剣を探しているらしい」
    「ヌヴィレット様、それって…国家転覆…」

    クロリンデはこれが国家転覆になるということは直ぐに理解してくれた。彼女もまた断罪の剣についての話は知っていたようだ。
    フリーナは悲しそうに瞳を潤ませる。

    「そっか…僕を殺して、国家転覆してまで、あの力をフォンテーヌに取り込みたいんだね」
    「フリーナ。これは君への反逆となり国家転覆罪になる。断罪の剣は私が持っているが、それでもあれは王殺しの剣。それを欲しがるというのはかなり酷いことだ」
    「そうだね。まさかそこまでとは思わ……けほっけほっ」

    クロリンデが咳き込むフリーナの背中を触る。
    苦しそうな彼女を見るのは心が痛むが、どうしても動くにはフリーナの了承が必要であり、そして暗黒の力についても知らないといけない。

    「フリーナ。先王派が君を暗殺してまでフォンテーヌに取り入れたい暗黒の力とはなんだ?」
    「カーンルイアの力だよ」
    「カーンルイア?」

    聞いた事がない国だ。

    「ヌヴィレット達は知らなくても無理はないよ。はるか昔に滅びた国なんだ。その国は王がいない国だったそうだ。人が作りあげた錬金国家とも言われていた。その国では様々なものを作り出し、そしてある時、テイワットを滅ぼそうとしかけた。その時は七人の王の力で止めたらしくてね。ただそのカーンルイアの力は欠片になり今も負の遺産としてこのテイワット大陸にあるんだ」

    その負の遺産というのがフリーナのいう暗黒の力。
    テイワットを滅ぼしかけた力
    だからフリーナは酷く拒んだということか……
    そのような力は必ず良くないことを起こすからだ。

    「その力を先王派はフォンテーヌに取り入れようとしてる。何処から入手したのかは知らないけどね」
    「なぜ先王派はそんな力をフォンテーヌに入れようとしているのですか?」

    クロリンデの言葉にフリーナは悲しそうな顔をする。

    「僕の事が気に入らないんだよ。僕は王に向いてない。先王派は元々、歴代の王に仕えて来た人達の末裔。家に寄ってはレムス王の時代からという人もいる。きっと今までの王は立派だったんだと思う……けど僕は違う。純水精霊だけど力も弱いし考えも人寄りだから…フォカロルスみたいな神聖な感じもない。だから僕には国を任せれないと思ってる」
    「だが、君を認めないにしても暗黒の力に頼るのは罰されることだ」
    「ヌヴィレット……」

    それに断罪の剣を探してるからにしてフリーナの暗殺を企んでいるのはわかる。暗黒の力の所持だけでも罰することは可能だが、そこに暗殺となれば先王派の死罪は免れない程に罪は思い。

    「フリーナ。私は君を蔑ろにし、あまつさえ君を暗殺しようとする先王派を許すことは出来ない。だから命令して欲しい」
    「命令?」
    「ああ。先王派を潰せと……」

    この命令はフリーナにとって酷なことは分かっている。だが国家転覆に成りうるこの事態は、私の一存では動けない。フリーナの命令があってこそ彼らを処罰することが出来る。

    「ヌヴィレット…」

    フリーナは戸惑いながらも、私に向かって手を伸ばす。
    その手を握るとフリーナの瞳から涙が零れた。

    「命令したら汚れ仕事をさせることになるよ?いいの?」
    「それでいい。私は君の近衛騎士。君を守るなら手が汚れても構わない」
    「それは私も同じです。フリーナ様」
    「クロリンデ……」

    クロリンデもフリーナの手を握る。

    「ヌヴィレット様の話からして先王派は国家転覆を狙っているのは確実です。その方法はあまりにも残酷なもの。それを止めるためなら私も貴方の為に手を汚しましょう」
    「二人とも…本当にいいの?」

    私とクロリンデは頷く。

    「大丈夫だ。だから命令を…フリーナ」

    フリーナはゆっくりと息を吐き、そして言葉を紡ぐ。
    その瞳にはまた涙が溜まり今にも零れそうだった。

    「先王派を潰して…ヌヴィレット、クロリンデ…フォンテーヌの平和の為に……」
    「わかった」
    「仰せのままに。フリーナ様」

    私はクロリンデにフリーナを任せ、彼女の部屋に結界をはる。
    そして次の議会で先王派を潰す為に、その書類を作ることを始めたのだった。
    だが議会前に動きがあるのなら私とクロリンデは先王派を殺める。
    フリーナの命令があるのだから……







