「風華招来」
全身に風を纏わせて澄んだ空を舞い、遠方を見渡す。平野と森林、丘、遠くには山、川の流れ。穏やかな自然と澱みのない空気が何処までも広がっている。
豊かで鮮やかな世界。
しかし、やはり集落らしき物は見付からず、小狼達は広い自然の中を当て処なく進み続ける他なかった。
「どう? やっぱり人の営みは無さそうな感じ?」
降下途中に、同じ要領で逆側を偵察していたファイが小狼に声を掛ける。頷きを返した小狼は「だが、」と言葉を続ける。
「山間から続く清流が見えた。森に流れてる。今日も野営になりそうだから、身体を休めるには良い場所かも知れない」
「そうだね〜。そろそろ植物以外の食べ物にあり付きたい所だしね」
この世界は動物もあまり多くはないようだった。空から視察をしていても鳥の類とぶつかる事はないし、草木を揺らす小さな生き物は見付けた限りでは鼠のような形状のものが最大で、当然ながら攻撃性のある魔物の姿もない。魚の存在は確かめていないので、水場の情報を黒鋼に共有して向かいがてら確かめる事にする。
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