あのころの、「おおすみさん。ご無沙汰してます」
艦を見上げ、声を張った。それぞれがここ佐世保へ入港することはそれなりにあるものの、母港の違うもの同士が顔を合わせる機会は数少ない。作業にキリを付けて艦を降り姿を探す。当たりを付けた喫煙所、その手前で見付け駆け寄った。
「ん、まだ若いな。元気にしてるか」
振り返った顔はすこし疲れているようにも見える。把握しているわけではないが多忙なのは耳に入っている。自分も決して余裕があるわけではないけれど。
「お陰様で。あの、せっかくなので伺いたいんですが。くまの、はどんな子でしたか」
並んで歩きながらそう問えば苦笑が返ってくる。開口一番で聞くにはなんというか、先走ってしまった気もするが仕方がない。後輩が気になるのは正直なところなのだから。
「あー、そうだな…。一言で表すなら快活な子、だろうか」
思案して発せられた言葉を受け止める前に曲がり角の先から別の声が加わる。
「俺が聞いたときはそのうち会うこともあるでしょうから、とか言ったくせに。お前が小さかった時の話言って回るぞ」
「勘弁してください。その展開になりそうだったから避けてたんですよ」
声の主、はるさめからぺしぺしと叩かれながら迷惑そうな表情を隠さず応対するおおすみを物珍しく眺める。確かこの二人は同世代だったはずだ。
「な、ふゆづきも気になるだろー?」
「それは、まぁ…」
「ふゆづき。聞いた分だけお前のことも話すがいいか」
「…やっぱり止めておきます」
巻き込まれそうになったところで回避をはかる。自分のこととなると何が出てくるかわからず正直怖い。
「残念。でも珍しい組み合わせで顔合わせたことだし、実家の様子聞かせてよ。ずっと近くにも寄ってないからさ」
提案にそれならば、と各々が話をしつかの間の懐かしい時を過ごした。