    クロリンデside


    私がお仕えするフリーナ様は人間の私からすればとても王らしい方だ。
    私は先代の王を知らない。王はフリーナ様しか知らない。だがそれでも王らしいと思う。優しく気品があり何よりフォンテーヌの事を思っている。

    上司であるヌヴィレット様とフリーナ様は恋人でもあり二人のやり取りは見ていて安心出来る。恋というのも良いものだと思うほどに二人は仲が良い。
    私はヌヴィレット様と同じでフリーナ様の為なら手を汚す覚悟はある。人を殺める覚悟は等に出来ている。
    そして先王派を殺すことは悪いこととは思わない。彼らはあまりにもフリーナ様を蔑ろにしている。その事は分かりきっているからだ。

    「ひくっ…ごめん…ごめんクロリンデ。ヌヴィレット…君たちに僕は酷いことをさせてしまう」
    「大丈夫です。私は貴方の為なら手を汚しても構いません」
    「けど……」

    フリーナ様は泣きながら私を見つめる。
    涙を流すフリーナ様を抱きしめ、背中を擦る。
    私より細く小さな体……この小さな体にどれほどの苦しみを背負っていたのだろう?
    フリーナ様は今、先王派からの心無い言葉で体調を崩している。穢れに弱いからこその体調不良は根本を取り除くしかないと私は思う。
    だからこそ先王派の処罰は私の手を血に染めてでも行いたい。

    「大丈夫です。フリーナ様。きっと上手く行きます」
    「本当にごめんね…」
    「良いのです。私もヌヴィレット様も貴方の為なら何回でも手を汚します」

    そう言ってフリーナ様の涙を掬いとる。これ以上泣いて欲しくない。
    そしてフリーナ様を泣かす先王派は必ず滅ぼす。
    そう決めて私はフリーナ様の手を強く握った。












    ヌヴィレットside



    先王派の国家転覆を企んだフリーナ暗殺の計画を調べているうちに、彼らは暗黒の力を使ってこのフォンテーヌを豊かな錬金国家にするつもりだというのがわかった。
    とはいえそのような力を人が使いこなせれるわけは無い。大きな力というのは代償も大きいとされているからだ。
    そして、数日間、騎士等に聞き込みをしているうちに先王派は次の議会を待たずに、暗黒の力を使おうとしている事が分かった。
    フリーナの体調も良くならず、彼女は部屋からも出ることは出来ない。高い熱がフリーナを蝕んでいる。
    まるで先王派が使おうとしている暗黒の力がフリーナを蝕んでいるようにも見えてしまう。
    最初は穏便に議会でと思っていたが、暗黒の力を使われたらそれこそフォンテーヌは崩壊してしまう可能性すらある。調べていくうちに暗黒の力は国ひとつを丸ごと変えてしまうほどの力がある事が分かった。

    止めなければならない。先王派の動きを今すぐに……

    その為私は今夜、ある事を実行する事にした。
    それは最後のやり方。だがこうすることでしか全てを守ることは出来ない。

    夜も更けた時間。いつもは着ない黒の服を身にまとい、フリーナの部屋に入る。
    フリーナは眠っており、彼女の額にキスを落とす。
    すると闇の中から人が現れた。

    「ヌヴィレット様」
    「クロリンデ」
    「私も共に行きます」

    クロリンデも黒の服を着ている。クロリンデには今回の事は全て伝えていたのでこのような選択をするのは分かってはいた。

    私は元素力でフリーナを深い眠りに落とす。
    これで朝まで起きないだろう。
    明日の朝にはフォンテーヌは平和になっている。全ては今日、闇の中に葬られるのだから……

    私は腰に下げた断罪の剣を触り、フリーナの部屋にある誓願の剣を取り、腰に下げる。フリーナの命が乗った剣を彼らの血で汚すのは私が嫌だからだ。
    そしてクロリンデと共にフォンテーヌの郊外に向かう。
    そこには大きな魔法陣と、その上に先王派の人々が数人いる。

    先王派は私達の気配には気づいておらず、私は彼らにゆっくりと近付き、誓願の剣で彼らの胸を刺す。

    「なに……ぐぁ」
    「な、なんだ!?ぐぁぁ!!」

    悲鳴が上がったと思うと、クロリンデも素早い動きで一人また一人と先王派の胸を剣で殺す。
    その後からは戸惑い嘆く先王派達に声を上げる暇すら与えず殺していき、魔法陣から少し離れた場所に先王派の遺体が無数に転がり、魔法陣は私の水の力で消した。

