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    景山千鶴

    闇鍋

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    景山千鶴

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    診断メーカー「絶対に幸せになれない二人(https://shindanmaker.com/887640)」のお題で作ったモブ視点モブ→シキ

    無題 ‪人間の才能はないけれど、もしするなら後追いだけは失敗しない気がする。‬
    当時宗教的とも言えるような熱狂を集めていたミュージシャンの20回忌のニュースを見ながら、そのようなことを考えていた。
    今、俺の目の前にいる少年はそのミュージシャンの生きていた頃を知らない。だが、そのミュージシャンなど遥かに凌駕するような……文字通りfanaticと形容できるほどのファン達が彼には寄り集まっている。
    「おや、どうされました?」
    そう言って、少年は目を細める。
    「いや、何も」
    彼のような人間が俺のような人間となぜこのような場所……場末の喫茶店で落ち合っているのか、それは今回は省こう。
    しかし彼が今、何らかの要因で命を絶ったなら俺は後追いだけは失敗しない。それだけは断言できる。
    自分が満足しきったところで「もうこの世に未練などありません」と言い自ら命を絶ちそうな、そんな危うさがこの少年にはある。
    だが、もしそうなったとして、彼の後を追う『信徒』達は絶えないだろう。その中の一人、ただの信徒としてカウントされるのは癪に障る。
    特別でありたい。たいして特別な人間でもないくせにそう思うようになったのはいつからだろうか。
    この世にとっての特別、誰かにとっての特別。それは人間が出来ていて、人間の才能がある者にしか享受できない幸せなのだろう。そう気付きはじめたのはいつからだろうか。
    俺は少年の首元で揺れるペンダントをぼぉっと眺めつつ思索に耽っていた。
    正確にはドッグタグと言うらしい。彼の入れ込んでいる別の少年とお揃いにしたと嬉しそうに言っていた。才能がある人間は気付かぬうちに誰かの特別になっているものだ。
    少年はテレビを横目に何かを悟ったかのごとく、ふぅん、と呟き、若干挑発的な口調で俺に語りかける。
    「ボクは長生きするつもりはありませんが、無駄死にだけはしたくありませんね」
    あぁ。何かが俺の中で壊れる音がした。
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