キミなんか大嫌いキミなんて大嫌いだ
「ヌヴィレット!」
フリーナの声がした。
怪異となり、フリーナと過ごしたい一心でヌヴィレットは七不思議の噂を人を使い改変させている。
七不思議全ての依代を壊せばヌヴィレットの願いは叶えられる。
その為、七不思議となり、存在しているフリーナを仲間にしようとしたが、彼女はヌヴィレットの意見に反対し今は敵対する関係となっていた。
声がしたので振り向くとフリーナがいた。
ここは学園の渡り廊下。
真横には鏡がある。
『なるほど。ここはフリーナの場所か』
ヌヴィレットはそう思いフリーナを見つめた。
彼女はこの学園にある彼岸と此岸の境界を守る七不思議が一人。
その為、学園内に彼女の場所、境界があるのは知っていたがまさか鏡だったとは……
「ヌヴィレット。いい加減こんな事は辞めるんだ!これ以上依代を壊したら本当に彼岸と此岸が交わってしまう。そうなると人が彼岸に入り込んで……」
「それでも私は願いを叶えたいと思っているフリーナ」
ヌヴィレットはフリーナを見つめ自分の思いを吐露する。
今まで壊してきた七不思議の依代は三つ。あと四つの依代を壊さなければならない。
フリーナの依代は最後にしようと決めている。彼女はヌヴィレットにとって傷つけたくはない者だからだ。
「前にも言ったが私は君と同じ時をまた此岸で過ごしたい。しかしこの肉体ではどうにもならない」
「っ……」
「だからこそ、願いを叶える為に依代を壊している」
「キミはもっと人思いの良い人だと思っていたよ…」
フリーナの絞り出すような悲しい声にヌヴィレットは、また彼女を悲しませたと思った。
はるか昔、ヌヴィレットが人だった頃。ヌヴィレットは彼岸に迷い込み、そこで魂が怪異と混じってしまった。
それから、ヌヴィレットは人の思いがよく分からなくなったがフリーナのことだけは愛しいと思っていた。
なのに彼女はヌヴィレットの手をすり抜け、ヌヴィレットを殺し今は七不思議となり存在しているのだから皮肉なものだとヌヴィレットは思う。
ヌヴィレットは泣きそうなフリーナに近寄り、彼女を抱き寄せる。
「ヌヴィレット!?」
「フリーナ。私は今も君を愛している。だから止めないで欲しい」
「ヌヴィレット…だめだ…これ以上依代を……ん…ぅ…ん……」
フリーナの口をヌヴィレットはキスで奪う。
これ以上話しても、話は平行線であり、答えなど出ないからだ。
そのままヌヴィレットはフリーナを床に倒す。
彼女が背中を打たないように、背中は支えた。
「んっ…ぅ…んん!!」
舌を絡める深い口付けを贈り、キスをやめるとフリーナは息も絶え絶えとなり、頬を赤くして涙目になっていた。
『愛おしい』
そう思ったヌヴィレットだが、フリーナはヌヴィレットの胸を叩く。
「キミなんて大嫌いだ!」
そう言ってボロボロと涙を零すフリーナを見て、ヌヴィレットは笑みを浮かべた。
フリーナの言葉は彼女の真意ではないのを知っているからだ。
ヌヴィレットはフリーナの瞳にキスを落とし、涙をすくい取る。
そしてヌヴィレットはフリーナの上から退き、開いた闇の道に向かって歩き出す。
「また会える日を楽しみにしている。フリーナ」
「待ってヌヴィレット!まだ話は……」
フリーナが体を起こしヌヴィレットを追いかけるが闇の道は閉じてしまう。
闇の道が閉じる前に聞こえたフリーナの声。
「やっぱりキミなんて大嫌いだ……」
その言葉にヌヴィレットは嬉しくなり、闇の中を歩いていくのだった。
end