    「な、なにをしている!!」
    「まだ居たのか……」

    全て終わったと思っていたが、声がし振り向くと生き残りの先王派の青年がいた。

    「え?ぬ、ヌヴィレット様?な、なぜあなたが……ぐはっ!」

    私は誓願の剣で彼の胸を刺す。

    「君たちは大罪を犯した。我が王を貶すなどあってはならない。絶対にだ。逆らうとこうなる」

    そう言って剣を引き抜く。青年は即死だった為言葉は返っては来なかった。

    「どうやらもう居ないようです」
    「そうか。亡骸はそのままに。賊に殺されたという事にできる」
    「わかりました」

    先王派の亡骸はそのままにし、私達は剣を収め王宮に戻った。

    次の日、先王派が何者かに襲われ壊滅したという話が上がった。
    暫くはその話で持ち切りだったが、犯人は分からず逆に先王派がフリーナの暗殺をしようとしていたことが明るみとなり、殺されて当然だったのだと言うことでこの事件は幕を閉じたのだった。







    先王派の国家転覆の事件からひと月ほどの時間が流れた。
    暗黒の力も無くなった為、フリーナの体調も良くなり、大事をとってはいたが数日前から公務に戻れる様になった。

    「ねぇ、ヌヴィレット」
    「どうした?」

    謁見の間で私達は床に座り話をしている。

    「あのさ、僕がもし道を踏み外したら殺してね?」
    「分かっている。だが君が道を踏み外さないように私は君を守りたい」
    「えへへ、それは頼もしいや」

    互いの剣に誓った命の約束は今も続いているが前のように命が鎖で縛ることは無くなった気がする。
    それは私とフリーナが正式に婚約をし、フォンテーヌを脅かすものが無くなったからだと思う。
    来年の春には式をする事も決まっている。

    「必ず君を幸せにするフリーナ」
    「僕もキミを幸せにするね」

    私達はキスをし、そして抱き合って、微笑みあったのだった。






    フリーナの思い


    先王派がいなくなりフォンテーヌは平和となった。彼らの動きは僕が即位をしてからずっとあり、そして僕を悩ますものでもあった。
    それが無くなった今、フォンテーヌはとても平和になり、王宮にも穏やかな時間が流れている。
    けど彼らがどうして全て居なくなったのかは詳しいことは誰も知らない。先王派の数はそれなりに居たのだが全て消え、先王派の家族等も国外追放となった。
    彼らの死は世間では、よからぬ事を企み外交しようとした所を族に襲われ死に絶えたとなっているが全てヌヴィレットとクロリンデが僕の為にした事だ。

    議会で……なんかよりあの方法しかなかったのだと思う。
    彼らを潰してと願ったのは僕だ。だからこれは僕の罪でもある。
    僕が背負う罪であり、そしていつか僕が道を踏み外した時はこの罪ごとヌヴィレットに殺してもらおうと改めて心に誓い静養していたそんな矢先だった。

    「フリーナ。君と結婚したい」

    ヌヴィレットからプロポーズされた。
    恋人という仲ではあったけどまさか婚約を言われるとは思わなくて、胸がドキドキして嬉しくて涙が溢れた。
    プロポーズを断る理由は無くて、僕は彼のプロポーズを受け入れた。
    結婚は一年後となり、今は婚約関係となった僕ら二人の生活は実はそこまで変わらない。
    僕はフォンテーヌを統治する王でヌヴィレットは近衛騎士。
    ただ婚約したことで僕らの命は歪んだ鎖で縛られなくなった。
    だけど僕らは互いの命を剣には乗せたままにした。

    だってもしかしたら道を踏み外すかもしれない。その時はヌヴィレットに殺してもらいたい。

    「あのさ、僕が道を踏み外したら殺してね?」

    「分かっている。だが君が道を踏み外さないように私は君を守りたい」
    「えへへ、それは頼もしいや」

    凄く頼もしい答えが戻ってきて嬉しくなる。
    一緒に死んでとは言えそうにない。
    そう思いながら謁見の間の床に座りヌヴィレットの腕の中に抱かれながら、床に並んでいる断罪の剣と誓願の剣を見つめる。
    歪んだ鎖で命を縛った僕ら二人の剣。
    だけど今は互いの命を乗せただけのただの剣。

    「ヌヴィレット…ずっと一緒にいてくれてありがとう」
    「それは私の台詞だ。フリーナ」

    僕らは見つめ合いキスをし、そして今あるこの幸せに身を委ねたのだった。

    end
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