「お疲れだね?」
いつにも増して黒色が濃くなった目元に向かって話し掛けていると思わしき失礼な視線は、覗き込まれた張本人の錯覚ではないのだろう。何故ならこの男は時折、真正面から失礼な生態を惜しげもなく晒してくるから。そんな認識をしているリカオもまた不躾な生き物である事には変わりないが、誰しも己については棚に上げてしまうものなのだ。
「何の用だ……です」
「流石リカオ、話が早いね」
普段なら。面倒見の良いウララギや何だかんだで他者を気に掛けているジャロップなどとは違い、リカオが疲労困憊だろうが何だろうが自分から労わるような真似をしないクースカの、らしからぬ態度。良からぬ企ての気配を咎めた弁護士に、悪びれもなくビジネスライクな返答が為される。
「丁度今日、栄養剤のレビュー依頼が来ててね。今のリカオにピッタリだと思う」
「……成程?」
有無を言うより早く小さな瓶を取り出し、リカオの手元に押し付けたクースカが、眼鏡を持ち上げて薄く笑んだ。厭な顔だ。
「急ぎの案件で明日返さないといけなくてさ。良かったら効能教えてよ」
「相変わらず都合良く使おうとしているな……です」
「Win-Winなのは良い事だと思わないかい?」