ふとした瞬間、なんの気もなしに魔が差すことは誰にだってあるだろう。立香は特にこれといって思い悩んでいたわけではない。干してある彼のシャツを手に取った時、ふと数日前の情事の朝を思い出して、もう一度そのシャツに袖を通したくなった。
「ぶかぶかだ……」
身長が185センチもある彼のシャツは、当然ながら身に合わない。だけど、その大き目の服を着たことで彼の匂いに包まれ、彼に抱かれているような錯覚すら覚えてしまう。早く脱いで、アイロンをかけなければと思うのに、もうちょっと着ていたいという気持ちが抑えられない。それだけに留まらず、もっと彼の匂いに包まれたい。この場にいない恋人の存在を感じたい、と思ってしまって、己の身体はふらふらと寝室へと向かっていく。ベッドを前にして、下に履いていた己のズボンは取っ払った。どうせなら全て彼に包まれるような状態が良かった。
1051