Triumph of Cherry Blossom 桜の凱旋
桜が咲いて散って、はらりはらりと舞い降りる。
咲くが盛りか、散るが極みか。侍の心を持った男が深々と下げた頭を扇片手に身を起こす様は、喧騒を好む海の荒くれ者達でさえ息飲む美しさである。
父は白ひげ唯一人、主君は光月おでん唯一人。だからこそ黒地絹の紋服の左胸には光月紋、本来の利腕側である右胸には白ひげの証を染め抜いて。
白足袋、右手に翳す舞扇。
左手の袖口を小指から中指まで揃えて抑えては、三味線がチントンシャン。太鼓が追いかけ鼓を拾い、鮮やかに色を付けていく。ワノ国花柳流の祝いの時にだけ特別に舞われる"素踊り"を見られる機会は、そうはない。大金を出してでも同席出来るならばと願い出る輩は大勢居ても、金で首を振る者が生憎一人もいないのだ。
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