「ああ〜〜瑠璃様ぁ、本当に麗しいぃ~~!」
「あははー。君の瞳が星みたいに美しいからオレの顔が綺麗に見えるのかなー?」
「きゃあぁぁぁ〜〜!」
あれよという間に派手なスーツを誂えられ髪をセットされ、源氏名「瑠璃蛍」が与えられ店頭に立たされたファイは一瞬でその「クラブ」の頂点に上っていた。
正直言って何が何だかファイ本人もよく分かっていないけれど、寄り付く可愛らしい女性を褒め、笑顔を振り撒き、グラスを傾けるだけで嬌声が上がったり泣き出したりされるという事だけは理解した。
「なーんか……独特な国だねー黒様ー?」
と、話を振った先で、黒鋼はむくつけき男達に囲まれている。
「なあ新入りのアニキ……今夜空いてる?」
「あの、夜の力仕事とか教えて欲しいんスけどォ」
何故か妙にがっしりした男達が挙って崇めてくる上、肩に手を置かれそうになる度につまらぬものを斬ってしまいそうになる。
「やめろ……触るな……殺すぞ……!」
「うううアニキぃぃぃ怖いとこもイイっすぅぅぅ!」
「……何か、オレの卓より盛り上がってない?」
冷たく突き放し何なら最大限の殺意を放っても勝手に悦る男達。黒鋼はいつ爆発してもおかしくない状態で、それをファイが憂いと愉悦を半々に帯びた目で見詰めていた。