Green Sprouting緑の芽吹き
ドドン!!と男は胸を張る。
身長は大して高くもない、中肉中背。髭が威厳があると言えばそうだが、船の主程のインパクトはない。
それでも、サッチは肌でひしひしと感じるその圧倒的な迫力に正座したままの背筋が伸びていくのを感じていた。
モビーディック号、厨房内───
「いいかい、お前さん。おれの名前はイササカ!!このモビーディック号の戦う料理人たぁ…おれのことさ。この厨房では、私が絶対だ。分かるか?おれが白いと言えば、黒いカラスも白になる。その意味が分かるかい?」
何より特徴的なのは、天を向いて聳り立つ細く長いリーゼントスタイルの髪型だった。地毛が未だに黒黒としているのか、中年を少し越えた歳の頃だろうがイササカという名前よりも、サッチの頭の中で"イッカククジラ"の名前が過る。だが、それを口にする馬鹿正直さは不要である。
11278