「石器時代に生きてる？」
「石器時代に電気とガスと水道はない……です」
「そういう事じゃなくて」

　両の掌の中に顔面を埋没させた青年は、意気消沈の割にしっかりと反論してくる。曰く、支払いのタイミングで長期出張が被り、電話で交渉するも虚しく契約に則りインフラ周りが一時的に止まってしまったらしい。書面を武器に戦う職業としてあり得ない程の失態だ。
「支払い書が必要な決済方法やめたら？　手数料も掛かって無駄が多い。69Payなら公共料金が払える筈だけど。せめて自動引き落としでしょ。リスクヘッジしなよ」
「支払いを遅らせて事務処理を行う関係機関に迷惑を掛けてしまった……」
「生真面目……」

「オレィも電気止まったことあるよー」
「へえ、意外だな……」
　何となく、出自はそこそこだろうと認識していたし、女に困らないならお金にも困るまいと勝手に考えていたのだが。
「んっとねー、オレィの時は配電盤に」
「もういい、それ以上喋るな……です」