窃盗罪(仮題)「ねぇ、そよりん家のタオルもらってってもいい……?」
「それ、窃盗罪だからね」
「え、別に勝手に盗んでないし。だからこうやって聞いてるんじゃん!」
そよりんがスマホを見ながら読み上げた。
「窃盗罪について、刑法235条は、『他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。』と定めております……だって」
「うーん……じゃあそよりんのお家に10年ぐらいいようかなぁ〜」
「いや、愛音ちゃんにいてもらうのは牢屋の中だから。それよりもそのタオル奪っていいから50万円くれない?」
「ひどっ……そよりんだって罪犯してる癖に……」
「は? どういうこと?」
「そよりんは奪って行きました……。私のハートを……」
そよりんがため息をついた。
「何か寒いな。暖房つけようかな」
「ごめんってそよりん、つまんないこと言って」
「わかってるなら言わないでくれる」
「はぁい……」
私はしょぼくれた。
「タオル今度一緒に買いに行きたいなぁ、そよりんと同じやつ……!」
「そんなことしなくても、お金出したら買ってきてあげるけど」
「そうじゃなくてそよりんと一緒にお出かけして買うのがいいんだってば」
「あっそう……」
そっぽ向いたそよりんの頰が赤く染まった。やっぱりそよりん可愛いなって思った。
「よし、いつかそよりんのハートも奪っちゃうぞ」
「まだその話続いてたの……?」
「へへへ」
「もうとっくに奪われてるよ」
「……えっ?」
「なんてね」
そよりんが微笑んでこの話はお終いって言ったから、終わりにしたけど、奪われてるって本当にそうなのかなって疑問だけが残った。