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    片海鏡

    @kataumikyou

    一次創作、二次創作、何か色々描く。スプラが好きです

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    片海鏡

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    spspのバンド結成から活動休止までの妄想捏造二次創作の小説の続きです。今回は場面の都合上、短めの内容です。スプラトゥーンの世界は資料集読んでいて、本当に面白いです。

    その6「本当に来るとはな」

     ヒト状態になれる14歳前後から親元を離れ、ひとり暮らしを始めるインクリングは珍しくない。大抵がキリの良い中学卒業後に一人暮らしを始める。都会へと上京するのもまた珍しくは無い。

    「約束したから」
    「あー……まぁ、うん……」

     イッカンは、歯切れの悪いながら肯定をして、ブラックコーヒーを飲んだ。
     忘れていた訳では無い。体育館から抜け出してまで、誘って来たのだから、嫌でも覚えている。
     真剣だったのは理解している。しかし〈大きくなったら、消防士さんになる!〉と小さな子供が、一時の憧れと衝動で口走った様にも見えた。それをきっかけに志し、歩み出す者も勿論いるが、その時その時で変わる事は幾らでもある。
     だから、また誘いに来るなんて、夢にも思わなかった。

    「おまえ、いつハイカラシティに来たんだ?」
    「今日の朝」
    「は? 来て早々に、ずっと探してたのか?」
    「当然!」

     太陽はもう直ぐで、一番高い場所へ到着する頃合いだ。

    「会えてよかった!」
    「世界は狭いなぁ……」

     屈託のない笑顔に対し、感心と呆れが混じり合う。

    「高校はどうした?」
    「ハイカラシティの通信制の学校に入学した」
    「わざわざ通信選んだのか」

     人口の多いハイカラシティとその近辺には、町立や私立の高校だけでなく高等専門校も存在する。その中には音楽の専門もあり、そこは最新の機材や設備が整っている。ただ闇雲に音楽を始めるよりも、知識と技術を培えるはずだ。

    「通信のほうが、音楽が出来ると思ったから」

     イチヤはそう言って、カフェオレを飲んだ。
     通信制の高校に入学する人は、事情や適性など様々な理由を抱えている。働きながら高卒資格取得を目指す人、全日制の高校が合わなかった人、いじめなどの理由で転校してきた人など様々だ。中には、スポーツや芸能活動などで、学業以外に専念したい人が通信制を選ぶ人もいる。

    「そこまでして、おまえはどんな音楽がやりたいんだ?」
    「アイドルや民謡とはもっと別の、俺だけの音楽」

     ころころと変わっていた無邪気な表情は一瞬で消えた。すっと空気が変わり、真剣な表情と射貫くほどの眼差しが、イッカンへと向けられた。
     その豹変ぶりに驚き、彼は息を呑んだ。

    「それをやるためにナワバリバトル頑張って、貯めた金でエレキギター買ったんだ」
    「へぇ……すごいじゃん」

     瞬きをした直後、元のイチヤと戻った。
     今のは一体なんだったのか。そう思いつつも、イッカンは平静を装った。

    「イッカンは、今何やってんの?」
    「バイトしながら、音楽続けてる」
    「大学行ったのに?」
    「行ったからって、就職するとは限らないだろ」

    「だったらなんで、俺には勉強しろって言ったわけ?」

    「最低限は必要だろーが」

     イッカンは目線を合わせずに言い、ブラックコーヒーを飲んだ。

    「ふーん?」

     どこか、何かを避けている様な。イチヤはそう思ったが、また逃げられるのが嫌なのでそれ以上は訊かなかった。

    「それで、イッカンは俺の曲を聴いてくれるわけ?」

     本題を切り出し、イチヤはイッカンを真っ直ぐに見続ける。

    「そうだな……」

     イッカンが目線を戻せば、先程とは違い、年相応の少年と青年の間に立つイチヤがいる。

    「なんかの縁だ。おまえの作った曲、聴いてやる」

     底知れないものを一瞬垣間見た。それが何なのか知るためにも、聴く価値があるとイッカンは思った。

    「よっしゃ!!!」

     ベンチから飛ぶように立ち上がり、イチヤはガッツポーズをする。

    「ただし、納得が出来るものでなければ、俺はおまえのバンドに入らない」
    「わかってる!自慢の曲、聴いてよ!」
    「ま、待て! コンビニの前で演奏しようとするな!」

     早速ギターケースを開けようとしたイチヤを止め、イッカンは慌てて止めた。

    「えー? 路上ライブとかやってんじゃん」
    「ああいうのは、許可取ってんだよ! 出来る場所知ってるから、移動するぞ」

     缶の中身を飲み干し、コンビニ前のリサイクルのゴミ箱へと入れた2人は、場所を変える。
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