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    突発的にツバサにズブってしまい何を書いているんだお前は案件 書き切れるのかどうかは謎

    「魔術師の国って所かなー」

     長いローブやマントを纏う住民が多いその国は、玖楼国の出立ちで歩いても浮く事はなく、唯一無二とも言える不思議な小動物を連れた人もちらほら見受けられ、はしゃいでいるモコナさえ誰からも奇異の目で見られる事はない。つまるところ、次元を渡って旅をする三人と一匹にとっては、実に動き易い国と言えた。
     ただもう少し細かい話をすると、魔法に造形がある小狼やファイ、魔法によって作られたモコナと違い、黒鋼についてはあまり居心地が良い場所とまではいかないらしい。
     息をする度に自分に必要のない魔素を取り込み、苦しいとまでは言わないが詰まる様な気分を味わい、移動手段や支払いと言ったインフラ部分も魔力を使う事を前提に考えられた不便さに舌打ちをする。
     何より──。
    「酒が、不味ぃ……っ」
     黒鋼にとっては、最も致命的な特徴のある国だった。


    「黒様おこだねぇ」
    「おこだー」
     世界を渡ってすぐの駆け付け一杯で違和感を覚え、別の店で少し金額を弾んで二杯目、三杯目で違和感は強くなり、四杯目に至っては落胆と共に飲み干したという。
     ファイもモコナも酒は好きな方だが、あくまで嗜好品という割り切りは出来ているらしく、黒鋼程のダメージは無いらしい。寧ろ彼を揶揄うネタが手に入った事で生き生きしている。
    「魔法って精神力でもあるからね。特にこの国だと、感覚を狂わせるようなモノはあまり好まれないのかもね」
    「チッ……!」
    「もーいつも飲んだくれだからイライラしやすいんだー小魚食べよー♪」
    「濾してやろうか饅頭!」
    「モコナ粒餡入ってないもーん!」
     往来で仲良く言い争うのはいつもの事だが、いつもより頻度と選定される言葉尻が物騒だ。たかが酒、されど酒。黒鋼には相当のストレスが溜まっているに違いない。
    「どうかした?」
     普段と変わらない乏しい表情でそのやりとりを見詰めている小狼に、ファイが声を掛ける。
    「あ、いや。おれには、酒の上手い不味いはよく分からないな、と」
    「小狼君はそれでオッケー。黒ぴょんが酒浸りなだけだからね。駄目だよ、ああいう終わってる人間になっちゃ」
    「聞こえてんぞ。てめえも酒豪の分際で言えた事かこのエセ魔術師」
    「飲んでも大して酔わないだけで本物の魔術師ですぅ」
     拳を必要以上に大きく掲げて怒った体を見せているファイに、黒鋼は隠し立てもなく舌打ちをする。
    「黒たま的にはどの辺が不味いって思うワケ?」
    「おまえらも飲んでたから判んだろ。薄すぎるんだよ」
    「飲み易くていいじゃーん。ねー?」
     対立を煽るに飽き足らず、他者を味方に引き入れようとする最高に不遜な態度を貫く性格の曲がり方に、普段通りの光景とはいえ小狼は少しの困惑を浮かべた目で見上げるしか出来ない。
    「うるせえ、酒の味も分からねえ小僧を盾にしようとすんな」
    「うわ、ひっどーい」
    「黙れ。エセじゃねえなら魔法で度数の強い酒を醸成しやがれ」
    「いやー、干渉値超えちゃうカナァ」
    「超えるか!」
     魔の力を携えていない黒鋼でさえ適当な嘘だと判る発言は、当然ながら怒鳴られている。火を起こしたり雷を呼ぶのとは違い、構造式と事象を分解して物を作るのは手間が掛かるし、それを身体に取り込むのはあまりにも危険が大きすぎる。生物は外身は鍛えられても内部は脆いのだ。故に、ファイはのらりくらりと黒鋼の憤りと願いを躱している。
     小狼の肩に逃げ仰たモコナが、何とも言えずに苦笑している少年に向けて、短い手を広げて笑った。
    「お酒代が掛からなくて良いよねー」
    「……そういう前向きな捉え方が出来るモコナはすごいな」
    「えへん」
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