「やだー! ライブないの寂しいー!」
「ノイジーだな。仕方ないでしょ、ステージ改装するんだから……」
クースカは、同じ言葉を繰り返しながら騒ぐ男を雑に宥める。いい歳をして覆らない事をずっと喚いているのはナンセンスで、壊れたラジオのようだと思っているが、大人なので正直すぎる言葉は胸中に仕舞い込んでいる。
「申し訳ございません。まさかドラムを叩いた衝撃で床に穴が空いてしまうとは……」
申し訳なさそうに萎れているマスター兼、此度の改装騒ぎの原因となったドラム担当のウララギである。エレドラのチューニングをしていた際に、脆くなっていた部分を踏み抜いてしまったのだという。色々な意味でウララギでしか有り得ない事象である。
「いや……ウララギだけの所為では……先日はダークモンスターの襲来もあったからな……です」
「まあユーザーに被害が及ばなかったし、お店そのものはランニングし続けられるんだから、比較的シンプルなリカバリで済むのは幸いだよね」
本心はどうあれ、フォローを入れてくれた二人に、バーテンダーは頭を下げる。
「ランニングマシーン? クースカちんもとうとう鍛えるつもりになっちった?」
「運用。お店は普段通り営業出来るって意味」
「はい。あまり早い時間は開けられなくなってしまうとは思いますが、修繕中もお気兼ねなくいらして下さいね」
「じゃあじゃあー、お店の前でストリートライブやろーよ!」
「リジェクト。変に注目集めるのはボークのスタンスに反する」
「道路交通法に加え、閑静な場所でのライブは騒音規制法などにも抵触の恐れがある……です」
「むー……」
即座に否定をしてきた冷静な二人に、ジャロップは頬を膨らませる。ウララギにはフォローをするのに、ジャロップの言葉は反論されてしまうのは、当人としては納得いかないようだ。